066 会いたかったです
「……う、ん」
「ハル君!」
「まな、さん……?」
目を覚ますと、心配そうな顔をしたマナさんが顔を覗かせた。
これ、夢じゃないんだよね。本当にマナさんが帰ってきたんだよね。
「マナさん……よかった……無事で……」
「うん。心配かけてごめんね。それより、ハル君こそ大丈夫? 丸一日寝てたんだよ」
「え、そんなにですか!?」
確かに無理をしたとは思うけど、そんなに魔力を消費しちゃったのか。
あとでシルフにも謝っておかなきゃ。きっと無理させちゃったと思うし。
「ハル。大丈夫?」
「ミヤ。大丈夫だよ、ありがとう」
「えっと、ハル君。暫く会わないうちに強くなったね。かなり有名みたいだけど」
「え? まさか、そんなことないですよ。僕なんか全然ですから」
そんなことより、マナさんの後ろで僕を見てる女の人は誰なんだろう。
なんか、奇抜な格好してるけど。
『ああ……本当に本物のハル……ガチの魔法少女……噂で聞くより可愛い……それにミヤ様、素敵……格好いい……』
「マナさん、その人は?」
「えーっと……成り行きで私のパートナーになった、うぃっち」
「そうなんですか! はじめまして、僕はハルっていいます。マナさんにはとてもお世話になってて……」
『はうあっっ!! ビューティフォー!!』
「あれは放っておいていいから」
変わった人みたいだけど、マナさんが選んだ人だもん。きっと良い人なんだろうな。
「ハル君、四大精霊とも契約したんでしょう? 凄いよね、それってかなりのレアクエストじゃなかった?」
「そうなんですか? ウンディーネなんかはすぐに仲良くなってくれましたよ」
「可愛いは正義かな……」
本当はサラマンダーとも契約できる状態なんだけど、なんかウンディーネと仲が悪いみたいで出来なかったんだよね。
やっぱり水と火だと相性が悪かったりするのかな。喧嘩したらしいけど、仲直りは出来ないのかな。
「ハル。色んなものから愛される、体質」
「そうなの?」
「だから、色んな属性の魔法とも相性がいい。珍しい、レアスキル持ち」
「それって、私とは真逆の体質ってことかな……?」
なんかよく分からないけど、変な体質を持ってるってことなのかな。
そのおかげで精霊や魔法とたくさん仲良くなれたのは嬉しいな。
「そうだ。それより、マナさん。今までどこに居たんですか?」
「あ、そうだった! そのことを話そうと思ってたの」
マナさんは言葉を選びながら、今までのことを話してくれた。
この四年間。マナさんにとっての四日間。
ログアウトしてたときのこと。
僕の体のこと。
《TSO》をプレイしていた人たちが目覚めないこと。
「……そんなことが、あったんですね」
「うん……原因はまだ分からないんだけど」
「でも、そっか。ありがとうございます、僕のこと見つけてくれて」
「うん……私こそ、待っててくれてありがとう」
正直、すぐに理解はできない。難しい話は僕には分からない。
でも、現実の世界ではとんでもないことが起こってる。
「僕、四年もこのゲームの中にいたのに、何も気付かなかった……」
「ゲーム内では特に変化はなかったってことかな……」
「……僕が気付かなかっただけかもしれないんですけど」
「うーん……」
不安なことばかりなのに、なんでかな。
全然、怖くないや。
マナさんが、戻ってきてくれたからなのかな。
「……へへっ」
「ど、どうしたの? ハル君」
「ごめんなさい。なんか、マナさんがいてくれるのが嬉しくて……」
「ハル君……」
「僕、マナさんに話したいこと、たくさんあるんです」
「……うん。聞かせて」
もっと話さなきゃいけないこと、たくさんあるのに。
考えなきゃいけないことも、たくさんあるのに。
でも、今だけは話がしたい。
「僕、マナさんを捜しながら色んな街へ行ったんですよ」
「そうだったんだね。それで、有名になっちゃったんだね」
「だから、有名なんかじゃないですよ」
四年間の寂しさが、こんな簡単に埋まるなんて。
やっぱり、マナさんは凄いな。
USER NAME/片岡春臣
LOGIN NAME/ハル
SEX/女?
PARTNER/ミヤ
LOGIN TIME/35108:03:19




