062 新たな仲間モンスター
【仲間モンスター】。
この《TSO》の世界では、モンスターの中から自分の好きなパートナーを選ぶことができる。
前回のログインでは、商業都市に住む鍛冶師のゼガルさんにヅラを被ったスライム型モンスターを無理矢理押し付けられ、パートナーにされた。
名前はヅラっち。
何度も喧嘩して言い合いをしたけど、どうにも憎めないモンスターだった。
それに、あの夢――。
現実の世界に突如出現した、《TSO》のマップ機能。
あれが無ければ私はハルくんを見つけ出すことができなかった。
そういえばその後はドタバタの連続で、あのときの現象を調べる暇すらなかったことに気付く。
普通に考えれば、ゲームの世界でもない現実の世界で、ゲームとそっくりなマップが表示されるはずがない。
あれではまるで、現実の世界までゲームのような――。
『……ちょっと、そこのお兄さん。考えごとをするのは良いんだけど、さすがに素っ裸で大の字で寝転がったままというのは、いささかわたしも目のやりどころに困るというか、ガン見しちゃうというか』
「…………へ?」
うぃっちの声で我に返る。
そして今現在の私は、彼女の言う通り素っ裸な状態だった。
どおりでなんかスースーすると思った。
私は慌てずに立ち上がり、ウインドウを操作する。
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NAME/マナ
WEAPON/--
ACCESSORIES/--
SKILL/--
MAGIC/--
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唯一の武器であったシルバーナイフも破壊され、メリルに作ってもらった服も消滅。
アイテム欄を探しても、代わりになるような装備は何一つ入っていない。
……困った。
これから商業都市に向かおうというのに、素っ裸のままでは街に入る前に警備兵に捕まってしまうだろう。
どうしよう。その辺の葉っぱで隠しておくしか方法がない……?
『はいはい、こういう時のうぃっちちゃんです。わたしが魔法でちょちょいと装備を用意してあげるわ。まあ、お詫びの気持ちってやつね。でもさっきの服を再召喚するのは難しいから、初期装備の冒険服で我慢してね。だってわたし、初心者用のモンスターだし? 武器は……怖いからやめておくね。まずは正式に仲間モンスターにしてもらってからじゃないと、貴方に武器を渡した瞬間にわたしを亡き者にされても困るし』
聞いてもいないことをペラペラと話すうぃっち。
そのまま彼女は魔法を詠唱し、私の周囲に光り輝く魔法陣を出現させた。
幾何学模様が描かれた魔法の帯が、私の全身を包み込む。
そしてしばらくすると一際強く光り輝いた帯は消滅し、代わりに初期装備である冒険服がいつの間にか私の全身を覆っていた。
『どう? 凄いでしょう? わたしを仲間モンスターにすれば、貴方の旅は確実に快適、かつワンダフル&スペシャルなものになるわ。このうぃっちちゃんが保証する。で、契約金なんだけど、本来であれば通常契約料が一日あたり1000Gのところ、今ならなんと! 二年間の継続契約で一日あたり500Gになるの! で、さらに今ならキャッシュバックキャンペーンと乗り換え割、さらに貴方は再ログインまで四年が経過しているから、それまでに貯まったカムバックポイントを利用すれば、ななな、なんと!! 一日あたり50Gになっちゃうの! これマジよ! 超お得どころか、破格中の破格で契約できるのよ! これもう価格破壊よ! このうぃっちちゃんを貴方はたった、たった一日50Gで独り占めできるのよ! 見て、このえっちな身体! 凄いでしょう? 殿方の目の保養に最適でしょう? でもおさわりは駄目。ハラスメント警告が出ちゃうと色々と面倒だから、見るだけにしてね。ささ、これが契約書ね。キャッシュバックは契約後に発生するけど、申請が受理されるまでは二ヶ月くらいかかるから注意してね』
「…………」
何が何だか分からないまま、私の右手に自身の手を重ねたうぃっち。
そして私の手を勝手に動かし、魔法で召喚した契約書のようなものにサインをさせる。
『よし、これで契約完了! 改めまして……コホン。ウィッチ族のうぃっちといいます。一応、この森の保有者で、かつウィッチ族の族長も兼任しているわ。四年前に貴方に倒されたうぃっちは私の妹で、私達ウィッチ族は貴方に恨みを晴らすために日々、魔力を高めるための訓練をしてきたの。で、完成したのが究極の闇魔法、《原理崩壊》。でもそれも無駄だったわね。貴方はそれを、いとも簡単に跳ね返したわ。さすが、無魔法といったところかしら。現状、この《TSO》の世界で無魔法を保持している特異体質者は貴方以外に観測されていない。これがどういう意味か分かる? この魔法が溢れた世界で、貴方は無敵なのよ。もちろん物理的な攻撃はダメージを負うけど、ほとんどの魔法に耐性があるってだけで、無敵と言っても過言じゃないわ。そこにわたし。この可憐でキュートな巨乳美女であるうぃっちちゃんが加わることで、万が一にも起こり得るかもしれない魔法による突然のアクシデントにも即対応! これで貴方の無敵度はさらにアップ! さあ、行きましょう! これから楽しくなりそうだわ!』
「…………」
十二分に話せて満足したのか。
そのまま私の手を取り、意気揚々と森の中を進んで行くうぃっち。
…………本当に、困った。
このうぃっちとかいう少女は、あのヅラっちと同等か、それ以上に厄介な存在かもしれない――。
私の深い深い溜息が、森の中に木霊していった。
USER NAME/佐塚真奈美
LOGIN NAME/マナ
SEX/男?
PARTNER/うぃっち
LOGIN TIME/35100:59:59




