第3曲目 沈黙の時間
でも、昔あった大きな出来事はコレで終わりじゃない。
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またときは戻り4、5年前。
母の再婚から約3ヶ月が経った。
静岡の街は、夏の終わりを告げる風が心地良かった。
薄暗い夕暮れの中、オレの頭の中はいつもと同じ考えでいっぱいだった。
兄の七星や、仲間たちとの楽しい日々、音楽のことだ。
土曜日。
「じゃあね、真斗」
オレは家の近くの道で19歳だった従姉妹・田波哀晴を見送ろうとしていた。
その日は哀晴と一緒に夜10時くらいまでバイクに乗ってドライブに行っていた。
「あっ、そうだ。」
哀晴がバイクから降りて背負っていたリュックからお菓子を取り出した。
「これあげる!真斗、このお菓子好きでしょ?」
「ありがとう」
オレがお菓子を受け取ると、哀晴はバイクに乗り、行ってしまった。
オレは家に戻った。
でもまわりがやけに騒がしかったので、オレはあたりを見まわした。
「け、警察!?なんで!?」
「まな・・・」
七星が泣きながらオレに抱きついた。
「七星、どうなってんだよコレ!」
その後オレは、警察や七星から今まであった出来事を聞いた。
七星が見た地獄は、オレには想像すらできなかった。
オレたちは家族を失った。
それだけでなく、七星は何もできなかった自分に対する後悔に押しつぶされそうになっている。オレにとって、アイツはただの兄じゃない。いつも頼りにしていた、守ってくれる存在だった。そして、今は逆に彼を支えなければならないと思っている。
彼の苦しみを少しでも軽くしたい。そのためにオレは、彼を励まし、支える役割を担わなければと常に自分に言い聞かせている。でも時々、肩の重荷に耐えきれず、何もできない自分を恨むこともある。オレの心のどこかには、いつか兄を救えなくなるのではないかという恐れが潜んでいた。
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そして、中1の4月。
「おーい、まなー!」
放課後。
校門から少し離れたところで七星を待っていたオレは返事をした。
「家に持ち帰りたいからトランペット持って!」
「なんでだよ。まあ、持ってやるけどな」
オレは七星からトランペットの入ったケースを受け取った。