9 朝死川村の秘密
神社の本殿では、神子がナツに向かって話を続けていた。
「お前も余の手下となり、体を取り替えながら永劫に生き続けるのだ。なぜ余がお前を手下にしようと考えておるのか、お前にはわかるか? それは、お前の心の奥では大きな咒靈力が渦巻いており、お前は余たちに似た存在であるからだ」
「な、何だと? そ、そんな訳はない! 客観的に考えて、俺の中に呪いの力など存在するはずがない!」
ナツは動揺しながら、神子に向かって叫んだ。
「お前は、お前の母を殺した魔物が憎かろう? いや、全ての魔物のことが憎いであろう?」
ナツは神子の言葉を聞いて目を大きく見開き、思わず叫んだ。
「どうしてお前はそのことを知っている?」
「ほとんどの人間が心の中に咒靈力を有しておるのだ。人間が心と感情を持っている限り、人間とは心の中で咒靈力を生み出し続ける存在なのだ。しかし、ほとんどの人間の中にある咒靈力は微々たるもので、心身や人生を破綻させるほどの影響を及ぼすことはない。誰しも癌細胞が毎日体に発生しておるが、ほとんどの者が健康に影響を受けておらぬのと同じことじゃ。
しかし、お前の心の奥深くには、開放すればお前の全てを変えてしまうほどの巨大な咒靈力が秘められていることに余は気づき、お前が気絶している間にお前の心の中を覗き、お前の記憶を見たのだ。
母を魔物に殺され、幼いお前はどんなに悲しかったことだろう。お前は幼い頃から、心の中に悲しみと憎しみを抱え続け、それはどんなに辛い日々であったことであろう。
お前は復讐を遂げるために神伝霊術の修行に没頭し、魔物を倒してきた。お前は目的に向かって行動をすることで、魔物を咒う気持ちを心の奥底に追いやってきたのだ」
神子の核心を突く言葉が心に突き刺さり、ナツは視線を落として激しく狼狽していた。ナツの灼熱之槍を握る手が緩んだ。
その時、惨狂の右腕がナツの左腕に向かって振り下ろされ、惨狂の右前腕が刀に変化した。
「うがああああああああああああああああああああああああっ!」
ナツは床に転がって絶叫しながら苦しみ悶え、ナツの左肩から下の左腕は、ナツから離れた別の場所に転がっていた。
「惨狂よ! その少年が失血死せぬよう、咒靈力の塊で傷口を塞ぐのだ」
神子が楽しそうに命じると、惨狂は口からソフトボール大の黒い咒靈力の塊を吐き出し、咒靈力の塊はナツの左肩の下にガムのように貼り付いた。
神子は尊大な口調でナツに言った。
「ふふふっ。お前のように大量の霊力を扱うことができ、心の中で大きな咒靈力が渦巻いておる者は、刀に込められた怨念なんぞで心を蝕まれて正気を失い、狂気に満ちた悪霊に堕ちていくのは惜しいことであるからな。左腕を斬り落として、助けてやったぞ。余に感謝するがよい」
ナツは激痛で床の上をのたうち回り、神子はナツを見下ろして満足そうに笑っていた。
蔵の中では、宙に浮かぶもみじとその周辺の空間が歪んでおり、怨咒が右掌の先の闇の塊をもみじに向けていた。まふゆはもみじを助けようと、絶叫しながら体を動かそうとして必死に藻掻いていた。
「もみじさああああああああん! ちくしょおおおおおおおっ! 動けええええええええっ! あたしの腕えええええええええええっ!」
その時、まふゆの両腕が闇の枝から外れた。
「外れた! 古より時節の移ろいを司りし青朱白玄之尊よ! その御力を宿し給え! 凍結之玄光!」
まふゆは人差し指と中指を伸ばした両手を顔の前で交差し、右の人差し指と中指を怨咒の右掌の前の闇の塊に向けた。
怨咒はもみじに向かって笑いかけた。
「じゃあ、さようなら。あなたの体は神子様が大切に扱い、あなたの魂も朝死川霊園へ連れて行って有効に活用して差し上げますわ。きゃあああっ!」
怨咒の右手の先の闇の塊に玄色の光線が命中し、闇の塊は凍りついて床に落下して砕け散った。
「何事ですの?」
怨咒がまふゆの方を見ると、闇の枝から解放されたまふゆが胸の前で両手の親指と人差し指で六角形を象っており、指でつくった六角形の前に直径十センチの雪の結晶が出現して宙に浮かんでいた。
「だあああああああああああっ!」
まふゆが叫び声を上げながら右手の人差し指を前に突き出すと、雪の結晶は回転しながら弧を描いて飛んで行き、咒嗟が吹いている頭蓋骨の笛を直撃して頭蓋骨の笛が砕け散った。
咒嗟は驚愕して、口元だけが見える仮面の顔をまふゆに向けた。
「何と! 怨咒が咒靈力でつくり出した咒靈之茨から逃れただと?」
もみじとその周囲の空間の歪みがなくなり、もみじは床に着地した。もみじと一緒に浮かんでいた懐中電灯は、床に叩きつけられてバラバラになった。
「悪霊たちが一斉に放つ呪いの力がなくなった! ふざけやがって! これでも食らいやがれええええええええええええええっ!」
もみじは右手の人差し指と中指で空中に上から下へ直線を描きながら、力の限り叫んだ。
「古より雷を司りし天翔迅雷之命よ! その御力を宿し給え! 解放之迅雷いいいいいいいいいいいいいっ!」
裂帛の気合で絶叫するもみじの喉と右手首から、血が噴き出した。
『御神氣が強力過ぎて、体が耐えられねぇええええええええっ! だが、こらえるんだあああああああああああああっ!』
蔵の天井を突き破って巨大な雷が落ちて、もみじとまふゆの間の床に激突し、床が燃え上がった。怨咒は雷が天井を突き破った瞬間に、咒嗟の方へ飛んで行くと、そのまま咒嗟の左肩に座った。
悪霊たちは人形などの取り憑いていた物から飛び出し、パニックを起こして口々に叫び声を上げながら、空中を目まぐるしく飛び回っていた。
『か、神鳴だーっ!』
『この光は眩し過ぎるーっ!』
『神鳴は嫌だーっ! 俺は取り憑いていた物の中に隠れるぞーっ!』
『俺の隠れる物が神鳴で粉々になって燃えている! どうしたらいいんだーっ?』
悪霊たちは自分たちが取り憑いていた物の中に慌てて戻っていき、取り憑いていた物が破壊され、燃え上がった悪霊たちは、蔵の隅に集まって身を潜めた。
もみじは、鋭い目つきで悪霊たちが宿った物を見渡した。
『悪霊たちが静かになったな。この術は霊を祓う時によく遣うが、膨大な御神氣を込めて遣ってみると、とんでもねぇ威力だな』
もみじと炎を挟んで立っていたまふゆが、ふらふらしてその場に崩れた。
「まふゆ!」
もみじはまふゆに駆け寄って、上半身を抱き起こした。
「もみじさん……。きっと助けに来てくれるって思ってた……。ありがとう……」
まふゆはもみじを笑顔で見つめ、その目から大粒の涙が溢れた。
「あたしの方こそ、まふゆに助けられたぜ。ありがとうな」
優しく微笑むもみじに向かって、まふゆが弱々しく言った。
「なぜか突然体が動くようになって……」
もみじがまふゆの後ろに目をやると、床から何本もの闇でできた茨が生えており、その枝には刃物で切断されたような切断面が何箇所もあり、十本ほどの切断された枝が床に落ちていた。
黒い花弁が舞い落ちる暗い森の中では、黒いオーラに包まれた黒い目の葬儀屋のおばあさんが、黒い血管が浮かび上がった顔で邪悪な笑みを浮かべながら、みゃおの死で号泣している鏡太朗の背中を狙って鎌を振り下ろしていた。それを見ていた切子は、恐怖のあまり凍りついたように身動きができずにいた。
鎌の鋭い刃が鏡太朗の背中に迫った。
ガチン!
鏡太朗の足元に生い茂る紫蘇の中から何かが飛び出し、鎌の先端は飛び出した何かに当たり、金属同士が衝突する音が響いた。
鏡太朗がその音に驚いて振り返ると、鏡太朗の背後に身長二十センチほどの小人が飛び上がって、手に持った小さな日本刀で鎌を受けていた。その小人は、自信に満ちた表情をした切れ長の目の男の子で、平安時代の貴族のような青い服装を身にまとっていた。鏡太朗が鎌の持ち主に目を向けると、人間とは思えない変貌を遂げた葬儀屋のおばあさんが自分を狙って鎌を振り下ろしており、その背後の四人のおじいさんと四人のおばあさんも、葬儀屋のおばあさんと同様の変貌を遂げ、鎌や棒を振りかぶって自分に迫っていた。
「え? みなさん……?」
鏡太朗は状況が理解できずに茫然として立ちすくみ、変貌を遂げた八人のおじいさんとおばあさんが鏡太朗に襲いかかった。
その時、八人のおじいさんとおばあさんは一斉に前のめりに倒れた。全てのおじいさんとおばあさんの片足の足首には鉄の輪がつけられており、鉄の輪は鎖で近くの木の幹に繋がれていた。
「殺してやる! お前たちを殺してやるぞーっ!」
「殺させろ! 俺にお前たちを殺させろーっ!」
「この鎖を外せーっ! お前たちを滅多刺しにしてやるーっ!」
悪鬼の様な姿に変貌したおじいさんとおばあさんは、怒り狂った顔を紫蘇の群生から上げると、狂ったような恐ろしい声で叫び続け、鎌や棒で鎖を叩き続けたが、鎖はびくともしなかった。
「殺してやるううううううううーっ!」
葬儀屋のおばあさんが別人のような悍ましい声で叫びながら、再び鎌を大きく振りかぶったが、状況を理解できない鏡太朗は呆然として棒立ちになっていた。鎌の鋭い刃先が、鏡太朗の額に向かって力いっぱい振り下ろされた。
その時、木の枝に結ばれたロープが振り子のように鏡太朗の顔に迫った。
「きゃっほーっ!」
ロープに掴まっていた桃色の服を着ている男の子の小人が、悪戯っぽい笑顔で楽しそうに叫びながら、鏡太朗の右頬を両足で蹴り、鏡太朗は一メートル吹き飛んで紫蘇の群生の中に倒れた。
鎌が空を切った葬儀屋のおばあさんは、邪悪な顔に怒りを浮かべながら鏡太朗に向かって一歩足を踏み出したが、その瞬間に前のめりに紫蘇の中に倒れた。葬儀屋のおばあさんが黒い目で自分の左足首を見ると、鉄の輪がつけられており、鉄の輪は近くの木の幹と鎖で繋がれていた。
「外せーっ! この鎖を外せーっ!」
葬儀屋のおばあさんは怒りの形相で鎖に何度も鎌を振り下ろしたが、鎖はびくともしなかった。
紫蘇の中から、白い服を着た女の子の小人が、高貴さを感じさせる気高い表情を浮かべて姿を現した。
「これで全員捕まえて差し上げましたわよ。みんな、暴れて、吠えて、まるで猛獣のようですわね」
白い服の小人から離れた場所では、目尻が垂れた優しそうな可愛い顔立ちの緑色の服を着た女の子の小人が、紫蘇をかき分けながら姿を現して目を丸くしていた。
「まあ、白ちゃんったら、ひどいことを言うのね。でも、白ちゃんとあたしだけで全員捕まえることができたわね。上手くいってホッとしたわ」
鏡太朗は状況が飲み込めずに、紫蘇の中で上体を起して目を丸くしており、四体の小人たちを懐中電灯で照らしながら、恐る恐る話しかけた。
「き、君たちは一体……?」
青い服の小人が鏡太朗の目の前に立ち、自信に満ちた顔で得意そうに言った。
「麻呂たちは、もみじ殿の式神『もみじ式神戦隊』である!」
桃色の服の男の子と、白い服と緑色の服の女の子も、得意げな表情で青い服の小人の後ろで腕を組んだ。
「もみじさんの式神! そ、そうか! 助けてくれてありがとう! あれ? でも、もみじさんの式神は五体じゃなかったっけ?」
桃色の服を着た式神が、悪戯っぽい笑顔を浮かべて言った。
「紅くんは別のミッションを遂行中なのさ」
天井に大きな穴が開き、床の中央で火が燃えている蔵の中で、もみじとまふゆの目の前には、闇でできた茨の枝の前に立つ紅色の服を着た男の子の小人の姿があった。紅色の服を着た小人は、ギラギラした目で自慢げな笑顔を浮かべ、右手に持った小さな日本刀を高く掲げていた。
もみじが小人に笑顔で言った。
「サンキュー、紅くん! まふゆ救出のミッション完了だ!」
紅くんと呼ばれた小人は、もみじに向かって左手でピースサインを見せた。
「いいってことよ、もみじ! 困ったことがあったら、いつでも俺を頼ってくれよ! じゃあ、またなーっ!」
紅くんは人形の紙に姿を変えて燃え上がり、姿を消した。
「もみじさん……、今のは?」
もみじの腕の中でまふゆが訊いた。
「今のはあたしの式神の紅くんだ。隣の神社に向かう時からずっとあたしの後ろをついてきて、まふゆを見つけたら隙を見て助け出すように命じてたのさ」
もみじは笑顔で答えた。
「殺させろーっ! お前たちを殺させろーっ!」
「まあ、怖いっ!」
緑色の服を着た式神の緑ちゃんが目を丸くして見つめる先では、鎖で足首をつながれた悪鬼のような容貌に変わったおじいさんとおばあさんが、地面に這いつくばりながら別人のような悍ましい声で叫び、鎌や棒を振り回していた。
青い服を着た式神の青くんが、自信に満ちた表情で鏡太朗に言った。
「磨呂たち四体は、鏡太朗殿を悪霊と呪いの力から守るようもみじ殿に命じられ、鏡太朗殿が集会所を出た時から尾行していたのでござる」
白い服を着た式神の白ちゃんは、叫びながら鎌や棒を振り回すおじいさんとおばあさんを冷たい目で見つめていた。
「この村人たち、悪霊に体を支配されていらっしゃるようですわ」
鏡太朗は目を丸くした。
「悪霊に支配?」
その時、鏡太朗の顔を目がけて、紫蘇から頭を出したマムシが口を開いて襲いかかった。
「わっ! マムシ!」
鏡太朗は驚いて素早く後ろにずり下がり、マムシの攻撃から身をかわすと、慌てて立ち上がった。鏡太朗は四体の式神に言った。
「今、めっちゃ危なかったよ! 何で助けてくれないの?」
桃色の服を着た式神の桃くんが、頭の後ろで手を組みながら、斜め上に視線を向けて言った。
「だって、もみじさんから命令されてるのは、悪霊と呪いの力から守るってことだけだし〜」
青くんが苦笑いしながら、鏡太朗を見上げた。
「鏡太朗殿、ご理解いただき給え。我ら式神が自分の判断で行動すると、式神遣いの意向に沿った結果を担保できなくなり、式神遣いと式神の上下関係も維持できなくなるのでござる。我らはもみじ殿の命令を遂行したのであるから、ここで消えなければならぬ。鏡太朗殿、また会おうでござる」
四体の式神は鏡太朗に向かって笑顔で手を振ると、人の形の紙に姿を変え、燃え上がって姿を消した。
『これって現実なの? わたしは夢を見てるの?』
切子はみゃおの遺体を胸に抱きしめながら、四体の式神が消えた辺りと、地べたに這いつくばって叫びながら鎌や棒を振り回す悪鬼のように変貌したおじさんとおばあさんを茫然として見つめた。
神社の本殿では、叫び声を上げながら床の上を転がるナツに向かって、神子が薄ら笑いを浮かべながら、声高に語りかけていた。
「この村の大地には、咒いの神であられる禍忌凶怨咒尊様が宿られ、膨大な咒靈力の恵みを放ち続けておられるのだ。咒靈力は、村で暮らす者の体と心に次第に蓄積されていき、数年もすれば正気ではいられなくなり、命を落とすことになるのじゃ。肉体の限界を超える咒靈力を扱うことができる余の手下どもは、別であるがな。
そこで余は禍忌凶怨咒尊様のお告げにより、咒靈力を使って式神である惨狂をつくり、余の内部に秘したのじゃ。この惨狂は常に余の内におり、余の体と心に蓄積される咒靈力を吸収しておる。そして、惨狂は時々余の外に出て、余剰となった咒靈力を大地に放射して禍忌凶怨咒尊様にお返ししているのだ。惨狂を内に秘めることにより、余は二千余年もの間正気を保ち、次々に変わっていく体も、数十年の間健康を保ち続けてきたのじゃ。
村の者たちには、一人に一体悪霊を取り憑かせているのじゃ。村の者の内に潜み、体と心に蓄積される咒靈力を吸収するという契約を結んだ悪霊を村の者に取り憑かせておる。悪霊たちは、その代わりに夜の十時から朝の四時までは取り憑いた者の体を自由に使うことができるのじゃ。悪霊たちは自由に活動できる時間の間に村を徘徊し、吸収した咒靈力を体からオーラとして発散し、悪霊が取り憑いていない人間を見ると刃物で滅多刺しにして惨殺し、死体を川へ捨ててきたのだ。
この村では、悪霊が憑いていない者は生きてはいけない。だから、赤子が出生すると、余がその赤子に『悪霊降ろし』の儀式を行ってきたのだ。
村の者には咒靈力の弱い悪霊を降ろしている。お前たちのような霊力に敏感な者であっても、土地全体から強力な咒靈力が立ち上り続けるこの村の中では、村の者が内に秘す悪霊の弱い咒靈力に気づくことは困難なのじゃ。
しかし、そのようなか弱き悪霊どもも、日々咒靈力を吸収し続けているうちに次第に強力になっていき、咒靈力を操ることができるようになってくるのだ。だから余は、村の者に取り憑いた悪霊が強力になると呪い玉に封印し、新たに捕らえた力が弱い悪霊を村の者に降ろす『悪霊替え』の儀式も行っているのだ。
ただし、村の者たちは『悪霊降ろし』と『悪霊替え』を無病息災を願う神事だと信じており、自分たちの中に悪霊が秘されていることは知らぬのじゃ」
神子は冷たい笑みを浮かべた。
「殺しやる! 殺してやるぞーっ!」
「お前たちを殺させろーっ!」
暗い森の中で、地面に這いつくばる悪霊に支配された九人のおじいさんとおばあさんが叫び続けていた。
鏡太朗は、紫蘇が生い茂る中に座り込んでみゃおの遺体を抱きしめている切子に左手を伸ばし、優しく話しかけた。
「切子ちゃん。早くここから逃げよう」
「今すぐ殺してやるぞおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
悪霊に支配された葬儀屋のおばあさんが渾身の力を込めて叫んだ時、怒声とともに口から咒靈力が黒い光線になって放出され、鏡太朗のすぐ隣の地面に衝突して紫蘇の葉が宙を舞った。
鏡太朗は驚愕して叫んだ。
「口から呪いの力を放射した!」
悪霊に支配された葬儀屋のおばあさんは、初めて知る自分の能力を目の当たりにしてにんまり笑うと、左足首を繋いでいる鎖に向かって『殺してやるぞおおおおおおおおっ!』と叫び、その口から黒い光線が放射され、光線が当たった鎖に亀裂が走った。
「やばい! 逃げるんだ!」
大きな危険が目前に迫っていることを感じ取った鏡太朗は、慌てて切子の右腕を左手で掴んで切子を立たせると、切子の右腕を引っ張って一緒に森の奥へ走り出した。




