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雪花 ~四季の想い・第一幕~  作者: 雪原歌乃
第五話 泣きたいほどに
14/57

Act.1

 紫織は目が覚めるなり、身体が熱くなっているような感じがした。

 気のせいだろうかとも思ったのだが、頭もぼんやりとしていて食欲が湧かない。


「あんた、熱でもあるんじゃない?」


 箸を全く動かさない紫織を心配そうに見つめながら、母親は紫織の額に手を当ててきた。


 ひんやりとした感覚が心地良い。

 そんなことを思っていたら、母親は「やっぱり」と溜め息交じりに言った。


「紫織、今日は休みなさい。今朝の天気予報でも午後から雪が降るって言ってたし、無理に学校行ったら悪化させてしまうわよ?」


 本当は無理をしてでも行こうかとも思っていたが、気持ちとは裏腹に、身体は休息を訴えている。

 紫織は素直に「うん」と頷くと、箸を置いて立ち上がった。


 一瞬、めまいを感じた。

 倒れそうになるのをどうにか堪え、フラフラとおぼつかない足取りで部屋へ戻った。



 自室へ戻って来てから、紫織は再び制服からパジャマへ着替えた。

 とにかく、一秒でも早く眠ってしまいたい。

 そう思いながら、ベッドへと潜り込む。


 すると、ほどなくして母親がやって来た。

 手には氷水で満たした洗面器を持っており、中には真っ白なタオルが浸されている。


「あとでアイス枕も持ってくるから」


 母親は言いながらタオルを絞り、ある程度水分が抜けた状態のそれを、紫織の額へ載せてくれた。


「学校へは今から連絡しておくから。あんたはちゃんと寝てるのよ?」


 そう言い残して、母親は静かに部屋を後にした。


 ◆◇◆◇◆◇


 学校帰り、朋也は自分の家の前で紫織の母親と遭遇した。


「あら、朋也君」


 紫織母は朋也と逢うなり、満面の笑みを向けてきた。


「こんにちは」


 朋也もそれに応えるように、微笑しながら挨拶する。


「こんにちは。お隣に住んでいるのに、朋也君と逢うこともなかなかなかったわね。元気だった?」


「ええ、お陰様で」


「そう、それは良かった」


 ふたりで他愛のない言葉のやり取りを繰り返していたが、紫織母は「そうそう」と言ってきた。


「今日、紫織が熱を出しちゃって。午前中に病院に連れて行ったんだけど、ただの風邪だったみたいね」


「え? 紫織、風邪引いたんですか? なんで?」


「あの子の話だと、どうやら昨日、宏樹君と海に行ったらしいのね。だからきっと、潮風に当たってしまったのが原因ね」


(――兄貴と、海……?)


 紫織母の言葉に朋也の心の中は、暗雲が立ち込めたようにモヤモヤした。

 紫織は別に自分のものではないのだから、こんな気持ちになること自体が間違いだと分かっている。

 それなのに、何故か、紫織に裏切られてしまったという不快感を覚えてしまう。

 同時に、宏樹への不信感も募ってゆく。


(兄貴、紫織のこと〈妹〉としか思ってなかったんじゃないのかよ……?)


 朋也は唇を強く噛み締めながら、肩を並べて砂浜を歩くふたりを想像する。


(胸糞わりい!)


 本当は口に出して叫びたかったが、紫織母の手前もあり、それは辛うじて抑えた。


 その代わり、朋也は紫織母に「あの」と声をかけた。


「紫織の見舞い、俺が行ったら迷惑ですか?」


「迷惑? とんでもない!」


 紫織母は目を大きく開きながら、何度も手の平を振った。


「朋也君なら大歓迎よ! 紫織もきっと、朋也君がお見舞いに来てくれたら喜ぶわよ」


 屈託なく言う紫織母に、朋也の口元も自然と綻んだ。


「それじゃあ、早速いらっしゃいな。あ、それとも一度、着替えた方がいいかしら?」


 紫織母の問いに、朋也は「いえ」と首を振った。


「着替えていたら遅くなりますし、このまま行きますよ」

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