第6曲目 「昔の夢」②
月曜日の朝。
アパートの7階にある哀晴の家の七星と使っている部屋にて。
オレは「おはよー」とか言いながらベッドの上で寝ている七星を横目に見た。
「てか、起きろよお前。前にも2度寝して寝坊しただろ。掛け布団取るぞ」
「寒いからそれは絶対やめろ」
「じゃあオレもう部屋でるね」
オレは布団をたたみながら言った。
「おやすみー」
「ったく2度寝かよ。おはようなのかおやすみなのかどっちだ。遅刻しても知らんからな」
オレはパジャマのままリビングに向かった。
「おはよう、真斗。あれ、七星は?」
キッチンにいた哀晴が聞いてきた。
「2度寝してる」
「なるほどね。七星起こしてきて」
「了解」
結局起こすことになるのか。と思いながらオレは部屋に戻った。
時は流れて登校中。
「いやー、今日も寝坊するとこだったわ。ありがと、まな」
七星があくびしながら言った。
「あっ。そうじゃん。まだ学ランのボタン開けたままだった」
七星は急いでボタンをした。
「あーあ。今日体育2時間あるんだけど」
「マジで?まなのクラス、体育2時間もあんの?キツっ。小学生は気楽で良いよね」
七星はそう言いながら前を歩く小学生3人組を見つめた。
成山中の隣には、同じ成山大学附属の成山小がある。
確かに小学生は気楽で良いけど、もうあの頃には戻りたくない。
あれは小2のときのことだった。
オレがまだ京都の小学校に通っていた頃は、友達もいなくて話す相手もいない状態だったので、毎日退屈だった。
家にいても、両親は朝早くから仕事に行って夜遅くになるまで帰ってこないから退屈なのは同じ。
朝食も夕食も1人だし、教室で食べる給食のときもヒマだ。
学校では毎日、何かしらのいじめに遭っていた。
「七星がいるから生きていけるのかな」
オレはそうつぶやいた。
「ん?なんか言った?」
水筒のお茶を飲みながら七星が聞いてきた。
「なんでもねえよ」
「ならいっか。・・・もう8時10分じゃん!遅刻する!」
七星がそばにある公園の時計を見て言った。
「うそ、もうこんな時間かよ。8時15分になるまでに教室行くぞ!!走れー!」
オレは七星と一緒に中学に向かって猛ダッシュした。