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第107話 真歴史~魔王と魔族が悪となった日~




満たされた光が収まると精霊女王とレヴィード達の下には見たことがない町が広がっていた。


「ここは城下町かな…」


煉瓦(レンガ)造りの建物と石畳が整然と敷かれる綺麗な街並みで、その先には旗が掲げられた勇壮な城があり、雰囲気は大聖都ロマニエに似ている。今は何かの祭なのか多くの人々で賑わっており、沿道には人間も亜人種(アナザーノイド)も魔族も群衆となって笑顔と歓声で賑わっていた。


《これは先程見せた戦いの後…勇者と魔王の祝勝の凱旋(パレード)だな》


「勝ったんですね」


《とりあいずは退けた…というところだな》


精霊女王の口振りから辛勝と思われるが、世界の脅威がいなくなって平和になったんだなと夢の中と分かりつつもレヴィード達は安堵した。


「来たようだな」


レヴィード達が後方に目をやると鼓笛隊の行進曲と共に多くの人に担がれた巨大な御輿が登場し、その上には空飛ぶ船の船首にいた勇者と魔王が座って沿道の群衆に手を振っていた。


「…!」


「ソシアス、どうしたの?」


「ダディ…」


「何だって?」


ソシアスの視線の先は勇者と魔王を乗せた御輿の後ろを進む一回り小さい御輿に乗っている5人の中の1人であるダークエルフに注がれていた。


「精霊女王、あの人達は?」


《勇者パーティーだ。勇者が旅の途中で集めた仲間でな。あの人間が流離いの女剣豪・ハツネ、魚人種(アクアノイド)がこの時代の大海賊の親玉・コリュートス、虎の獣人種(ビーストノイド)が闘技場最強の戦士・ギアランテ、そしてこの後にソシアスの生みの親となるダークエルフの大魔導師・ダディアント…》


「一番後ろにいるのは精霊…?」


《あれは2000年前の(わらわ)だ》


「えっ?」


2000年前の精霊女王は今とは全く異なり、背が高く髪が水色の短髪の20代後半程の大人びた印象である。


(わらわ)はここから今まで50回くらいは生まれ変わっているからな。容姿は全て異なるのだ》


「なんで一緒にいるんだ?」


(わらわ)はパーティーには加入はしていなかったが裏方で働いたからな。それで凱旋に同行したのだ》


「では…これから何が起こるかもご存知なのですか?」


《…うむ》


今まで雄弁な語り口とうって変わって精霊女王は表情を沈ませながら弱々しく頷く。それもその筈、この後に何かが起きて現代まで続く魔族の偏見と迫害が始まるのだ。






勇者パーティーと魔王の凱旋は町を抜けて城門を潜る。御輿が綺麗に整えられた芝生と花壇と生け垣が映える庭園を抜けて城内への入り口前に着くと鼓笛隊の演奏が止み、御輿から勇者パーティーと魔王が降りてくる。


〈お待ちしておりました〉


それを大臣が出迎え、勇者パーティーと魔王は城へと入っていく。それに続いてレヴィード達もふわーっと地表近くまで降りてついていく。


〈勇者、そして魔王殿よ。よくぞ喰凶星(メトゥスティラ)を滅ぼしてくれた〉


〈はっ。有り難き言葉ながら今回は取り逃し、滅するには至りませんでした〉


〈…ちっ〉


レヴィード達がついていった謁見の間では王が待っており勇者パーティーと魔王は横一列に整列して(ひざまず)く。王はでっぷりと太り無精髭を生やした汚ならしい見た目で、世界のために戦った勇者からの報告を聴いて舌打ちするなど、容姿も人柄も良いとは言い難かった。


「悪そうな王だな」


《うむ。(わらわ)も他の勇者パーティーも魔王も好かなかったが活動資金を提供してくれた存在だからな。無下にも出来なかったのだ。…さて、少し時を進めるぞ》


精霊女王が手拍子を2回打つと一瞬暗転し、明るくなると場所は城内の広い会場へと移っていた。レヴィード達の眼下ではピシッとしたスーツや色とりどりのドレスを着た貴族や王族関係者が集まり、大量の料理が並ぶテーブルが置かれていた。


「…祝勝会か」


《うむ》


「あ、勇者があそこに」


ターシャが指差す先には窓辺で青年と話す勇者がいた。


〈ゴホ、ゲホ…〉


〈王子、大丈夫ですか?〉


〈うん…〉


勇者は咳き込む青年と親しげに話していた。青年は14~15歳前後の中性的な甘い(マスク)の高貴そうな人物で、具合が悪いのか、青ざめた青年は執事に連れられて会場から出てしまった。


「あれは一体誰ですか?」


《この国の第一王子だ。ただ生まれつき肺の病を患っていて体が弱くてな。それ故か勇者に憧れて、たまに帰還してくる勇者達に旅話をせがんでは目を輝かせて聴く…あの王の息子にしては可愛げがある優しい子だった…》


精霊女王は悲しげな視線で退場する第一王子を追っていた。

それから数十分程、ダンスなどの催しも開かれ祝勝会が盛り上がる中、とある執事が勇者に耳打ちした後、勇者と昔の精霊女王が会場を抜けた。


《…ついてこい》


苦虫を噛み潰したような顔をしながらも精霊女王は勇者と昔の精霊女王を追うようにレヴィード達に促す。


《…》


「…」


勇者と昔の精霊女王が暗い廊下をカツカツと移動する中、レヴィード達はピッタリくっついているが終始無言であった。精霊女王の張りつめたような表情から、これから何が起こるのか、と訊いてはいけないような気がしてレヴィード達は息を呑みながら黙って顛末を見届けることにした。


〈王子。参りました〉


勇者はノックして声を掛けるが中から反応はない。扉の前で数十秒程様子を見ても音沙汰がなく、勇者はもう一度ノックしてから扉を開けた。


〈王子!?王子!?〉


部屋の中で何があったのか、勇者と昔の精霊女王は酷く動揺した様子で部屋に駆け込み、レヴィード達も後を追う。


「あっ…!」


ベッド近くの照明の薄明かりが照らしたのは酷い光景だった。ベッドに寝ている第一王子の胸に剣が鍔の近くまで深々と刺さっていたのだ。もはや息がないため回復魔法で治療することも叶わず、白かったであろうベッドのシーツや掛け布団には血の赤がどっぷりと染みこんでいた。


〈王子。お薬を…きゃああああぁっ!!〉


〈何事か!?うっ、王子!〉


そこにメイドの悲鳴が響き渡り、見回りの騎士も悲惨な現場に駆けつける。


〈勇者よ!まさか王子を殺害するとは!〉


〈違う!!俺達が来た時にはもう!〉


〈騙されんぞ!あの噂は本当だったのか!〉


〈噂?〉


〈魔王と結託して我が国を乗っ取ろうとしているだろう!!〉


〈そんな事あるわけ…〉


〈黙れ逆賊め!取り押さえろ!〉


兵士が叫ぶとカチャカチャと甲冑を鳴らしながら十数人の騎士が部屋に押し掛けて勇者と昔の精霊女王を包囲した。


「茶番だな」


《ああ…。そうだとも》


殺害現場にメイドが偶然やって来て、丁度良く見回りの騎士が来て、即座に騎士が集まる、そんな御都合主義はまずあり得ない。これは明らかに勇者と魔王を貶める為の芝居(わな)だとレヴィード達はすぐ看破した。

しかしそれはレヴィード達がこの風景を演劇の観客のように見ているから理解できるのであり、嵌められた勇者と昔の精霊女王は明らかな芝居(わな)だと解っていても何も出来ない。

殺していないといくら弁明しても目の前の第一王子の遺体で言い逃れが出来ない。

魔法等で何かしら無罪を証明しようにも魔法で細工をした捏造と言われればそれまで。

逆上して暴れるのは論外、黙秘権を行使したところで何も進展しない、八方塞がりである。


「なるほど…。こうすれば王族…もとい人間は魔王や魔族を堂々と報復という名目で攻撃できるという訳だね」


「でもその為に自分の息子を殺しちゃうのかしら?」


《いや…。あの王は第一王子を愛してはいなかった》


精霊女王は補足として王家の内部事情をレヴィード達に話した。

王家には第一王子の他に7歳の第二王子がいるが、二人は純粋な兄弟ではない。第一王子を産んだ正妻は既に亡くなっており、その後に側妻との間に第二王子を産んだ、つまり異母兄弟なのだ。

正妻は政略結婚として隣国から嫁いできた姫で、美しい容姿だったが清廉潔白な性格のため民衆からの人気は高かったが王とは反りが合わずに意見を衝突させることが多く、一方側妻は領内の貴族の令嬢で常に王に甘い声で媚びて共に享楽に興じていた。

あの悪そうな王がどちらを気に入っていたかは言うまでもない。


「まさか王は継承権が優先的にある第一王子を始末する為に…?」


「反吐が出る」


《うむ。妾もそうだと思っている》


やっている事は外道だが、魔族を攻撃する名目を得る上に気に入った側妻(おんな)との子を公的に世継ぎに据えることができる、王にとっては一石二鳥の妙案、魔王と魔族にとっては最悪の構図(シナリオ)である。


「そんで、どして魔族を攻めるんだろ?仲良くした方がいいだろうに…」


《王は恐れていたのだ。いつ魔族の力が自分達に降りかかるのか、人間に取って代わり魔族に支配されないのか…とな》


「え…。じゃあ魔族の迫害のそもそもの始まりはあの王様が保身に走ったせいって事なのですか!?」


《ああ。愚かな事にな》


たった1人の(にんげん)の身勝手な謀略のせいで2000年間魔族達が偏見と迫害で苦しめられたのかと思うとレヴィード達は自分が今まで何の疑いもなく持っていた常識に嫌気が差して言葉を失う。特にレヴィードは自分も愚かな王と同じ人間という種族だと考えたら、生まれて初めて自分が人間であることを恥ずかしいと思い、そっと涙を流した。






その後、勇者と昔の精霊女王は騎士に囲まれながら会場に連れられたが、当然その有り様を見た他の勇者パーティーの面々と魔王は何がどういう事態なのか全く理解出来なかった。


〈魔王め!勇者をたぶらかして我ら王族、ひいては人間を滅ぼし、国を乗っ取る気でいるのか!〉


〈馬鹿な事を言う。喰凶星(メトゥスティラ)を滅ぼせない今、人間を滅ぼすなどそんなつまらん事をして余に何の得があるという〉


王の詰問に魔王は正論で返す。喰凶星(メトゥスティラ)を倒すために人間の協力が必要な以上、魔王が人間を滅ぼす道理はない。


〈陛下!魔王の言う通りです!今、人間と魔族の関係に亀裂が入ろうものならば、勇者と魔王の協力ができず2000年後に喰凶星(メトゥスティラ)の脅威に呑まれて世界が滅びます!〉


〈ふん、そんな事よりも今だ!ワシらの栄光を潰さんとする逆賊をどう裁いてくれようかで(はらわた)が煮えくり返っておる!!2000年後なぞ知ったことではない!野となれ山となれだ!〉


〈なっ…!〉


遠い未来の危機よりも自身が生きる時代が繁栄していればそれで良い、一国を持つ王としてはあまりに稚拙で無責任な発言に聞いた勇者も見ているレヴィード達も閉口する。


〈勇者よ。ワシの王子(むすこ)を殺害したばかりか王への反抗。恩を(あだ)で返しおって!〉


〈黙れ豚が!!〉


王が勇者に近寄って首筋に短剣を突きつけた時、魔王が吼える。


〈黙って聞いていれば、勇者を愚弄するでない!貴様ら人間なぞ、勇者の庇護のおかげで平和に暮らせているものを!貴様らこそ恩知らずと…ぐっ!!〉


魔王は怒りのままに魔法を放とうと構えたが、途中で苦しそうに胸を抑える。


〈…千年刻の呪いが今来るか…!〉


魔王の周囲に白色の魔法陣が浮かぶ。


「千年刻の呪い?」


喰凶星(メトゥスティラ)を討つために魔王が自身に掛けた呪いだ。不老不死と絶大な魔力を得る代償に1000年に一度しか目覚めず、目覚めてもだいたい1年程度しか動けなくなる厄介な呪い…。魔王はその呪いで眠って魔力を蓄え、時が来たら喰凶星(メトゥスティラ)に全てをぶつけるのだ》


「そんな…。それじゃあ魔王さんは喰凶星(メトゥスティラ)と戦う為だけに生きてるって事じゃない…。可哀想よ…」


《ああ…過酷な運命だ。だが魔王はそれを覚悟して自分にそんな呪いを掛けるほど、この世界を愛していたのだ》


1000年も孤独に眠り、起きても生を謳歌する自由もなく喰凶星(メトゥスティラ)と戦うしかない虚しい魔王の人生にフィーナは寂しげに呟いた。


〈はぁ…はぁ…。勇者よ〉


〈魔王!〉


〈さらばだ…。願わくばお主ともっと…〉


魔王は勇者に別れの言葉を言いかけた途中で白い光の粒となって消えてしまった。


「魔王はどこに消えたんだ?」


《魔王は1000年の眠りに就くために、魔王城にある(コア)へと強制転送されるのだ》


「魔王の孤独が始まるんだんね…」(魔王は何を言いかけたのかな)


レヴィード達が魔王の退場を見送ると勇者が王に土下座をした。


〈陛下!お願いがあります!!〉


〈なんだ?〉


〈俺が第一王子を殺したということで処刑されても構いません。ですが魔王は無関係という事にしていただきたい!お願いします!!〉


魔王が自身の生を犠牲にしてまでこの世界を守ってきた事を知っているからこそ、第一王子暗殺の首謀者という濡れ衣で魔王を人間の敵にしたくない。その一念で勇者は血が滲む程強く床に額をぶつけながら王に懇願した。






その数日後、王は勇者の懇願を受け入れ、第一王子暗殺の大罪人として勇者の処刑を城下町の大広間で執り行う事になった。

無論、勇者パーティーの面々は思い直せと処刑の前夜まで説得に尽力したが勇者の決意は固く、共に命を賭けて戦った仲間の声も届かなかった。


「これが2000年前の勇者の最期か…」


レヴィード達は処刑を見届けようと大広間に集まった群衆を上から眺めていた。大広間には高さ5m程の処刑台が建てられ、錆び付いた斬首台(ギロチン)が勇者を待ち受けている。勇者パーティーの面々と昔の精霊女王は勇者の最期を見るのが辛く、群衆のかなり後方にいる。


「あ、勇者が来たわ」


騎士に連行されている勇者は半裸で、鎖で両腕を後ろに縛られ、最期の言葉も許されないのか口元を覆うように鉄のマスクを着けられていた。


〈何で勇者様が!〉


〈何かの間違いじゃないのか!〉


群衆からは勇者を擁護したり助命を乞う叫び声があちこちから噴出したが王の決定は覆らない。勇者は騎士に引き連れられて階段を重い足取りで昇り、処刑台の頂点に着くと跪き、斬首台(ギロチン)に拘束された。


「勇者を連れて脱走…とかは考えなかったのですか?」


《そうすれば王の好き放題に事実をねじ曲げられるであろう。それにこう言ったのだ。俺一人の命でこれから先の新しい勇者と魔王の絆を守り、世界の希望としてあり続けるのなら安いものだ…とな》


精霊女王は泣くまいとするも声と拳を震わせながら勇者の最期の言葉をレヴィード達に伝える。

そうこうしている内に王も処刑台に上がってき、しんと静まり返った群衆に向けて声高らかに語り始めた。


〈これより勇者の処刑を執行する!世界を守るために戦ってくれた者をこうしてしまうのは不本意ではあるが、この国の未来を守るための最善の行為である!!この者は喰凶星(メトゥスティラ)によって生じた世界の混乱に乗じて魔王の誘惑に乗って結託し、この国の法と秩序を崩壊させて新たな魔王の国を建てようとしていたのだ!〉


〈…むぅっ!…ん゛ん゛!〉


「そんなっ!?」


「人間の屑め…!」


「あいつこそ悪魔だ!」


《…この時、あの王に一欠片でも良心があると信じた妾達が阿呆であったと悔いるばかりだった…》


なんと王は勇者との約束を破って魔王を悪に仕立ててしまったのだ。これには斬首台(ギロチン)に掛けられた勇者ももがいて抗議し、見ているだけのレヴィード達も無駄と分かりつつも怒りの声を王にぶつける。


〈我が愛しの第一王子はその侵略の第一手としてその命を散らせてしまった…。故にこれは報復である!人間は魔王に、魔族に屈しない!!たとえ同じ種族の英雄とは言えど、魔王に(くみ)する者、人間を裏切った者はこうして罪を(あがな)ってもらう!!〉


王は声を大にして叫ぶと斬首台(ギロチン)のレバーを引き、刃を降ろした。



パシュン



世界を救った勇者と言えども所詮は普通の人間、あっさり首を落とされ人間の裏切り者として処刑されてしまった。

そんな呆気ない死に様を見届けたレヴィード達は勇者のあまりの報われなさに嘆きも怒りも通り越して意気消沈して俯いていると眼下の群衆のおかしな様子が目に入った。


〈お前ら魔族は…そんな事を考えているのか!?〉


〈いや!そんなことは…〉


1人の魔族の男性が人間2、3人に囲まれて詰問されていた。


〈そうよ…。嘘だったら勇者様が死刑なんて有り得ないわ…〉


〈魔族は俺達の国を乗っ取る気なのか!〉


〈違う!そんな事は…!〉


魔族の男性は懸命に否定するも人間からぶつけられるのは疑心暗鬼の眼差しだけで、何かされるかもしれないという恐怖に駈られて逃げ出してしまった。


〈きゃっ!〉


〈あっ…!〉


その魔族の男性が逃げる際、人間の女性にぶつかってしまった。魔族の男性としては肩がぶつかった程度だが、小柄だった相手は転んで尻餅をついてしまう。すると、その女性の隣の人間の男性がその魔族の男性の胸ぐらを掴んだ。


〈おい!俺の嫁に何をした!?〉


〈い、いや違う!ちょっとぶつかっただけで…すまなかった〉


〈突き飛ばしておいて…この野郎っ!!〉


〈がっ!…うぅ…〉


人間の男性が魔族の男性の顔面をぶん殴る。余程強かったのか、魔族の男性は(うずくま)り、鼻から血が流れる。


〈なんだなんだ?〉


〈この魔族が俺の嫁を突き飛ばしたんだ!!〉


〈何だって!?〉


〈魔族は王様の言う通り人間の敵なのか!〉


〈やられる前にやっちまおうぜ!〉


複数の人間が(うずくま)る魔族の男性を取り囲んで殴ったり蹴ったりの激しい暴行を加える。


「やめろ!」


それを見かねたラティスが止めようと飛んでいくが所詮は夢の中、ラティスの手は人間の体を捉えることなくスーっと透過してしまう。


〈やめ、ごめっ…!〉


袋叩きにされている魔族の男性は全身痣だらけになって涙を流しながら謝るが人間達は聞く耳を持たず、いたぶり続ける。


〈やっぱり魔族は敵だ!〉


〈俺達もやるぞ!〉


その様子を見て波及するように魔族を攻撃し始める人間。


〈痛い!やめてくれ!〉


〈お願いします!子どもは!子どもだけは見逃して下さい!!〉


突如理不尽に襲われ始める魔族。


そんな(むご)い光景が大広間のあちこちに波及する。

王の言葉によってばら蒔かれた疑心暗鬼が敵意という確信に変わってしまい、魔族の迫害がこうして始まってしまったのだ。





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― 新着の感想 ―
[一言] 国が複数あってそれだけの技術レベルがあるのに王一人の謀略で他の国民や亜人まで騙されたのはおかしいかと。 大戦後の覇権争いになるの見越して諜報員は忍び込ませるだろうし。 少なくとも魔族以外の全…
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