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第1曲目 いじめっ子といじめられっ子、兄弟になる。=気まずい

それは、4、5年前の出来事だった。

当時小学3年生だったオレ・真斗まなとは母親とともに京都から静岡に引っ越した。

父親との離婚を機に静岡にやってきた。

どうにか友達を作りたくて、いつも家の近くにある公園に通っていた。

でもそこに、「ある人物」がやってきたことで、オレの人生は少しずつ変わっていった。


###


4、5年前の7月の土曜日。

いつものようにオレは家の近くの公園に行った。

いつもこの公園には、人は1人もいない。

いるのは、オレだけ。

オレだけ、のはずだったが、そこに見たことない奴がいた。

その人こそ、のちに母親の再婚でオレの兄となる鎌田七星かまたななせだった。

その時は七星の名前も知らなかったし、どんなやつかも知らなかった。

オレはただの好奇心から、その少年に興味を持った。そいつは少し小柄で、大人しい様子だった。オレはニヤニヤしながら彼に近づいていった。

「なんでここにいるの? 友達もいないの?」と声をかけると、七星はびっくりしたようにこちらを見た。目が合った瞬間、彼は目を伏せてしまった。

「もう帰った方がいいよ。一人じゃ遊べないのか?」

オレは心の中で笑いながら言った。

不思議なことに、彼の反応は予想以上だった。彼はただ黙ってうつむいているだけだった。


その日から、オレは何度か七星をからかうことにした。公園で遊んでいると、彼を見つけてはわざと遠くから大声で叫んだり、友達と一緒に彼を囲んで無視したりした。七星はいつもオレの言葉に耐えて、結局は逃げるようにしてその場を離れてしまう。

その様子を見るたびに、オレの心のどこかにはちょっとした罪悪感が芽生え始めていた。

だけど、この公園はオレのもので、七星はその一部に過ぎなかったのだと、心の奥でそう思っていた。


数日後、オレは母が再婚したという人の2階建ての家のドアを開けて、リビングに行った。

オレの頭の中に嫌な予感がしたのはそのときだった。

恐る恐る机の方を見ると、そこにいたのはよくあの公園にいる人物・七星だった。

嫌な予感は当たってしまったのだ。

「あの、名前は?」

まだこの頃は七星の名前も知らなかったので、とりあえず聞いてみることにした。

「鎌田七星・・・」

そう答えたきり、七星はオレと目を合わせようとしなかった。

オレは鎌田真斗になったのか、と思った。

そして、人生でこんなに嫌な目に遭ったのは初めてだ、とも最初は思っていた。

その日から、オレと七星は人前では仲の良い「兄弟」を演じ、2人だけのときは喧嘩してばかりだった。


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