Remote.06 覆面レスラー殺人事件 1/19
「さあ、やってまいりました、ここ、トヤマコロッセオで行われる本日のメインイベント、スペシャルタッグマッチ。エル・ゴリオン、パラドクス組対、石塚信明、柏新市郎組。その一戦の火蓋が、今まさに切られようとしているわけであります。
先に入場を済ませているのは石塚と柏。その両者の視線は、テーマ曲に乗って今花道をゆっくりと歩いてくる、エル・ゴリオンとパラドクスの二人に、まっすぐに向けられております。特に、柏がゴリオンに向けている視線の鋭いこと。それもそのはず。シーズン最終戦、柏はゴリオンが持つベルトに挑戦することが決まっております。本日のタッグマッチは、いわばその前哨戦と位置づけられているわけであります。期待の新鋭、柏新市郎が、王者ゴリオンからベルトを奪取するのか。はたまた、ゴリオンが王者の貫禄を見せつけて返り討ちにするのか。
さあ、両チームとも入場を済ませました。まず、名前を呼ばれるのは柏。鈴木リングアナのコールに大きく両拳を掲げてファンの拍手に応えます。次は石塚。こちらはいつものように、無造作に右腕を上げるだけ。ふてぶてしいその表情。続いて、対戦相手であるマスクマンコンビのほうは、まずパラドクスがコールを受けると同時にその場でバク宙、相変わらずの運動神経の良さを見せつけます。エル・ゴリオンのほうは、両手で天を突き刺す、こちらもいつものおなじみのポーズで観客の声援に応えます。
さあ、あとはゴングが鳴らされるのを待つばかり……おっと、待って下さい。何者かがリングに駆け寄っていきます。黒いジャージを着て、頭からすっぽりとフードを被っています。誰なんでありましょうか。リング上の選手たちも、この突然の乱入者を目に留めたようであります。
通路を走り抜けてきた謎の男、素早くエプロンに上がりました。近づいていったレフェリーが、通路の奥を指さして退場するよう促しますが、しかし、この乱入者、それに素直に従う様子はないようであります。レフェリーの静止なにするものぞとばかりに、ロープをくぐってリングイン。突如現れたこの男、何者なのでありましょうか。いったい何が目的なのでありましょうか。試合に水を差された形の四人の選手たちも全員、黒いジャージ姿の乱入者を睨み付けており、リング上には一種異様な緊張感が漂っております。
――おっと、乱入者がパラドクスに近づきました。『お前、何者だ?』と言わんばかりに、パラドクスは大きく両腕を広げるジェスチャーで――あっと! 乱入者がフードを脱いだ! あーっと! これは? これは! どういうことなのでありましょうか? フードを脱いだその下から現れたのは、これは――ブレイド? ザ・ブレイドです! 間違いありません! ブレイドのマスク! これは、これはいったい、どういうことなのか! 予期せぬマスクを目の前にして呆然と立ち尽くすパラドクス。それもそのはず――あーっ! 一閃! ハイキック一閃! ブレイドのマスクを被った乱入者が繰り出したハイキックが、パラドクスの側頭部を打ち抜きました! なんということだ! 崩れるパラドクス! レフェリーがパラドクスに駆け寄り、パートナーのゴリオンが乱入者に詰め寄りますが……あーっと! 乱入者、リングを下りて猛然とダッシュ! 通路の奥へと姿を消しました! それよりも、パラドクス、パラドクスは大丈夫なのでありましょうか? リング上に大の字になったまま、ぴくりとも動いておりません! パートナーのゴリオン、さらには対戦相手の石塚と柏も、心配そうにパラドクスのそばに屈み込み、懸命に呼びかけているようであります。あっと、レフェリーに呼ばれてドクターがリングに上がりましたが、パラドクスの様子を見るやすぐに、救急車を呼ぶよう本部席に要請したようであります! これは、これは、何がどうなってしまったのか。何が起きたというのでありましょうか。これは、誰もまったく予期していない出来事だったというのでしょうか。本部席も含め、場内騒然としております。ゴリオン、石塚、柏、それに控え室から何人かの選手も飛び出してきて、リング上でパラドクスを心配そうに取り囲んでおります。パラドクス、大丈夫なのでありましょうか。ドクターや選手たちの懸命の呼びかけにも、ここ放送席から見る限りでは、未だにパラドクスは何も反応を示していないようであります! パラドクス、かなり危険な状態なのでありましょうか……?」




