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一番星(リメイク)

作者: スミンズ

 小学生の時に、僕は友達とふたりで科学館へ行った。様々な展示物を見学し終え、少しだけ眠くなった時間帯に、「ああそうだ」と思いついたかのようにプラネタリウムへと向かった。


 その日は土曜日ではあったものの、別に人で混み合うような場所ではなかったので、僕ら以外には少しだけ年上の小学生らしき3人組と、母子2人組だけだった。


 小さな映画館位の大きさの、ほぼ中央の席を取った僕たちは、ワクワクしながら上映を待った。


 「あのね、プラネタリウムって、初めてなんだ」友達は呟いた。


 「へえ。そうなんだ。えっとね、これからここが真っ暗くなって、お空に星が浮かぶんだよ」


 小さい頃の僕は、それを天井とは言わなかった。


 「へえ。楽しみだね」友達は薄暗闇の中、僕だけに見えるような微笑みを浮かべた。


 そして、やはり全くの時間通りに、照明が消えて、暗くなった。


 「楽しみだね」僕は天井を見上げながら、そういった。


 「うん。そうだね」友人も頷いた。


 『はい。皆様、お待たせいたしました。本日4回目のプラネタリウム上映会となります』プラネタリウムの端っこにいる科学館の館員が、アナウンスを始めた。すると、天井には夕焼けのような映像が映し出された。


 『今見えてる空は、この街に今日訪れる、夜……、その初め頃の様子ですね。さて、みなさん。星は見えますか?』


 僕は空を見上げた。まだ暗くなってないから、あんまり良くわからなかった。


 『はい、正解は、ここですね』そう言うと館員はポインターで星のある場所を照らした。


 「あ、ホントだ。うっすらとあるね」僕が言うと、友人は頷いた。


 『皆さんは見つけられましたか?見つけられたのならば、それは一番星というものになります。今回の場合だと、金星、ということになります。ただ、一番星には定義があるわけではなくて、大雑把に❝夜空を見上げて、初めて見える星❞と言われることもありますね。だから、人によっては金星が一番星じゃないこともあるかもしれませんね』


 すると、友達は「そうなんだね」となんだか感慨深げに頷いた。すると、友達は静かに人差し指を立てると、その指をゆっくりと僕の方に向けた。


 「それじゃあ、私にとっての一番星は、○○君だね」そう言って彼女は微笑んだ。


 「うーん。良くわからないや。僕にはなんにも見つけられなかったけれど」頭の悪い僕は、それがどういう意味かもわからずそう答えた。



 大人になり、僕は彼女との接点などすっかり失い暮らしている。だがたまに夜空を見上げると思うことがある。


 あまりにも人が多すぎると、星の光さえ消えてしまうことがあるんだ……。


 僕は果たして、いつか一番星を見ることができるのだろうか?


 ああ、いつかその時がくればいいな。なんて。

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