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実はいっぱい食べる腹ペコギャルが二股されてたから、胃袋を掴んでクズ彼氏から略奪することにした  作者: 蒼唯まる


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腹ペコギャルの友達には真実を

 あれから雫は一時間目までは保健室で休んでいたようだが、結局体調が優れないままだったので早退していた。

 とはいえ、あの体調だ。無事に家まで着いたか心配だったが、どうやらギャル友達のグループチャットにちゃんと家に帰れた旨の報告をしていたようだから、そこには安堵した。


 一応、俺も個人的にメッセージは飛ばしてみたものの、ごめんなさい、の一言が返ってきただけで、それ以降は音沙汰が無かった。


 それから遣り場のない漠然ともやもやした感情を胸の奥で留めてどうにか昼休みまで時間をやり過ごし、いつも通りに非常階段で弁当を食べていれば、後ろのドアがゆっくりと開かれる。


「……うわ、本当にここで食べてるんだ」


 微かに驚きを含んだ声。

 現れたのは、三浦と笹本と鈴木の三人だった。


「前からずっと昼休みになったらどっかに消えてるなーとは思ってたけど、まさかここにいたとは……」


「まあな。……三人で来たんだな」


「そりゃ、サシはちょっとねえ。ぶっちゃけあたしらの仲ってそこまでじゃん?」


「確かに。それもそうか」


 笹本の言うことも尤もだ。

 一旦、弁当を床に置いて俺は三人に向き合う。


「悪いな、こんなところに呼び出して」


「別に構わんよー。梨乃亜たちも蘇芳には聞きたいことがあったし」


 言って、鈴木は空いているスペースにハンドタオルを敷いて、そこに腰を降ろす。

 三浦は扉に、笹本は踊り場の手すりに背中を預けていた。


 三人に声をかけたのは、雫を保健室に運んだ後、四人で教室に戻る途中だ。


 ——話したいことがあるから、昼休みにここに来てくれ、と。

 俺としては誰か一人さえ来てくれればそれで構わなかったのだが、来なかったやつへの説明の手間が省けるし別にいいか。


「それで、ウチらに話したいことって?」


 三浦に訊ねられ、俺はポケットからスマホを取り出し、三人に差し出す。


 口で説明するよりも実物を見せた方が手っ取り早いだろう。

 動画を再生させれば、たちまち全員絶句した。


「嘘でしょ、これって……!?」


「八町くん……くんは、もういいか。それと四組の片桐じゃん」


「うわあ、これは……うん、エグいわ」


 三人に見せたのは、八町と片桐がホテルから出てきた時に撮影した動画だ。

 明瞭ではないものの、二人の会話もちゃんとマイクが拾っていたので、これで二人が裏で繋がっていたことも確信がつくだろう。


「どうして、これを蘇芳が?」


「……本当にただの偶然だ。バイト帰りにばったり出会したから撮影した。盗撮だから全然褒められた行動ではないけどな」


「まあ、そうだね。でもさ、これってつまり……」


 ああ、と笹本に頷いて答える。


「浮気していたのは八町の方だ。噂はどうであれ、これが紛れもない事実だ」


 言えば、ギャル三人は息を呑んだ。


 こんなリアクションになるのも無理はなかった。

 何せ表では、八町と片桐が付き合っている素振りなど微塵も見せていなかったのだから。


 驚きを隠せないまま、笹本が恐る恐る俺に重ねて訊ねる。


「ね、ねえ……まさか、雫はこのこと知ってたりしない、よね……?」


「いいや、もうとっくに知ってる。そもそも、櫛名が八町と別れることを決めた最大の理由は、あいつらの浮気現場を目撃してしまったからだし」


 頭を振った瞬間、三人は更に驚愕する。


「……流石にこの動画は、櫛名には見せてないけどな」


 そう付け加えるも、三人の開いた口は塞がらないままだった。


 まあ、いきなり思っても無かった事実を立て続けにぶつけられれば、こうなるのも無理はないか。

 思いつつも、構わず俺は続ける。


「……本当に損な奴だよ。櫛名は。全部を知ってしまっても、中学の頃の恩があるからって八町には浮気してた事実を突きつけないで、しかも周りにも事実を伏せたまま別れたんだから」


 ——なのに……その結果がこれかよ。


 つい奥歯を強く噛み締める。

 あれだけ念入りに釘を刺しておけば、もうあっちが行動を起こすことはないと思っていたが、見積もりが甘かった。


「このことは誰にも言うつもりはなかったんだけどな。でも、こうなってしまったからには、もう黙ってるわけにはいかない」


 雫の意志に反する形になってしまうのは、本当に申し訳なく思う。

 だけど、後でなんと言われようが、これ以上、雫の心と名誉が傷つくのは見たくない。


「だから、これからどうしたらいいか相談したい意味も含めて、櫛名と仲の良いあんたらには先に事実を伝えようと思った。……まあ、これが呼び出した理由だ」


 多少の差異はあれど、三人の反応はどれも似たようなものだった。

 驚きと困惑とそれから——憤りの入り混じった表情を浮かべていた。


 愕然としたまま互いに何度も視線を交錯させた後、


「——なるほどね、事情は大体分かった」


 ようやく三浦が唇を開いた。


「八町には恩があるとは雫本人からも聞いてはいたけどさ、何もそこまでしなくてもいいでしょ……」


「俺もそう思う」


「……まあでも、そんな度が過ぎるくらいお人好しなところが雫の良いところでもあるんだけど。あの子、ガチガチのピュアっ子だから」


 三浦の発言に笹本も鈴木もうんうんと頷いていた。

 それから鈴木が首を傾げて俺に訊ねてくる。


「ところでさ、何で蘇芳はそんなに雫によくしてくれるの? やっぱ、雫のことが好きなの?」


 好きって、もしかしなくても恋愛感情的な意味でだよな。

 頭上を仰いで、雫に対する感情を思考する。


(俺は——、)


 けれど、これだといえる答えが出なくて、ぐちゃぐちゃの考えのまま、


「……どうだろうな。櫛名のことは好ましいとは思っているけど、正直これが恋愛感情かどうかは分からん。けど、櫛名の味方をする理由は断言できる」


 前に本人にも直接言ったが、あの時と答えは一緒だ。


「目の前で酷く傷ついてたから放っておけなかった。ただ、それだけだ」


 三人を真っ直ぐと見据えて言えば、


「——まあ、今はそれでいいか」


 三浦がふっと笑みを溢してみせた。


「分かった、ウチらも協力するよ。夏希も梨乃亜もそれでいいよね?」


「もち!」


「あいさー」


 三浦に即答する二人を見て、俺はこの三人を頼って正解だったと強く思う。

カテゴリ週間一位になってました。

拙作を応援していただき、本当にありがとうございます。

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