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2 呪いの力と子猫を抱いた少女

「もみじさん、それで? それで? それからどうなったのーっ?」

 移季節(うつろうきせつ)神社からの帰途、もみじが運転する左ハンドルのSUV車の助手席にはまふゆが座り、もみじの後ろには鏡太朗、まふゆの後ろにはナツが座っていた。まふゆは目をギラギラさせながら、もみじに向かって楽しそうに話しかけていた。

「もみじさん、あたしに月の神様の幻の術を教えてーっ! あたしの神伝霊術の攻撃の術に幻の術を加えたら、最強だと思うんだーっ!」

「おめぇの師匠は移季節(うつろうきせつ)神社の神主だ。勝手に術を教える訳にはいかねぇ。そこは筋を通さねぇとな。でもよ、季節の神様の力を借りる神伝霊術には、まふゆが身につけている冬の術と、ナツが身につけている夏の術以外にも、春と秋の術があるんじゃねーのか? それを習っておかないと、その術は失伝すんじゃねーか?」

「うっ! そ、それは気になってるんだけど……。でも、今さらあの山奥の林の中には住みたくない……。だって、世の中から隔離されるんだもん!」

「ははは……。その気持はよくわかるぜ。あたしだって、たまに行くのはいいが、あそこに住むとなると、ちょっとな……」

「でしょーっ? 何か、あたしともみじさんって、めっちゃ気が合うよーっ!」


 ナツは後部座席でもみじとまふゆのやり取りを見て微笑みを浮かべていたが、鏡太朗の視線を感じると無理に険しい表情を見せ、前を向いたまま不機嫌そうな様子で鏡太朗に言った。

「鏡太朗、俺に何か言いたいことがあるのか?」

「いや……、ナツさんが楽しそうだったから、ついナツさんの顔を見ちゃった。ごめんなさい」

「お……、俺は別に楽しくはない!」

 ナツは鏡太朗から顔を背けると、右隣の窓の外を見ながら話を続けた。

「ただ……、もみじを見てると、何だか母さんを思い出すんだ。強くて、性格が豪放磊落で、とても頼りになって……、もみじの姿が母さんに重なることがある。ちょうど、もみじは母さんが亡くなった頃と同じくらいの歳だしな。

 客観的に見て、まふゆが母さん以外の誰かにこんなに懐いている姿は、初めて見る。合理的に考えると、まふゆももみじに母さんの面影を感じてるんだろうな」

 鏡太朗が、ナツが顔を向けているガラスに目を向けると、ナツの楽しそうな笑顔が映っており、鏡太朗も幸せな気持ちで満面の笑みを見せた。


 日が落ちて暗くなり始めた頃、もみじが運転する車はヘッドライトを点灯しながら、小高い山の横に続く曲がりくねった道を走行しており、車が進む道の右側は岩だらけの急な斜面になっていた。

 鏡太朗は突然不安そうな表情を見せると、みんなに言った。

「ねぇ、どこかから笛の音が微かに聞こえない? 地面の底から響いてくるような低音と、悲鳴みたいな高音の不協和音が不規則に連続する不気味な音色で、聞いてるだけで不安な気持ちになってくる……」

 その時、四人全員が何かに驚いて同時に叫び声を上げた。

「うわあああああああああっ!」

 もみじが急ブレーキを踏んで車が急停止すると、まふゆと鏡太朗、ナツの上半身が前のめりになった。

「も、もみじさん、今のは何なの?」

「鏡太朗も感じたか? 今、とてつもなく大きな呪いの力を一瞬感じた……」

 もみじは目を見開いて呆然としていた。

 ナツが努めて冷静さを保ちながら、もみじに質問した。

「もみじ、呪いの力って一体何だ? さっき、ひいじいちゃんも言ってたよな。客観的に見て、今感じたのは、魔物の魔力とは異質な感じの……背筋が寒くなるような不気味な霊力だった。それに、鏡太朗が地下王国で変身した時、鏡太朗からもこんな不気味な霊力を感じたぞ」

「魔物はな、超能力を使うために、宇宙から吸収した霊力を体内で高密度に濃縮して、超高濃度の特殊な霊力に転換する。これが魔力だ。だから、魔物は少しの魔力でも超能力を使うことができるんだ。その霊力は強力過ぎて人間の体ではとても扱えねぇが、エネルギーの性質自体は、何かにネガティブな影響を与えるような危険性はねぇ。

 それに対して、呪いの力ってのはな、特定或いは不特定の誰かに対して抱く人間の憎悪や怨念の感情によって心身の中の霊力が大きく変質し、心身にネガティブな影響を及ぼす危険な波動に変わり果てたものだ。呪いの力は、人間の思考や感情、心、肉体、生命にネガティブな影響を与え続け、ネガティブな感情を増大させる出来事と状況を人生に引き寄せ続け、最終的には命を奪っちまう。

 鏡太朗の中に封印された悪霊は別格として、通常じゃあ考えられない強い呪いの力を一瞬だけ感じた。あの力は……」

 もみじは緊張した表情で自分の内部の感覚に意識を集中していたが、突然目を見開いて右側の崖の上を見上げた。

「呪いの力は、この上から感じた!」

 その時、崖の上からたくさんの砕けた岩の破片が雪崩のように転がり落ちてきて、もみじの車のすぐ目の前の道路を覆い尽くし、道路左側のガードレールをなぎ倒すと、その下の切り立った崖から下の森へ降り注いでいった。

「危なかったぜ! さっき車を止めてなければ、今頃は命がなかった……」

「もみじさん、また岩が落ちてくるかもしれないよ!」

「仕方ねぇ! 今来た道を戻るか!」

 鏡太朗の言葉を聞いたもみじは車をバックさせ、途中で車を切り返すと、これまで走ってきた道を戻り始めた。

「それにしても、何だったんだよ、あの一瞬感じた呪いの力は? あの呪いの力で岩が落ちてきたのか?」

 動揺しながら運転するもみじに、鏡太朗が訊いた。

「もみじさん、俺の中から悪霊が解放されて第一形態になった時、俺の心身に呪いの力が漲るのを感じるから、呪いの力がどんな波動なのかは感覚でわかるんだけど、呪いの力と人を呪うことの関係ってどうなってるの?」

「呪いの力ってのは、さっき言った通り人間の負の感情に色づけされた霊力だ。人間や死者の魂が、その呪いの力を特定或いは不特定の誰かに向けて送ることを『呪う』という。生きた人間が行う藁人形や黒魔術の儀式は、呪う相手に照準を合わせて呪いの力を集中させて送る効果があるんだ。レンズで太陽の光を一点に集めると、物を燃やす効果があるだろ? 藁人形や黒魔術は、その時のレンズみてぇな働きをする。

 逆に、呪いの力を誰かから送られたこと、或いは、呪いの力が満ちた食べ物や飲み物、家や場所、物などに接触して、呪いの力を心身に取り入れてしまったこと、この二つの状況のことを合わせて『呪われた』と呼ぶ。

 さっきあたしが感じたのは、呪いの力を誰かに送る時のような、強い呪いの力が一定時間持続するものじゃなかった……。

 呪いの力に思考や感情を支配された死者の魂を悪霊と呼ぶが、悪霊は誰かに呪いの力を送ることもできれば、自分の中の呪いの力を原動力として超常的な現象を発現させることもできるんだ。さっき感じた呪いの力の瞬間的な高まりは、悪霊がポルターガイストを起こす時の呪いの力の高まりに似ていた……」

「あ、悪霊って……、まさか、ゆ、幽霊がいるの……?」

 まふゆの顔から、見る見る血の気が引いていった。


 しばらくすると、もみじが運転するSUV車は山道を抜け、前方を横切る川に架けられた片側一車線で長さが百メートルほどの橋に近づいた。

「もみじさん、誰か歩いてるよ!」

 助手席のまふゆが、前方をゆっくり歩く人影をヘッドライトの先に発見した。その小柄で華奢な後ろ姿は、ふらふらしながら橋に向かって歩いており、それに気づいた鏡太朗がみんなに言った。

「何だか、ふらふらしてるよ! それに、さっきこの道を通ったけど、ずっと林に囲まれていて、民家なんてなかったはずだよ! こんなところを一人で歩いているなんて、絶対におかしい! きっと何かがあったんだ! 助けなきゃ!」

 もみじが運転するSUV車が徐行しながら、ふらふら歩いている人影に近づくと、後方からヘッドライトに照らされていることに気づいた人影が振り向いた。

 振り向いたのは、小柄で華奢な十五歳くらいの少女で、ポニーテールにした髪は肩甲骨までの長さがあり、前髪は眉毛まで伸び、目の大きな小さな顔はやつれていた。ピンク色の入院患者用の患者衣とホスピタルシューズを身に着け、紫色のヘアターバンを頭に巻いており、ヘッドライトに驚くその顔は、自分に自信がない内向的な雰囲気を醸し出していた。少女は小さな子猫を両腕で抱えており、その子猫は生後三か月くらいの大きさで、灰色に縞模様が入った毛色をしていた。


 もみじが車を停車すると、鏡太朗はすぐに後部座席のドアを開け、車から降りながら少女に話しかけた。

「そんな格好でこんな所を一人で歩いてるなんて、何かあったの?」

 少女の腕の中の子猫は、鏡太朗の姿を見た瞬間に毛を逆立てて『ウーッ!』と警戒する唸り声を上げ、鏡太朗が一歩前に出ると少女の腕の中から飛び降り、四十メートル先の橋に向かって逃げ出した。鏡太朗は足を止めて叫んだ。

「しまった! あの子猫、俺の中に封印された悪霊の呪いの力を感じたんだ!」

「待ってーっ! ねぇ、待ってよーっ!」

 少女は子猫に呼びかけながら、子猫を追いかけて橋に向かって走り出した。その時、そこにいる全ての者の耳に、不気味な笛の音が微かに聞こえてきた。

「うわあああああああっ!」

 鏡太朗ともみじ、まふゆ、ナツが、背筋に冷たいものが走るのを感じ、一斉に叫び声を上げた。鏡太朗はみんなに向かって大声で言った。

「また、あの呪いの力だ!」

 もみじは自分の内部の感覚に意識を集中し、呪いの力を感じた場所を探った。

「この呪いの力……、後ろの山の上から橋に向かって放射されてるぞーっ!」

 もみじが鏡太朗に向かって叫んだ時、子猫と子猫を追いかける少女はすでに橋の上を走っており、その足元が激しく振動を始め、橋が大きく波打ち始めた。

「その娘と猫が危ねぇええええええっ!」

 鏡太朗はもみじの叫び声を聞くや否や、少女を追って駆け出したが、その時にはすでに少女と子猫の足元の橋には無数の亀裂が走っており、亀裂はもの凄い速度で橋全体に広がっていった。

 ナツが慌てて車から降りて叫んだ。

「ダメだ! 間に合わない!」

『絶対にあの娘と子猫を守るんだ!』

 鏡太朗は心の中で叫んだ瞬間、常人離れしたスピードで走り出し、瞬く間に橋の上に到達したが、その瞬間、橋全体が粉々に崩れ始めた。

「きゃああああああああああ!」

 少女は悲鳴を上げながら、崩れていく橋の破片と一緒に十五メートル下の川面へ向かって落下していき、鏡太朗は橋の破片の上で身動きできないまま、川の手前の河原に向かって落下し始めた。

『橋が崩れて動けない! 助けられない!』


「古より時節の移ろいを司る青朱白玄之尊しょうすはくげんのみことよ! その御力(みちから)を宿し給え! 氷柱之槍!」

 車の隣に立つまふゆが、胸の前で両前腕を交差させ、左右の掌を突き出すと、掌から赤と黄色が混じった深みのある黒『玄色』の光が放射され、光は川の手前の土手に命中して二つの二メートル四方の氷塊になり、崩れて落下していく橋の破片に向かって、二つの氷塊から合計十本のつららが様々な角度で伸びた。つららの中の一本が鏡太朗の足元の近くを通って、そのまま落下する少女の下方まで伸びた。

「ありがとう、まふゆさん!」

 鏡太朗はつららに飛び乗ると、もの凄い速さでつららの上を走り、落下している少女を右腕で抱きかかえた。

「うわっ!」

 少女を抱えた瞬間、足元のつららが折れ、鏡太朗は別のつららに飛び移ったが、そのつららも折れ、鏡太朗は次々と別のつららに飛び移り、足元のつららを折りながら子猫に向かって走った。

「もう少しだ!」

 まだ折れていないつららは残り一本となり、鏡太朗は川面から五メートルの高さで最後のつららに飛び移りながら、伸ばした左手で子猫を受け止めた。しかし、その瞬間に足元のつららが折れた。

「うわあああっ! え?」

 鏡太朗の下にある川面は、半径十五メートルの範囲が氷に変わっており、その上に橋の残骸が広がっていて、鏡太朗はその上に立っていた。鏡太朗が土手を見上げると、まふゆがギラギラした目で両腕を組んで笑っていた。

「はっはっはっはーっ! どうだ、屍鏡太朗ーっ! これから起こる展開を的確に読むあたしのキレキレの頭脳と、あたしのめっちゃ凄い術で助かっただろーっ? あたしのお陰で命拾いしたなーっ! あたしはお前の命の恩人だって一生忘れるなよーっ! はーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ……」

 まふゆは急に身を屈めて右手で腹を押さえた。

「わ、笑い過ぎて、は、腹が痛い……、息ができない……」

 まふゆは涙を流しながら、腹痛と呼吸困難でうずくまった。

「まふゆさーん、ありがとーっ! 本当にまふゆさんは命の恩人だよーっ! この恩は一生忘れないよーっ!」

 鏡太朗は笑顔でまふゆに向かって叫ぶと、左手を顔の前に持ってきて子猫の目を見ながら話しかけた。

「さっきは驚かせてゴメンね。怖がらなくていいよ。俺は絶対に君に嫌なことをしない。誓うよ」

 鏡太朗が優しい声で語りかけて笑顔を見せると、子猫は『にゃーお』と鳴いて喉をゴロゴロ鳴らし、リラックスした様子を見せた。

 鏡太朗は少女を下ろすと、少女に笑顔で語りかけた。

「ごめんね。子猫をびっくりさせて。車で送るから一緒に行こう」

 少女はおどおどしながら口を開いた。

「あ、あの……、わ、わたしなんかを助けてくれて……、あ、ありがとうございます」

 少女は最後の『ございます』を消え入りそうな声で言うと、微笑んでいる鏡太朗から子猫を両手で受け取り、子猫を大切そうに両腕で抱えながら、鏡太朗の後に続いて歩き始めた。少女は前を見ずに、足元を見ながら俯いて歩いていた。

  

「まふゆ、おめぇの術と判断力はたいしたもんだ。ありがとうな」

 まふゆの隣で土手の上に立ったもみじが、笑顔でまふゆに言った。

「でしょ、でしょーっ! やっぱあたしって凄いよねーっ! もみじさんがそう思うなんて、やっぱあたしはめっちゃ凄いよねーっ! はーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ……」

 まふゆは急に身を屈めて右手で腹を押さえた。

「わ、笑い過ぎて、は、腹が痛い……、息ができない……」

 まふゆは涙を流しながら、腹痛と呼吸困難でうずくまった。その隣では、ナツが無表情のまま冷や汗を流していた。

「もみじ、さっきは強力な呪いの力を感じた後、目の前で崖崩れが起こり、今度は強力な呪いの力を感じた後で橋が壊れて崩落した。これは、誰かが俺たちを狙ってるとしか思えないぞ」

「ああ、間違いねぇな。ただ、あたしたちを殺す目的だったら、車が橋を渡っている間に橋を壊すはずだし、そもそも車自体を狙うはずだ。一本道の前後を塞がれた……。これは、あたしたちをここへ足止めするのが目的なのか?」

 まふゆが立ち上がると、目がギラギラした笑顔をもみじに向けた。

「もみじさん、この道なら行けるんじゃない?」

 土手の横に車一台が通れる幅の未舗装の道があり、その道は森と土手の間に伸びていた。

「この道を行くしかねぇってことか……? 誰かが、あたしたちにこの道を進ませるのが目的で道を塞いだのか? この道の先には一体何がある? この道を行くのはリスクが高いな……。

 だが、あの娘の服装は、どう見ても入院患者用のものだ。病気なのか? 水も食料もねぇし、あの娘には薬が必要かもしれねぇ。危険があっても、この道を行くしかねぇな」

 もみじは不安と緊張が高まっていくのを覚えながら、道が向かう先を呑み込んでいる暗闇を睨んだ。


 もみじたちの背後の山は、崩落した橋に面した側が木々で覆われており、山の頂上付近に生えた木の枝の上に二つの人影があった。

「これで、あの者らは此方(こなた)たちの許へやって来るぞよ」

 平安時代後期から江戸時代まで武士が着ていた直垂(ひたたれ)を着た人物が、甲高い女性の声で言った。その直垂(ひたたれ)の上衣と袴には、白地に血飛沫(ちしぶき)のような赤黒いまだら模様が入っており、それを着ている人物は、手と指、首に包帯を巻き、黒い髪を肩まで伸ばし、顔には土を素焼きしたお面を付けていたが、そのお面は歪んだ埴輪の顔のようないびつな形状をしていた。その人物の左腰には、長い打刀(うちがたな)と短い脇差の大小二振の刀を差しており、胸には人間の頭蓋骨で作られた笛が紐で吊るされていた。その頭蓋骨の上部には短い竹が突き刺さり、竹の上部には息を吹き込む歌口と呼ばれる孔があり、頭蓋骨上部には、指で塞ぐための孔が左右に五つずつ、竹の両横に一直線で並んでいた。

 その人物の左肩には、身長六十センチほどの幼女の姿をした人形が座っていた。その人形は、十九世紀にフランスやドイツでつくられていた磁器製の顔とガラス製の目を持つビスクドールと呼ばれるもので、黒い貴婦人のドレスと帽子を身に着け、可愛らしい顔をしていたが、左目は美しい青いガラスの瞳であるのに対し、右目は眼球よりも大きな黒い水晶を無理やり嵌め込んでいて、その周囲の肌には亀裂が入っていた。その人形は無表情のまま顔を右に向けると、口だけを動かして冷たさを感じさせる声で言葉を発した。

咒嗟(じゅさ)、わたくしたちは先回りして待つことにしましょう」

「心得たぞよ、怨咒(えんじゅ)よ」

 咒嗟(じゅさ)と呼ばれた直垂(ひたたれ)を着て仮面をつけた人物は、怨咒(えんじゅ)と呼んだ人形に答えると、もう一つの人影に向かって言った。

「さあ、戻るぞよ。漆咒魄(しつしゅはく)よ。お前たちの出番であるぞ」

 咒嗟(じゅさ)はお面を少し上にずらすと、頭蓋骨の笛で不気味な音を奏で、頭蓋骨の笛は音を響かせながら目の部分から涙を零した。

 漆咒魄(しつしゅはく)と呼ばれた人影は、笛の音を聞くと、男性四人と女性三人の合計七人の声で一斉に低い呻き声を上げた。

 呻き声が止むと、暗く小高い山に不気味な笛の音だけが響き渡った。笛の音が突然止むと、その後は静寂が一帯を包み込んだ。

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