059 嫉妬深い水の精霊
目的の街に着き、ミヤは小動物の形態に姿を変える。
さすがにもう日暮れだし、ガイアに向かうのは明日の朝になっちゃうな。
「お疲れ様、ミヤ」
「みゅうっ」
僕はミヤを抱き上げ、宿屋へと向かった。
早朝には飛行竜でガイアへ行く。ただ結構な距離があるからいくつか街を経由しなきゃいけないんだけど。
僕、飛行竜って利用したことないからどれくらいでガイアに着けるのかはちょっと分からないんだよね。ただガイアまでは一回で行けないってことくらいしか。リアルの世界で言うところの、乗り換えがいるってことだと思うけど。
飛行機と違って飛行竜は生き物だから、何時間も飛べないんだろうな。
「シルフを喚べれば、もうちょっと早かったかな」
「みゅっみゅう」
「うん。一応契約はしてるから、召喚自体はできるんだけど……」
「ふみゅう」
「そうなんだよね……他の召喚獣を喚ぶとウンディーネが拗ねるんだよね……」
この4年の旅で僕はウンディーネ、シルフ、ノームの四つの召喚獣と契約をした。えっと、四代精霊ってやつの三体を僕は召喚できるんだけど、水の精霊ウンディーネは結構嫉妬深い性格みたいで、他の精霊を喚ぶと拗ねて暫く応えてくれなくなっちゃうんだよね。
戦力的にウンディーネが一番強いから、そうなるとちょっと困っちゃう訳で。
「まぁでも、ガイアに戻るだけだし、そんな戦闘になるような状況は早々ないよね?」
「みゅう!」
「魔力の消費も抑えたいから、ある程度近くまで移動して、それからシルフに頼もうかな」
「みゅっ」
「え? あー、それで大丈夫かな」
僕は召喚魔法を発動し、ウンディーネを喚んだ。
ウンディーネは嬉しそうに僕の周りで泳ぐようにくるくるとしてる。水で出来た体は冷たいけど、触れた感触は気持ちいい。触ったことないけど、多分ウォーターベッドってこんな感じかな。
「あのね、ウンディーネ。明日、移動のためにシルフを喚びたいんだ」
そう言うと、ウンディーネの顔から笑みが消えた。
やっぱりそうなるか。
ミヤが先に許可取っておけば怒られないんじゃないかって言うから喚んでみたけど。
「あ、あのね。ちょっと急ぎ……でもないんだけど、遠くまで移動しなきゃいけなくて、飛行竜って結構お高いって聞くし、シルフに頼めば交通費を浮かせられるし……」
ウンディーネは僕の顔をチラチラ見ながら、ちょっと考えてるような表情してる。
これは、いけるかな。
「お願い、ウンディーネ。もし移動先で何かあった時、君の力が必要なんだ。だから、ね?」
ウンディーネの手を取って、もう一度お願いする。
僕の気持ちに応えてくれたのか、ウンディーネは小さく頷いてくれた。
良かった。心配はないと思うけど、一応用心しておいた方がいいもんね。
「ありがとう、ウンディーネ!」
お礼を言うと、ウンディーネは僕の額に口付けて姿を消した。
「みゅう」
「うん。ミヤの言うとおりだったね。ありがと」
これで安心だ。
明日中にはガイアに着けるはず。
マナさんに、会えるといいな。
USER NAME/片岡春臣
LOGIN NAME/ハル
SEX/女?
PARTNER/ミヤ
LOGIN TIME/35088:24:45




