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プ ラ ッ ト ホ ー ム

作者: 犬も食わない

 天井から降る行先案内の矢印が、ひたむきに落下を促していました。人の群れは矢印に従い、出口へ続く階段を降っていきます。

 わたしはその光景をしばらく眺めては、有象無象に手を振ろうと、考えなくもありません。きっと誰もわたしの存在に気が付くことはないでしょうけれど。

 或いは、その矢印が南北の定まらない方位磁針のように回転していたとしても。彼らはお構いなしに、流れながれて階段を降るのです。

 わたしはその事がとても悲しくて、そして当然だとも思うのですから、毒を食むような感情です。

 いま、わたしのプラットホームは、どうしようもない程に煌いていました。東から直行する紫外線とその他が、時刻表に広告に案内図に乱反射して、わたしの視界を狂わせます。

 こうも素敵滅法の世界なら、いっそ毎日の生活を捨て、今日に取り残されたいくらいの情緒です。線路上のゴミの意固地に敬意を払って、怠惰を拒絶する改札口に蹈鞴を踏んで、欠伸に頬を伝う酸性を拭って、わたしは明日という権利を放棄すれば良いのです。

 そうした逡巡の隙間に、溢れるくらいの朝日を乗せた電車が通過しました。大きな音をたてて、風を吹かせて、わたしの目の前を通り過ぎていきます。

 佇んだままのわたしは、遠くなる電車に手を振ろうと、考えなくもありません。

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