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♰♰♰ 牢獄から脱け出せれない者たち ♰♰♰

原先生の背後から冬の寒さを吹き飛ばす勢いで活気あふれる声がした。



「おはようございまーすっ!!!!原先生!」



原先生に怯えてよそよそしく挨拶をしながら校門の下をくくろうとする生徒達が後を絶たない中で元気に自分に挨拶しに来る生徒がいる事に原先生は思わず感心してしまった。


・・・・が、原先生は声がした背後を振り向いた途端、別の意味で驚いてしまった。そこには自分達にまったくやましい所はないでしょ?と堂々とした態度で立っている真由と夏樹と麻子の3人がいた。原先生の目線は自然と3人のその不自然な胸のふくらみへと注目した。



「やだ。あなた達・・・・豊胸手術したハリウッドスターみたい。」



♰♰♰



 名城を乗せたスクーターは前を歩く人を避けるそぶりもせずに前へと進んで行った。

名城が通行人を避けないので名城のスクーターの前を歩いている生徒達は自分でスクーターを避けなければならなかった。



スクーターが向かう先の緩やかな斜面の坂では6人の男子生徒達の活気あふれる話し声が聞こえてきた。

だが、6人はどこか他の登校しに来ている生徒達とは違っていた。6人の生徒は自分達が学校に持ってきた重たい教科書が入っているかばんを手に持ってないのだ。その内の一人である顔に似合わず、髪を派手な茶色に染めている堀田が後ろを振り向いて皆のカバン持ちをしている丸之内に向けて言った。



「おーい早くしろよー教室に着いちまうだろー」



どっと笑い声が津波のように押し寄せてきた。彼らに遅れてやってくるかのように下り坂の上にいるまるまる太っている体型の丸之内幸太が両手に6人分のかばんを持ってペンギンのようによちよちと歩いていた。


一つのかばんがまるで犬の首輪のように丸之内の首に掛けてあった。丸之内の背後からも丸之内幸太を笑う冷たい外野からの声がかすかに聞こえてくる。丸之内幸太は顔が真っ赤に腫れたアンパンマンのように鼻をすすった。


6人の生徒らは自分達には出来無い事を平気で出来てしまう人達に憧れ、その憧れが犯罪や暴力など間違った方向へと憧れを向けてしまっていた。複数で一人の弱い者をいじめているだけなのだが、それを自分達の強さだと思い違いをしていた。集団でやる事によりいじめる事が正しい事にさえ思えていた。



 やがて防音と一瞬の風と共に丸之内の顔面を目がけてかばんが投げつけられた。ちょうど丸之内の横を横切ったスクーターに乗っている名城から投げつけられたかばんだった。丸之内はバランスを崩して地面に尻もちをついてしまった。その様子を見た前にいた6人の男子生徒はゲラゲラと下品な笑い声を天高くあげていた。だが、名城は6人の男子生徒に振り向くこともなく、煙のように校舎の裏側にある駐輪場へと消えて行った。



残された堀田やら6人の男子生徒達は名城に追いつけなかった。

きっとこの先、一生彼らが名城に追いつく事はないだろう。


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