第1話 何が起きたかわかりません。
タイトルにルビつけれなかったのでここで書きますが正式には
せっかくゾンビになったので侵略できるとこまで侵略してみる
です。
物書きをするのが初めてで拙いところがたくさんあるかと思いますが読んでいただけると嬉しいです。
暗く日の光も当たらぬ森の奥に隠れるように建っている三階建ての屋敷
そこに至るまでの道や目印もないところをみると本当に隠す目的で建てられたのだろう
所々錆びた鉄の柵に囲まれ庭には雑草が生い茂り、屋敷には
蔦が絡んでいる様からは手入れなど全くしていないことが嫌でも伝わる
ミステリー小説なら殺人事件が、B級映画なら怪しげな実験でも行われていそうな屋敷の中、その一室では正にその両方が起きていた。
―――さて、困った
これは大変困ったことになった
私は今、頭が痛い。二重の意味で。
肉体の方は頭に靄がかかった感じと言うのだろうか、マシにはなったがその靄がまだ晴れきっておらずタマにズキッとくる痛みもある。
問題は肉体ではない方、私の目の前にゴロゴロ転がってるモノ
間違いであってほしいが間違いなく死体だ。
しかも一人や二人ではない少なく見積もっても四人はいるだろう
いるだろうとは随分あやふやな言い方だが仕方あるまい
なんせ中にはグチャグチャで人の原形を留めていないモノまであるのだから
「にしても酷いな、グログロのグロじゃないか とてもじゃないが世間様に見せれる姿じゃないな。
まるで獣にでも食い荒らされたみたいだな」
呑気に死体の実況報告めいたことをしているが普通なら死体を見たら発狂してるだろう。
発狂していないのは私が死体を見慣れているからに他ならない
といっても決して私は人殺しではない。
ちょっと特殊な環境で育ったから見慣れているだけだ………あれ?どんな環境だっけ?
おやおや?おかしいなどんな環境で育ったのか思い出せないぞ?
う~ん、小さい頃のことすぎて忘れてしまったかな?まぁいっか
とにかくこの死体は私のせいではない。起きたら何故か死体があったのだ。
では誰がこれをやったのか、そんなのは正直知らん!
私がやってないのだから私以外が犯人に決まっている。この発言が犯人ぽいと言われればそれまでだが私はやっていない。
そもそも私はなぜこんなところにいるかも分からないのだ。そんな人間が殺しなどやっている訳がなかろう。では誰がやったのだろうか、しかもこれだけ酷いことをしておきながら私のことは殺さなかったのも不自然だ。
可能性としては
1、何かのデスゲームに巻き込まれた
2、私が犯人
3、私を犯人に仕立て上げたい誰かの陰謀
こんなところだろうか?一つずつ検証していこう
まず1番だが突拍子もないのは当然として根拠がない。デスゲームに巻き込まれたなら他にも誰かいて協力するとか犯人からのアナウンスがあってもいいだろう。だが今のところ何もアクションがない。保留だな
続いて2番は絶対違う。よし、次。
3番なら他に誰もいないのもアナウンスがないのも納得できる。
割りと正解なのではないだろうか。
ならばこの後誰かが部屋に入ってきて私が犯人だと騒ぎ立てる輩が現れる筈だ。この場から逃げた瞬間を目撃されて犯人扱いされるより少しでも私が犯人ではないという証拠を集めた方が有意義だろうと判断する。
証拠隠滅してた疑惑を吹っ掛けられるかもしれないがこのまま何もしないよりは行動した方がよかろう。
そうと決まれば早速証拠集めだ。
まずは状況の把握だ。足を下手に動かすと血溜まりについた足で足跡をつけてしまうので目配せだけで見渡そう。
部屋の造りは…鉄製か?随分頑丈な造りだな、扉まで鉄製で窓はないときた、何かを逃がさない為か何かから身を守る為かどちらにしろ普通の部屋ではないな、広さは12畳ぐらいだろうか。
部屋の中心には手術台のようなものが置いてあって周りには手術で使いそうな道具が散らばっている。
そういえば死体の何人かは手術着みたいなのがついてるな、手術中に殺されたのか?他の死体は血塗れでよくわからんけど黒いローブを着てるように見えるな。手術室で?不衛生じゃないのか?なぜローブなんか…ん?血や肉塊で気付かなかったが床に何か描いてあるな。
これは…「…魔方陣……だよな」
手術に魔方陣は使わないよなぁ。イカれた宗教の儀式か?
こんなとこ一秒でも居たくねぇなぁ、そろそろ棒立ちすんのやめてどっかいこうかしらん。
現実逃避したくなり頭を掻こうと手を動かす(チャラッ)
「え?」今、手から変な音したな。自分の手元から発せられた音の正体を見やる。………くさ…り?………手錠か?
「………まぁ♪なんて素敵なシルバーアクセサリーでしょうっ♪」
片足を後ろに上げて手を顔の横で合わせる。娘が彼氏でも連れてきた時のおっとりママみたいな反応だ。
…ふざけてはみたが伝わりづらいし面白くないし状況は変わらない。なにやってんだ私。
嫌な予感がして手術台をもう一度見る。更に現実逃避したくなることに手術台の横には手錠を繋いでたであろう千切れた鎖が垂れ下がっている。これが意味するところは手術台で繋がれていたのは私ということだろう。しかも鎖を力任せに引き千切ったらしい。「ってことは私は生け贄か実験体ってことか?」あまりのことにため息が漏れる。
つーか私大丈夫か?身体弄られてんのか?気にしてなかったけど腹とか掻っ捌かれてないか?
…おっと、マジか、己が身を案じて見たら死体さんだけではなく私自身も世間に見せれる格好ではなかった。
すっぽんぽんだ。生まれたままの姿で美しい肢体を惜し気もなく晒していた。なんと美しい身体か。誰がなんと言おうと絶対美しい。決して粗末な身体ではない。絶対に。スレンダーなだけでこれからの成長に期待できる筈だ。
「……クソッ!貧乳だった!!どうせ身体を弄るんだったらナイスバディにしとけよ!!!ヤブ医者め!!!!」手術台を両手で台パンした音で我にかえる
いけない、いけない。死体で取り乱さなかったのに自分の肢体で取り乱してしまった。反省。つまらない親父ギャグで反省したことにも反省しておこう。
今まで不謹慎と冷静さで乗り切っていたのにこんなことでマジになってしまった。
ただ、自分に対して言い聞かせた意味だけで美しいと言った訳ではない、他にもちゃんとした意味がある。傷痕が全くないのだ。鎖を千切る程のパワーを出したなら手錠で手首に痣があってもおかしくない。それどころか手術痕も見当たらない。てっきり私が手術対象で私が暴れて鎖が千切れたかと思ったが勘違いだったか?確かにか弱い私が鎖を千切るパワーがあるようには見えない。
早とちりだったかな。
手術痕に関しては切る必要のない手術だったかもしれないな。
それなら腹の中にヤバイ薬や爆弾が詰められてることもないだろう。そこは安心だ。だが一応身体を隈無く見ておいた方がいいかな。
何処かに鏡でもあるといいんだが…おっ?部屋の隅、ドアとは正反対の位置に全身鏡があるじゃないか。
早速見てみよう。鏡のとこまで移動する。ん?足跡がつく?そんなんどうでもいい、まずは自分の身の安全を確認することが最優先だ。
なぜ鏡がこんなとこにあるかはこの際気にせず鏡に映る自分を見る。見たことを後悔した。
自分の顔を見てこんなに気落ちすることもないだろう。決して顔がブサイクなのではない。むしろその逆だろう、とても綺麗な顔立ちだと思う。汚れさえ着いていなければ…
「あれれー?私ってばオチャメさんっ♪お口の周りにこーんなにケチャップついてるぞ♥️」ちなみにケチャップとは言うまでもないだろうが血だ。おいおいおい!、マジか!!、マジなのか!?
「なーにが《私は犯人じゃない》だ
どう考えても私が犯人だろ!2番だよ2番!!
長い前フリしやがって、いっちょまえに選択肢みたいなの用意して思考してたのが恥ずかしいわ!!!!!
何?デスゲームって!?真犯人の陰謀とかねーよ!漫画の読みすぎじゃねぇの?あー恥ずかしい。食い荒らしたのは獣じゃなく私じゃん!汚い食べ方しやがって恥ずかしすぎる、食べるならキレイに食べろよ!!!」
おっと、しまった、サイコな一面を見せてしまった。冷静さを失ってとんでもない発言をしてしまったな。反省反省。
そもそもなんで私は人間なんぞ食ってんだ?いくらお腹減っても人間なんか食いたいと思わないけどなぁ、まぁ極限の飢餓状態を経験したことはないから言い切れはしないけども食べてた時の記憶がないのは流石におかしくないか?分からないことがいくつかあるがそれよりも今はやることがあるだろう。
私が犯人とわかった以上見つかる前に逃げる。無罪である証拠なんて何もないんだからさっさと現場を離れるに越したことはない。
鉄製のドアの取っ手に手を掛ける(ガチャガチャ、ガチャガチャ)
ん~開きませんねぇ、鍵がかかっているようだ。開けるときに内側から鍵を使わないと開けられないとはどういう造りしてんだろうか?
鍵がどこかにあるはずだが、見えるところにはなさそうだな。
内側から開けられない、鍵が見当たらないとは脱出ゲームみたいだなぁ。しょうもない感想を思い浮かべつつ死体の誰かが持ってないか探すことにする。
足の裏が血で粘ついて気持ち悪いが死体まで移動する。
うわぁ汚ぇなぁ
血やら胃の内容物やらが混じりあった死体の衣服を探していくが手触りと臭いがキツくてつい顔を背けてしまう。
見るのは大丈夫だが感触と臭いは堪えられないな。だがしかし、この作業は最悪の場合あと3回程経験しなくてはならないかもなので慣れた方がよいかもしれない。倫理観的には慣れてはいけない物だろうが仕方ないだろう。
探し始めて3人目にしてようやく目当ての物が手に入った。中々に古めかしいデザインの如何にも鍵です!って感じの鍵をグチャグチャローブさんからご提供いただきました!あざす!あなたの死を無駄にはしません!
血の池と死体を踏み越え意気揚々と鍵穴に差し込みに行く。
ガッ、コツッ、コツッ。…あれ?おかしいな、入らないんだが……まさか別の鍵か?…畜生っ!期待させやがって!怒りでつい死体蹴りしたくなるが理性で持ち堪える。
危ない危ない、ただでさえ、倫理観ギリギリアウトな気がするのにこれ以上やると人として踏み越えてはいけない所を平気で踏み越えるマッド野郎に成り下がってしまう気がする。
…野郎と言っても言葉の綾で私は女だけどね!
不愉快だがまたしても死体漁り続行である。一度解放された苦行にまた向き合わねばならないとは精神的にくるものがあるな。
おっ!今度は一発でゲットだぜ!今度は齧られ白衣さんからいただきました。
白衣さんの鍵は牢屋の鍵でも付いてそうなリングに通してある3つの鍵だ。
持ち手がそれぞれ青、赤、緑の鍵だ。
こんなけあればどれかは正解だろう。
今度こそ大丈夫だろうと能天気に順番に鍵を差していく。
ガチャリ、3つ目に使った青の鍵でドアの開放に成功する。
「シャバの空気はうめぇなぁ」苦労して出られたのだ、お決まりのセリフでも言いたくなるってものだ。実際別に空気はうまくないけど、とゆうか空気がうまいなんて感じたことないけど。確かに血や内容物が混じった気持ち悪さは薄れたがどことなくまとわりつくような陰鬱とした空気が漂っていて別の気持ち悪さがある。
とにかく出られたことに変わりはない。だが、出たところで建物の廊下である。これからどこに向かえばいいのかもわからん。どうしたものか。
とりあえず廊下を歩いていけばその内、角に突き当たるか出口まで行けるだろう。歩を進めないことには何も始まらない。
……ふむ、迷子になった。廊下の赤い絨毯の上で立ち止まりどうしたものかと考える。廊下を進んでも一向に出口に向かってる気がしない。景色も代わり映えしないから同じところをグルグル周回してるかどうかさえわからない。まさかこれが世に聞く無限回廊だろうか。だとしたら答えは1つ。
扉に向かってダーイブ!
勢いよく近くの扉に体当たりする。
ゴツッ!
普通の扉はか弱い女子の体当たりでは開くことはない。先程の衝突音で再認識させられた。へなちょこアタックで開くのは精々障子くらいか。
私はクール系だと思ったけど案外お茶目なところがあるせいでバカっぽく見られてないか不安である。
さて、クール系女子である私は先程のことはなかったかのように自然な流れでドアを開く。……開く。……ひら…く。
開きませんねぇ。鍵がかかっているようですね。
ふぅ。締まらないな私。ひょっとして私はドジっ子属性でもあるだろうか?
鍵がかかっていても無問題!私には鍵があるのだよ!ひらけーゴマ!
ガッ!ガッ!
……この鍵じゃなかったみたいだね。正直このくだりはもうやったからまたやるなんて、思わなかったZE。
まぁ他のも試せばいいだけの話なんだけどね。
…ガチャリ
今回は古い鍵、緑、赤の順で3つ目の鍵で開いた。なんだろう、次使う時があったらその時も3つ目に使う鍵で開くのだろうか。
実に運が悪い。
部屋の中に足を踏み入れると書斎のようだった。
部屋にはデスクがあり、入口以外の三方を本棚に囲まれている。窓とかないけど消防法的に大丈夫なんだろうか。
デスクに近づくと沢山の書類と本が2、3冊置かれているのが見えた。
書類に目を向けると施術内容とその後の経過観察を記してあるようだった。これがカルテというものだろうか。初めて見た…気がする。
添付された写真を見つける。そこにはさっき鏡で見た顔があった。
「…私?」
専門用語が多過ぎて何て書いてあるか分からないが、私の身体を相当弄くりまわしてることは伝わる。
あの殺害現場を私一人が凶器もなくどうやったのかと思ったが、まさか私は改造人間か?
バッタがモデルのベルトで変身するバイク乗りと同じパワーでもあるのだろうか?
それならあの惨状も起こせそうではある。
何をどう処置してあるのか分からないからこれ以上見ても無駄な気がするな。
続いて本に目を移すことにする。
おっ、こっちは読めるな。
日記のようだな。
白衣さんの持ってた鍵で開いた部屋だから白衣さんの日記であろう。
他人様の日記を覗き見るなんてけしからん行為だが今は緊急事態だ。目を瞑ってもらいたい。
ここに何か私のこと書いてあるかもしれないしね。
日記から得られる真実が残酷なものとは知らず、私の指はページを捲っていく。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
読みにくかったり誤字、脱字等あればご指摘いただけると助かります。