庭師と青空と見物人
ガスの料金を支払いにガス屋さんまで歩いていると、庭師が樹木の形を整えていた。
月を跨いでしまった事に少し後ろめたさを感じつつも、頭上には気持ちのいい青空が広がっていたので気分は良かった。
少しぼやけた青空に樹木のハッキリとした濃い緑、その景色の中に何を感じるだろう。
ボサボサだった樹木はハサミの軽快な音に合わせ、徐々に美しく変貌していく。
庭の知識は無いけれど、それでも綺麗なものとそうでないものの見分けはついた。
伸びきった髪を久し振りに床屋で切ってもらうと、自分の顔が違って見える。
髪型が変わっただけで随分と印象が変わるものだ。
庭師による樹木のヘアカットはどうだろう。
雑談をしながら切っているようだが、それはそれでいい。
仕事中は私語厳禁、無言で作業をしろだなんて僕は反対だ。
楽しく仕事が出来るのならその方がいい。
こんな考えは社会に通用しないのだろう。
別に構わない。
僕はそう思っている。
ただそれだけの事なのだ。
反社会的で非常識的な思考が僕の形を作っている。
この世に於いて自分の幸せを追い求める事は間違いなのだと誰かが言ったが、僕はその社会的常識に反してでも自分の幸せを追い求める。
僕は幸せの中で死にたいのだ。