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04 スキル使用の代償に・・・

 太陽が、ジリジリと街全体を光の世界で覆い尽くす。

 日影がないことから、恐らく正午だろう。

 そんな太陽の至上到達点に達すると共に、店を経営する住人たちの熱も更なるヒートアップを見せる。

 昼時だから、客の足も多くなるというわけだ。


 --にしても、人が多くなったせいでさっきより暑くなってる気が・・・


 太陽の熱も含まれているだろうが、なんだか蒸されている気分だった。

 住人一人一人の熱が街の外に逃げることなく、こもっているのだろうか?

 どちらにせよ、暑苦しいことには変わりはなかった。


 --あちぃ・・・あちぃよ・・・


 体温調節のために、俺の額や頭部から汗が大量分泌される。

 その汗が俺のTシャツを次第に蝕んでいき、このままでは濡れた服を使い回して生活をしなくてはならなくなってしまう。

 洗濯することなく、Tシャツをそのままにしておくとどのくらい臭くなるのか。

 短い人生でも長い人生でも、誰もが一度は経験したことがあるだろう。

 

 --とりあえず、金!金がないことには何も始まらない・・・!


 今までプレイしてきたゲームで、金に困ったことは一度もなかった。

 そもそも、ほとんどのゲームは初期装備として武器を与えられるのだが、俺の手には何も残っていない。

 エクストラスキル『十宝剣』は、恐らく武器を取り出すスキルなのだが、スキルの使い方を知らない俺には武器がないようなものだといっても過言ではなかった。

 誰かに尋ねるのが手っ取り早いのだが、俺は見知らぬ人と話をすることができない、いわゆる『コミュ障』という禁断症状を発症している。

 だから、誰かから話しかけてもらえない限り、俺からのコンタクトは一切ない。


 --はぁー、何でこんな世界に来ちゃったんだろう・・・


 今更ながら、そんなことを思うようになってきた。

 容赦なく降り注ぐ問題の数々に、俺は問題解決の糸口を探し始めていた。

 そうすれば、こんなに辛い思いすることはしなくて済むのだから。

 俺は、再びステータス画面を開いた。

 ログアウトボタンは、いつもステータス画面の中に納まっているのが常識だ。

 その常識を信じた俺は、路上のど真ん中だというのにも関わらずに、ステータス画面の中に含まれているであろう、ログアウトボタンを隈なく探した。

 だが、結果はいくら見ても同じだった。


 「まあ、そうだよなー・・・」


 溜息を一つ吐く俺に、一人の商売人が声をかけてきた。

 シルクハットの帽子をかぶり、不気味な仮面をつけた細身の男。

 どう見ても、怪しさが滲み出ていた。


 「俺に何か用でしょうか?」


 何の変哲もない普通の問いかけに、男は突然不気味に笑い出した。


 --こわ!


 こんな不気味そうなやつが、急に不気味に笑い始めたら、誰でも逃げ出したくもなるだろう。

 だから俺は、そそくさとこの場から逃げようとした。

 そんな俺の背中を見つめながら、男は痛い所を付いてきた。


 「スキルの使い方が分からない・・・とか?お悩みなんじゃないですかね?ヒャハハ!」

 「・・・は!?」


 この世界からの強制脱出の方法を言い当てられたわけではないが、悩みの種の一つであった「スキルの使用方法」を正確に言い当てたこと。

 この男が、なぜそれを俺から読み取ったかは分からなかった。


 「聞きたくはないですかー?ヒヒ。私なら何でもお教えますよー?ヒャハハ」

 「え、っと・・・これを本人に言うのはどうかと思うんですけど、かなり・・・いや、普通に怪しいですよね?」

 「いーや?全然怪しくなんかありやせんよー?ヒヒ」


 語尾に「ヒャハハ」だったり「ヒヒ」だったり、それにつけ足すような服装。

 どう考えても普通ではない。

 だが、スキルの使用方法を教えてもらう絶好の機会だ。

 もしかしたら、今後一切話しかけてもらえないかもしれない。

 普通に怖いが、ここは彼の言うことに従うのがベストな選択だろう。

 まあ、何かあれば逃げれば済む話だ。

 見たところ、鎧を身に纏った彼らよりかは、遥かにショボく見えた。

 

 「本当に、本当に何でも教えてくれるんだよな?」

 「ええ、もちろんですとも、ヒャハハ。ではではこちらへどうぞ?ヒヒ」


 俺は男に案内させるがままに、再び人通りの少ない路地裏へと入っていった。

 そして数分歩いた後、俺は地下へと繋がる下り階段への前へと連れてこられたのだ。

 犯罪臭を漂わせている入り口を、男が先頭に立って下っていく。

 

 「ここは・・・一体何をしている所なんですか?」


 俺がそう尋ねても、男は何も言うことなく真っ直ぐに下っていく。


 --いや、どう考えてもこれはまずいだろ・・・

 

 そうは思うも、この世界で生きていくためには、この男の助言は必要なのだ。

 俺は男の後に続いて、暗い下り階段をゆっくりと降りていき、下り終えた俺の目の前に広がっていた光景は衝撃的なものだった。

 いくつもの段ボールが山のように積まれており、段ボール一つ一つには「開放厳禁」の文字が記されている。

 どうやら、ここは段ボールに包まれる何かを保管しておく倉庫のようだった。

 男は段ボールの間に作られた、人一人分の狭い道をゆっくりと歩きながら、


 「何をしている所か聞きたかったんですよねー?ヒャハハ。ここは、他国から仕入れた品物を置いておく倉庫なのですよ。ヒヒ」

 「他国から仕入れた品物・・・?それって一体何ですか?」


 この世界は、一つの国で構成されているわけではないらしい。

 輸入して仕入れたものを国にでも献上するのだろうか、品物を保管する倉庫という予想は間違いなかった。

 だとしたら、一体何を輸入しているのか。

 次に聞き出すポイントとしては間違いではないだろう。

 聞き出そうとする俺に、男は不気味な笑みを浮かべながら告げた。


 「それは企業秘密ですよー、ヒャハハ。ところで、あなたはスキルの使用方法を知りたいのですよねー?ヒヒ」

 「あ、そうだった。どうしたら使えるんですか?」

 「教える代わりに、一つだけ条件を提示します、ヒヒ!」

 「条件って・・・?」 

  

 急に語尾が大きくなるものだから、余計に驚いてしまった。

 そんな俺に対して条件が提示される。


 「実は、最近景気が非常に不安定でしてねー?ヒャハハ。仕入れと仕出しを活性化させたいんですよー、ヒヒ。だからあなたには各国へ赴き、その物流の活性化作業をして欲しいのですよー、ヒャハハ」

 「・・・それだけですか?」

 「はぁい、それだけでございやすよー?ヒヒ」

  

 それが本当の話なら、俺が各国を回って訪れるということになる。

 そうなれば、元の世界に帰る手がかりを掴めるかもしれない。

 俺に長い時間をかけて考える余地などはなかった。

 俺はコクリと一回頷きながら、


 「分かりました、あなたに協力しますよ。そのためにもスキルは使えるようになりたいのですが・・・」

 「そうですね、ヒヒ。あなたがここへ来たのはそのためですからなー、ヒャハハ。事業内容を説明する前にも先にお教えしましょう、ヒヒ」

 「はい、お願いします」


 男は自身のステータス画面を見ながら説明をし出した。


 「まずはステータス画面を開いてくださいな、ヒヒ」

 「はい、開きました」

 「そしたら、どれか一つだけスキルをタップしてくださいな?ヒャハハ」

 

 俺は男の指示通りに、ユニークスキル『操作人(コントローラー)』をタップし、スキルの詳細画面を表示した。

 この表示画面は、路地裏で途方に暮れていた時に、すでに表示したことがあった。

 

 --これ、さっきも出した画面だけど、ここから使えるようになるのか?


 そんな疑問すら受け付けないように、男はサラサラと説明を続ける。


 「その表示画面を掴むようにして胸に持っていけば、思うだけでいつでもどこでも発動させることができますよー?ヒヒ」

 

 半信半疑な俺だったが、とりあえずはこの男の説明通りにしてみる。

 表示画面を掴み、それを胸に持っていく。

 すると、俺の体は黄色い暖かな光に包まれ、それが消え失せると同時に表示画面に一言『スキルの装着が完了しました』と表示された。

 どうやら、男の言っていたことは本当らしい。


 「で、できました!ありがとうございます!」

 「いえいえ、大したことは教えていませんよー?ヒャハハ。一回スキルを使われてみたらどうですかー?ヒヒ」

 

 この場所の管理者であろう男の許しが出たところで、俺はさっそくユニークスキルを試すことにした。

 俺のユニークスキルは『操作人(コントローラー)』、スキル一つを自由自在に操ることができるといったものだ。

 そのユニークスキルが使えるようになったというのなら、『十宝剣』も使えるようになったということ。

 俺は右手を前に突き出し、ユニークスキル『操作人(コントローラー)』を介してエクストラスキル『十宝剣』を使用した。

 目の前に光の泉が出現し、その中からゆっくりと一本の剣が姿を現す。

 どうやら、十本同時にはいかないようだ。


 --まあ、この剣でどうやって戦うのかが問題なんだけどな・・・。


 姿を現す剣を引き抜き、戦闘方法を必死に考えている俺の目の前で、男がいきなり爆破系らしき魔法を繰り出してきた。

 急の出来事だったために、俺は回避する余裕もなく、その魔法をストレートに食らってしまう。

 だが、俺に傷一つ付くことはなく、それはまるで魔法を無効化しているようだった。


 --剣を弾いた時といい、俺の体はどうしてしまったんだ!?そんなことより・・・


 なんで攻撃されたのかが理解できない俺に向けて、男は魔法を放ちながらその訳を話し始めた。


 「貴様!私を!私を騙したな!?」

 「騙した・・・?俺が一体何を・・・?」

 「とぼけるな!お前のその武器は・・・その武器はな・・・」


 男がそう言いかけた次の瞬間、多数の兵が狭い下り階段からぞろぞろと、この段ボールに包まれた空間へと流れ込んできた。


 「やはり!貴様!奴らとグルだったんだな!?許せん、許せんぞ!」


 俺に向けて憎悪を丸出しにする男は、筋力がそこまでないせいか、兵士たちに抵抗虚しく捕獲されてしまう。

 何が起こっているのかわからず、呆気に取られている俺に一人の兵士長らしき人物が近づいてきた。


 「ご協力ありがとうございます!おかげさまで密輸犯を捕獲することができました」

 

 どうやら、仮面をつけた男は密輸犯だったらしい。

 その男と席を共にしていたのだから、俺も捕まってもおかしくないのだが、兵士たちは俺を捕獲しようとしない。

 それどころか、兵士長は俺の目の前で膝をつき頭を深々と下げたのだ。

 そして、彼が放った言葉を俺は生涯忘れることはないだろう。


 「ずっとこの時をお待ちしておりました、『人神剣サタルダス』に選ばれし大英雄様。これから私たちと一緒に、王城までご同行して頂いてもよろしいでしょうか?」


 兵士長にそう告げられ、俺は『十宝剣』に選ばれたことを再認識した。

 捕まってしまった密輸犯に申し訳なさを感じながら、俺は兵士長と共に、王城へと向かったのだった。

 元の世界に帰るカギがあることを信じて・・・・・・

最後まで読んで頂きありがとうございます!

スキルの使い方を学んだ剣二の『遠距離剣士』としての名声上げが始まります!

ちなみに、周りの人間は剣二が『十宝剣』が使えることを知りません!

今後ともよろしくお願いします!

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