いつもと変わらない日常
春、それは新しい始まりの季節。
俺、斎賀涼は清々しく高校2年の春を迎えようとしていた。
だがー
「なんだこれは」
「すぅ〜、すぅ〜」
朝起きるとなぜか俺のベットの中には妹の明が気持ちよさそうに眠っていた。
「おい、明」
「ん〜あっ、おはようお兄ちゃん」
俺に肩を揺すられて起きた明はそう言って小動物みたいに可愛いあくびをする。
「お前また勝手に俺のベットに潜り込んだのか」
「だってあったかいんだも〜ん」
呆れながらに言う俺に笑顔でそうかえす明。それをみて可愛いと思ってしまうのは明が一般的にみても可愛い部類に入るからだろう。
そんな明がほぼ毎晩のように俺のベットに潜り込んでくるので正直言って俺も耐え難いものがある。明も今日から高校生になるのだからそろそろやめてもらいたい。
俺がそんなことを考えているなんて全く思っていないだろう明を半ば無理矢理ベットからでさせて、俺たちは朝食を食べるために1階のリビングへ向かった。
リビングに行くと制服の上にエプロンを着て朝食をテーブルに並べている利紗姉がいた。
「涼、明おはよう」
「おはよう利紗姉」
「利紗お姉ちゃんおはよう」
「もう準備出来るから顔洗ってきなさい」
そう言って利紗姉は優しい笑顔を見せる。両親が出張で家にいないことが多い俺たちにとってはその笑顔を見ると利紗姉はもう1人の母親のように思えてくる。
俺と明がリビングに戻るとテーブルの上に朝食が並べ終わっていてエプロンをはずした利紗姉が椅子に座って待っていた。俺と明も椅子に座り3人でいただきますと言って食べ始めた。
「やっぱり利紗お姉ちゃんの作った料理は世界一美味しいよねぇ」
「そんなおおげさだよぉ」
料理を褒める明に利紗姉は笑顔でこたえる。
「いや、全然おおげさじゃないって、利紗姉の料理は本当に美味しいよ。利紗姉はきっといいお嫁さんになるね」
「お嫁さん……私が……涼の」
「どうかしたの利紗姉?ぼーっとして」
「う〜うんなんでもないの」
そう言って目をそらす利紗姉はほんの少し顔を赤らめているように見えた。
「利紗姉、なんだか少し顔が赤いけど熱でもあるの?もしそうなら無理しないほうがいいって」
「だ、大丈夫だから、心配してくれてありがとね涼」
そう言って頬に手を当てる利紗姉。まぁ本人がそういうのだから本当に大丈夫なんだろう。でも、もし体調が悪いならあまり無理はして欲しくない。
「あっ、いけない。私用事があるから先に行くね。家の鍵よろしくね」
「ああ、わかった。いってらっしゃい利紗姉」
「いってらっしゃいお姉ちゃん」
「いってきます」
よほど急ぎの用らしく利紗姉は足早に家を出て行った。しばらくして俺と明も家を出ることにした。
「明、俺たちもそろそろ行くぞ」
「ごめん、お兄ちゃんもうちょっとだけ待ってて」
「おいおい、あんまりのんびりしてると遅刻するぞ」
「すぐに終わるから」
俺は家の前で明を待つことにした。
「おまたせ、お兄ちゃん」
「じゃあ行くか」
「うん!」
学校に向かい歩きはじめた俺と明。しばらくしてふと周りの人の視線が気になった。真新しい制服に身を包んだ明はやはり可愛いのだろう。すれ違う人の大半が視線を向けているのが俺でもわかった。当の本人がそれに気づいているかは知らないが、一緒に歩いている俺としてはさっきから周りからの視線が痛い。
「はぁ」
「どうかしたのお兄ちゃん?」
「いや、何でもないよ」
「あっ、もしかして可愛い妹の制服姿に見惚れちゃったのかなぁ?」
クルリと1回まわって可愛い笑顔を見せる明。
「なっ!そんなわけねーだろ!ていうか自分で可愛い妹とかいうか普通?」
「私可愛くない?」
上目づかいで聞いてくる明。その聞き方はずるすぎる。
「いや、可愛いと思うけど」
「やったー!ありがとうお兄ちゃん、だーいすき!」
「っておい、抱きつくなって」
「ええ、いいじゃん別に」
決して大きくはないが明だって高校生だ、抱きつかれるとそのいろいろとあたってきて特に丸みを帯びたものが主張してくる。
「いいから離せって」
「もぉ、仕方ないなぁ。あっ奈々ちゃんだ。それじゃ私先に行くね。じゃあまた後でねお兄ちゃん。」
友達を見つけてそう言い残し明は友達のもとへ走っていった。
「はぁ」
俺はまたため息をついてよりいっそう強くなった視線を感じながら重い足取りで学校へ歩いていった。