068 パーティ結成
「づ、ヅラっちって、あのヅラっちで間違いないの？」
「はい。僕も正直驚いたんですけど……マナさんがいなくなってから、あっという間に魔王が倒されちゃって……」
『そういえばハル様。魔王討伐クエストに行かれたって噂をお聞きしましたが？』
「うん。頼まれて行くに行ったんだけど……ヅラっちのことを聞いて、途中で引き返しちゃったんです。元々はマナさんのパートナーだった彼と戦うなんてできなくて……」
『ハル様なら勝てちゃいそうなのに』
「そんなことないよ。さすがに勝てるとは思ってなかったし、最初から負けるの覚悟で行ったようなものだったから……」
あの頃はマナさんに会えなくて、ちょっと自暴自棄になっちゃったんだよね。ここで死んじゃってもいいかなーなんて。
ゲーム内で死んじゃったらリアルでどうなるのか、なんてことも考えてなかった。
でも、引き返して良かった。最初の階層でヅラっちの話を聞けて良かった。
「でも、なんでヅラっちが魔王の眷属……？」
「シグさんから聞いた話だと、なんでもそのアリスって人はヅラっちのことが好きみたいで、二人だけの世界を作る気らしいとか何とか？」
「へ、へえ。変わった子もいるのね……それにしても、北瀬愛理子……なんか聞いたことあるような、ないような……」
「現実世界での知り合いですか？」
「いや、知り合いではないと思うんだけど、名前だけなんかで聞いた覚えがなくもないというか」
とりあえず、普通に生活していく分にはこのガイアで過ごしていけば問題はない。
でも、このゲームの最終目標でもある魔王討伐は現状難しい。魔王の作った法律。【ダーリンとの仲を邪魔するものは許さない】っていう、よくわからないもの。あと、他にもあったっけ。
「その魔王は、現実世界での知り合いを片っ端から排除してるらしいんですよね」
『そういえば、女を捜してるって話も聞いたわよ』
「女の子を？ それ、どっちの意味での？」
「そこまでは僕にも分からないです。でも、マナさんがログアウトできたってことは、何かしらの条件を満たせば元の世界に帰れるって可能性もあるってことなんですよね」
「うーん。どうやって戻ったのかは私にもわからないんだけどね」
「あ、思い出した」
「え？」
「アリスって人が魔王になってから追加されたクエストがあって、なんでも最強の剣を作れってもので」
「最強の剣？」
その最強の剣っていうのが何から作られるものなのかも分からないし、クエスト内容も作って持って来いっていう曖昧なものだし。
「うーん……これは主婦やってる場合じゃないのかも？」
「実は僕、サラマンダーとも契約をしようかなって」
「それって、四大精霊の一つの？」
「はい。ウンディーネをどうにか説得できそうですし。彼には待っててもらってる状態だったので」
『さすがハル様！ 四大精霊を従えることが出来るのは世界広しといえどハル様だけですよ！』
「そ、そんな……でも、マナさんも戻ってきてくれましたし、ログアウトできる可能性を探すには力が必要かなって」
旅をしながら、色んな噂を聞いたけど、もしかしたら魔王を倒せばログアウトも出来るんじゃないかって。
だって、魔王を倒したときに手に入る魔宝石。あれに願えば、もしかするかもしれないんだ。
今まではそんなことできっこないって思ってたけど、今ならマナさんがいる。
「マナさん。僕らも魔王討伐のためにパーティを組みましょう！」
「で、でも今の私じゃレベルが……」
「レベルなんてすぐ上げられますよ！ 時間はまだたくさんあります。僕もお手伝いしますし、頑張ってみましょう？」
「俺も、鍛えるの、手伝う」
『ミ、ミヤ様が言うなら私もっ！』
「邪魔」
『ああん！ その冷たい視線も素敵いいい！』
そうだ。また拠点をガイアに戻して、お店も再開させようかな。
ミラさんにも挨拶に行かなきゃだし。
それから、もう一つ。
「マナさん。改めて、言わせてください」
「うん？」
「マナさんは、僕が守りますから」
今度こそ、絶対に。
「う、うん……ありがとう、ハルくん」
「はい！」
マナさん、顔がトマトみたいに真っ赤だけど大丈夫かな？
USER NAME/片岡春臣
LOGIN NAME/ハル
SEX/女？
PARTNER/ミヤ
LOGIN TIME/35109：01：01
