殺人鬼は語りたい
やぁ、はじめまして。
自己紹介をしようか、僕は殺人鬼さ。
こう言うと変な風に思われたり笑われたりするんだけど、まぁいい。
僕はまだ捕まっていないから殺人鬼とは言えないかもしれないな。
捕まって今までの所業がばれて初めてそう呼ばれるのかもしれないし、捕まるまでは自称殺人鬼なのかもしれない。
……どうでもいいか。
さて、僕のことを紹介するとなると、何から話そうかな。
そうそう、僕の半生を話そうか。
ん?、聞きたくないかい。
まぁそう言わずに、聞いてほしいんだ。
僕は高校生まではちょっと変わったやつですませてきたが、大学生になって自由度が増えたので好きに生きてみようと思ったんだ。
そして、高校卒業後から大学の入学式の間に記念すべき最初の殺人を犯した。
大学は地方の私大だったので、地元から離れるわけで、ちょうどいい機会だし、大人になる通過儀礼的な感覚でね。
場所は山の中、相手はたまたま一人で歩いていた人で、年寄りだったから、ちょっと面白みはなかったが、初めてだったのに意外とすんなりと成功したのには拍子抜けしてしまったよ。
証拠になりそうなものは極力減らし、死体は適当に崖の上から落としただけだし、他殺であるのは一目瞭然ではあったが、特にニュースになることもなかった。
溜まりに溜まった殺人衝動を解消した気分は最高だったよ。
大学生になって、しばらくは我慢したんだ。
車が欲しくてバイトを始めたからだ。
もちろん、次のターゲットは探しながらだけど。
最初とは違うやり方で、じっくりと楽しむのもいいし、さくっとやるのもいい、通り魔的に衝動に身を任せるのもいいかもしれない。
そんなことを色々と考えるだけで楽しかった。
そして、大学生活最初の夏休み。
ターゲットはアパートの近所に住んでる一人暮らしのOL?さん。
彼女は平日は朝早く明け方に出かけるので周りは静かで誰もいない。
声をあげられなければ、成功率は高いと思い、やってみた。
あっけなく成功。
びっくりしたよ。
こんなに上手くいくなんて。
簡単にできるなんて思っていなかったからさ。
とりあえず気絶させて彼女の部屋に入って、レジャーシートの上でいろいろと試しながら殺したんだ。
どこを切ればどのように血が出るとか、どのくらいで死んでしまうのか。
そういうのを知りたかったからさ。
探究心は実に重要。
そして、ここで気づいたんだよね。
他殺体がでたらさすがに警察も動くってことに。
間抜けなことに死体はそのまま部屋に残したからね。
近所の人間をターゲットにしていたせいもあって、警官に話もなんどかしたっけ。
テレビとかも来てたっけなー。
まぁ、捕まらなかったけど。
でも反省して、少し遠征をおこなうことにした。
そして死体の処理もきちんと考えることにした。
で、バイトに勤しんでいたおかげで中古車を入手するのは何とかなった。
いやー。
おかげで単位がやばかったよ。
車を手に入れてからは色々とやることが増えてね。
捨てる場所にも困らなくなったしね。
大学時代はよく旅行をしたよ。
バイトをしてお金溜めて、長期の休みになったら旅行して。
その先々でさくっと殺して、帰り道で廃棄して。
衝動的にやってたからずさんな計画ばかりだったけど。
捕まらなかったのは運がよかったのかな。
車のナンバーから足がつかないように偽装したりするのを忘れていた最初のころは今から考えるとかなり危なかったな。
このころは無意識にやってたけど。
殺人と死体遺棄は県を跨いで行うのが捕まるリスクを下げてくれていたみたいでね。
卒業して就職してからは本当に困ったものでね。
何せ自由な時間が減ってしまったから。
なかなかにできなくて困ったよ。
衝動的にやるにはいろいろと問題もあるからできない。
大学時代みたいにやっちゃったから捨てに行くために旅行、とかも気軽にできない。
だから、しっかりと計画を立てることにしたんだ。
暇をみてはターゲットを物色して。
生活パターンや行動範囲を調べて。
やるのに最適な時期とか、タイミングを計り、死体の処理もしっかりと考えないとダメだったな。
同じ場所に捨てるのは危険だからね。
そこは、自殺に見せかけるとかもあったけど、アレは結構面倒なんだよね。
一度やったけど警察は殺人と見抜いていたみたいだし。
で、しっかりと計画を立てて、やり遂げた。
死体の処理だけは毎回困ったよ。
楽だったのはそのまま放置したり、燃やすことだけど、その場合は警察とかの動きが激しくなるから、その後が厳しくなるのが難点。
分割して捨てる場合は近所だとダメだけど、旅行と合わせて計画すればかなりいい感じ。
色々準備して溶かしたこともあったけど、アレは臭いがやばい。
街中でやったら臭いだけでバレてしまうのは確実だね。
そんなこんなで年に一回程度で今も殺人を続けているんだけど。
最近はこう考えるようになったんだ。
自分がしてきたことを誰かに知ってもらいたいって。
顕示欲っていうのかな?承認欲求?
まぁ、そういうものがあってね。
それでこうして君に話しているわけなんだが。
どうだったかな、僕の半生は。
面白かったかい?
大したことのないことだし、つまらなかったかもしれないが。
聞いてくれてありがとう。
……さて、君はどんな風に殺そうかな?