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20円のメロンパン

作者: ヨロズヤ

 中学生の頃、学校からの帰り道にとあるパン屋があった。名前はもう忘れてしまったが、何やらオシャレな英語だった気がする。私はそこによく立ち寄って、メロンパンを買っていた。実に私好みのメロンパンで、外側はガリッとしていて中のパンはふわふわ。値段も130円でお手頃ときた。結果、店に立ち寄った時には必ず購入し、月のお小遣いの約2割ほどをそのメロンパンに費やしていた。

 ある日、いつものように学校からの帰りにパン屋に立ち寄った。お店の前に着いた時、私は入り口の扉に張り紙が貼ってあるのを見つけた。張り紙には「大変申し訳ありませんが、一部商品を値上げいたしました」と書かれていた。昨今の値上げの影響がついにここにまで及んでしまったのか。嫌な予感がして扉を開ける手が少しの間止まったが、来たものはしょうがないと店の中に入った。特に何か変わっていたわけではなかったが、一部の値札の上から新しい値札が貼られていた。メロンパンのところを見るのはなんだか怖くて見る気になれなかった。とりあえず店の中を歩いて回る。あんぱんが120円から140円に、ミニクロワッサンが30円から40円に、ピザパンが320円から360円になっていたりと、随分色々な商品が値上げがされていた。そうして見ているうちにメロンパンが売ってあるところへ来てしまった。見ないようにはしていたが、新しい値札が貼られていたのが見えてしまっていたので、値上げされていることは確かだ。さて、一体何円になっているのか。


 メロンパン 150円


 150円、150円か。何となく予想していたくらいの値段であった。が、痛い。痛すぎる。学生にとっては、その20円の値上げすら命取りなのだ。いやそれは言い過ぎたが、この影響は確かに大きい。結局150円を払い、メロンパンを買った私は、家に帰りながら20円高くなったそれを食べていた。私には、20円分美味しくなっただとか、そんなものは感じられなかった。未だに実感が掴めなかったが、財布からお腹の中へと消えた150円がそれを何よりも雄弁に語っていた。

 それからというもの、店に行ってもメロンパンを買わずに他のパンを買うことが時々あった。変わったのは値段だけなはずなのに、私の方は随分変わった。そのおかげか、普段買わないパンを買って食べてみると、案外美味しい、なんてこともあった。

 中学校を卒業して高校に進学すると、通学路も変わり、あのパン屋の前を通ることも無くなった。そして、あのパン屋にはめっきり行かなくなってしまった。


 高校三年生になった今でも、あのパン屋とメロンパンのことを時々思い出す。値上がりしても何も変わっていなかったことを思い出して、どこかへいってしまった20円のメロンパンに思いを馳せるのだ。

 とても短いですが以上となります。この話は実話ではないですが、一部自身の経験を元に書いています。日常の至る所にある小さくて暗い変化を書きたいと思い立って、筆を走らせた次第です。

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― 新着の感想 ―
先を知りたくなりました。 成長したところ、 もっと読みたいで終わる方がいいのか、、?!
[一言] 20円ぶんのメロンパンなのですね。「外側はガリッとしてい」るという描写から「ガリガリ君」を連想しました。「コオリ」の外側に比べ「ふわふわ」の中身がヨロズヤさんのお気に入り、すなわちこのメロン…
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