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二十話・少年と子供の境界線

前回、十九話が間違えて二十話になっていましたのでタイトル修正しました。今回が二十話です。

混乱させてしまい申し訳ありません。

「そ、そんなに悩むものか?」

「もちろん。黙ってじっとする」

 服屋にて、カーキ色のシャツをカイリに当てながら、ルリコは反論した。近くにあった赤い星の付いたキャップに似た帽子も、被せてみる。

「人民服……いやなんでもない」

 ルリコはキャップとシャツを元に戻すと、次に青い鳥の刺繍が入ったアオザイを手に取った。男性用と区別する為か、合わせが逆になっている。女性用と違い肌が透けないよう適度にも厚い。

「この鳥の良いな。一万円札と同じ。金運上がりそーじゃね?うお、カタツムリ柄!」

 似合うとか色合いが映えるとか、全く考えずにルリコは服を決めてゆく。四着目を選び終えると、改めてじろじろとカイリを見回した。

「よし真面目にするか。肌の色含め、全体的に色が薄い……目の色を際立たせるには、色味のない黒白だよな、髪がちょっと青っぽいから青も良いけど。灰色じゃ地味になるし。でも黒はこの国じゃ暑苦しいか」

 ルリコはぶつぶつ呟きながら、白い服を片っ端からカイリに当て、頷いたり首を傾げたり忙しない。

「カイリご飯こぼさない?」

「こ、子供扱いするなと言っておるだろう!」

 二人のやり取りを、店員のおばちゃんは後方で微笑ましく見つめている。白い服二枚を選び終えると、ルリコは首を捻った。

「うーん、どうしても少年ぽいな。紺とか黒の方が大人っぽい?店員さんも思いません?」

 ルリコが店員のおばちゃんに尋ねると、おばちゃんは素早くルリコの隣に来た。イロと同じくらい、素早い。

「そうですねー、濃い目の色のほうが、こう、大人っぽく見えますね。暗い赤とかもイイかもしれませんねー。濃い色ならば灰色でも宜しいかと」

「え、地味じゃないですか?」

「縁取りが鮮やかなものもありますよー、勿論、柄や刺繍入りもありますんで。黒系も充実してます。ささ此方ですよー」

 目の前に出されては、当てられ引っ込められていく服をカイリは呆然と見つめていた。





 黒い紋様の入った手提げ袋を持ち、元気なルリコとは対照的に、カイリはかなりお疲れの様子だった。

「まだ服見ただけじゃねぇか」

「疲れるものは、疲れるのじゃ……」

 カイリは疲れが足元まできたのか、手提げの重さにフラフラし始めた。

(ご老体だから血糖値下がったのか?ま、病み上がりだから仕方ないか。黒豹にも驚いてたし)

 ルリコは屋台街まで行こうと思ったが、カイリの体調を考え竹のトンネルの近くにある店に入った。昨日の勉強で“喫茶店”の文字は理解出来るようになっている。

「お二人様ですか、こちらどうぞ〜」

 ピンクの浴衣を着た店員が案内し、メニューを置いていった。開けた窓から、海風が吹き込み心地よい。

 熱心にメニューを見ているカイリに「ご飯モノを食べろ」と釘を刺し、ルリコもメニューを見る。理解できる単語を拾いながら考えていたが、面倒になったので一番わからないメニューに決めた。

「カイリも決まった?」

「む。よし、決めた」

 店員を呼ぶと食事を注文し、ルリコは冷えた茶を飲んだ。予想通り麦茶だった茶を飲み干し、近くにあった陶器のポットからお代わりを注ぐ。

「そういえばさ、本屋ってある?」

「本屋か?あると思うぞ。何か調べたいのか?」

 カイリのコップにも麦茶を注いでやりながら、ルリコは目を伏せ呟く。

「あたし、この国に来て二人に“人魚”って言われたんだよね。最初わかんなかったけど、今は話題の人魚がどのくらい“人魚《性悪女》”なのか気になってて」

「“人魚”……そ、それは……」

「分からなかった時は、気にもしなかったのだけど、ね」

 ルリコの、口元は吊り上げているが目は全く笑っていない笑みに、カイリは怖ろしい程の寒気を感じた。

「ま、まあ、一発程は殴ってやると良い。女性を侮辱するとは、ろくでもない輩に決まっておろう。遠慮してやる必要あるか」

「カイリ……あんた、いい男になるよ」

 表情を一変させ慈母の様にふわりと微笑んだルリコに、カイリは酷く動揺していた。

 近くにあった塩の瓶をひっくり返してしまう程に。

「うぉぉ!どした?やっぱ疲れた?」

「き、気にするでない!甘い物を食せば回復致すゆえ!」

 零れた塩を布巾で必死に拭きながら、赤面したカイリは必死に誤魔化した。

「あー、塩ひっくり返すくらい誰でもやっから。そんな恥ずかしがんなよ」

 ルリコはカイリの手から布巾を奪うと店員を呼び、謝りながら布巾を交換してもらった。

 カイリも店員に謝ると赤面したまま俯き、頼んだ料理が来るまでじっとしていた。


 ルリコが頼んだ料理は、無理矢理言うなら

“鶏と海老と茸を挟んだフレンチトースト

 カレーソースがけ 旬の野菜を添えて”

 であった。

(料理も幅が広すぎて良く分からねぇ。美味しいけど、異世界っぽくねー!)

 ルリコはフレンチトーストを箸で苦労しながら千切ると、向かい側のカイリを見る。

 カイリは魚のスープがけご飯を手早く平らげ、デザートのバナナパフェを嬉々として貪っている。

(大分元気出た様だな。低血糖だったのか。中身ジジィだから、あたしが気を付けねぇとブッ倒れんな。介護介護)

 本人が聞いたら激怒しそうな事を考えながら、ルリコはフレンチトーストを口に入れた。




「無理に付き合わなくても。病み上がりだし」

「良い!儂も本を見たかったのじゃ」

「そう?じゃオヤツ買って帰ろうか」

「……頼む」

 二人は並んで歩きながら、店員に教えてもらった本屋を目指す。喫茶店を出た後に、カイリは何故かルリコの荷物を持ちたがったので、好きに持たせた。

 その様子を、女性や男性店員に微笑ましく見守られていた。

(子持ちと思われていませんように!)

 ルリコは見当違いに念じながら、カイリと共に本屋を目指した。



 暫く道なりに歩き、店員に教わった角を曲がると、窓に黒い布を被せた平屋が目を引いた。本の日焼け防止だろう。

「ここ本屋か〜」

「隣の建物は診療所のようじゃ。ルリコも、脇腹の具合を見てもらったらどうか?」

「いらね。折れてる感じじゃねーし。ただ見た目が酷いだけ」

 ルリコはうんざりした様子で言うと、本屋の扉を開けた。

(診療所であのエロ医者に、腹撫で回されんのはイヤすぎる!)

 内心はそう思っていたが、口に出さなかった為にカイリが、

(医者にかかれないのは、何か傷に理由があるのか……儂とした事が、失念した)

 と思い落込んでいたのには気付けなかった。

 店内は縦に細長く、所々にガラスと金属製のランプがあるが、やや薄暗い。埃っぽさにくしゃみが出そうになるのを抑え、奥へと進んだ。

「で“人魚”の本は神話?世界の民話的なもの?」

 先行するカイリは若干背伸びしなら、棚の文字を読み取ってゆく。

「神話であろう。人魚は海神の娘じゃからな」

「神話!?海神様の娘を“性悪女”なんて言っていいの?」

「……それについては諸説ある。しかし、定着してしまった以上仕方ないのではないか?」

「あっさりしてんな……」

(まあ、土地柄がアジアっぽいしルーズなのかもな)

 ルリコは自己完結し、本棚を隅からガン見した。カイリは棚に書かれた文字を確認すると本を一冊取り、中身を確かめた。

「此処に神話系があるようじゃ。どうする?ルリコが選ぶか、儂が選ぶか?」

「一冊ずつ選ぶ。カイリとあたしでな。そんな内容も重複しねぇだろ」

 ルリコが何も考えず黒い背表紙の厚い本を取り、カイリは何冊か吟味した後、青灰色の本を取った。

「カイリも何か買うんだろ?ほれ」

 カイリから本を受け取った後、財布から一万円札を取り出したルリコは、カイリのバッグに無造作に捻じ込む。

「バッグの中に財布も買ってあるから入れとけ。スられすんなよ?」

「……申し訳ない」

「謝んなって言ったろ。じゃ買い終わったら店出るか」

 ルリコは本を二冊抱えたまま、別の書棚に向かった。カイリもしっかり財布に紙幣を仕舞ってから、本を探し始めた。



「“オ・ル・マリーヴェスタ群島諸国連合の歴史”と、“群島諸国の特色”でいっか。大陸含めて国ごとの民族性の違いの本とかも欲しいけど、まだ必要ないか?」

 少しでもこの世界の知識を増やす為、ルリコは歴史と地理くらいは覚えておこうと思った。文字と一般常識は適当に手に入るが、歴史について人に根掘り葉掘り聞くのはどうかと思う。

(ま、カイリは老人だから聞くの嫌がんないと思うけど。風呂屋でも聞いてみっか)

 目の前にあった“イスタヴェラ王国史”を開くと、物凄い量の埃が舞った。

「わ、げほっ、ごほ!今日はもうこの二冊でイイや。場所覚えたし」

 開きかけた本を急いで元に戻し、ルリコは埃舞う一角から迅速に抜け出した。


 レジと思われる場所で寝ていたお爺さんを揺さぶって起こし、購入した本を抱えて店を出る。本は高く、四冊で一万九千もした。

 ルリコは何も買わずに店を出たカイリを探すと、日陰で野良猫をかまっていた。

 黒白鉢割れの猫は、ルリコを見ると怯えたように逃げ出す。

「買い終えたのか?」

「カイリこそ買わねぇのか?金足りなかった?もっとやろか?」

「いや!欲しい本が無かっただけじゃ。気にするでない」

 カイリは名残惜しげに、塀の隙間に逃げてゆく野良猫を見ながら言う。

(やっぱ黒豹触りたかったのかねぇ?)

「次はオヤツ買いに行くか」

「昨日の焼き菓子は美味であったぞ。また食べたい!」

「新しい店の開拓じゃなくて?いいけどね」

 二人は並んで、屋台街を目指して竹のトンネルをくぐった。

「あ、猫じゃ!」

「こら!カイリ!転ぶぞ!」

 赤トラ柄の猫を追いかけて走るカイリを見て「子供ガキだなあ」とルリコはしみじみ呟き、急いでカイリの後を追った。


プチリフォームで変な照明を付けられたので画面が真っ赤に見えます。

私は母の嫌がらせと認識しました。

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