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Trans Sexual Online~のんびりほのぼのTS生活~  作者: an℟anju
第三章 それぞれの旅立ちと冒険
55/79

053 守護獣

「……う、ん」


「ハル、起きた?」


「……うん?」


 ボクが目を覚ますと、さっきまでいた怖い人たちがいなくなっていた。

 その代わり、見知らぬ男の人が心配そうに顔を覗き込んでる。


 誰だろう。

 すごくキレイな黒髪に、整った顔立ち。

 それにまるで月みたいな金色の目。

 ……なんか、見覚えがあるような気がしなくもない。


「えっと、貴方が助けてくれたんですか?」


「そう」


「えっと、えーっと……あ、そうだ! ミヤ、ミヤは!?」


「ここ」


「……はい?」


 ……ここって、どこ?


 ボクは辺りをキョロキョロと見渡してみるけど、ミヤの姿は何処にも見えない。

 あの怖い人たちに襲われて怪我でもしてたらどうしよう。


「ミヤ……」


「なに?」


「あ、えっと。ボク、ミヤって名前の猫……いや、猫じゃないのか。その、パートナーのモンスターがいて」


「だから、なに?」


「え?」


「ミヤ」


 そう言って彼は自分のことを指さした。

 え……? なに? どういうこと?

 つまり、この人がミヤってことなの?

 それとも、この人の名前も『ミヤ』ってこと?


「……この姿だと、わからない?」


 彼は小さく溜め息を吐いて、目を閉じた。

 すると全身が淡い光に包まれ、ボクのよく知る姿へと変わっていった。


「ふみゅう」


「ミ、ヤ……」


 本当にミヤだった……!

 ミヤ……人だったの?

 いや、そういうわけでもない……のか?


 じゃあ……何?

 ……ダメだ。

 頭の中がグチャグチャで考えがまとまらない。


「ハル」


 ボクが頭を抱えてると、ミヤはまた人の姿になっていた。

 きっとマナさんみたいにゲーム慣れをしてる人は、これくらいで驚いたりしないんだろうな。

 そうだよ。これゲームじゃん。

 こういうのも普通なんだよ、うん。


「えっと……ミヤ、さっきまでいた人は?」


「アイツら、追っ払った」


「そう……ありがとう。そういえば、あの魔法書は?」


 ボクは立ち上がって祭壇へと歩み寄った。


「ない……」


「あれ、俺の」


「……俺の?」


「魔法書、少し違う。あれ、俺の契約書」


 ミヤが手を出すと、祭壇に置かれていた魔法書がポンッと現れた。

 ていうか、『契約書』ってどういうことなんだろう……。

 そういえばミヤは路地裏で倒れていたんだよね。

 もしかして、それと何か関係があるのかな。


「俺、この洞窟の守護獣だった。でもこの洞窟、荒らされた。もう、機能しない」


「え……? それって、さっきの人たちに?」


「そう。それで、これは俺と契約するためのもの。今は、ハルのもの」


「僕の? なんで?」


「ハル、パートナー契約した。俺、守護獣。ハル、守る」


 ミヤに契約書を手渡され、自動的にアイテム欄へと収納された。

 まさか、ミヤがそんなすごいモンスターだったなんて予想外だ。


「あの、ミヤはなんであそこで……あの裏路地で倒れてたの?」


「この洞窟、荒らされて、力が弱まった。そこで、契約の印も、切られた」


「そうだったんだ……」


「どうにか街まで逃げたけど、力尽きて、ハルに拾われた」


 そっと、ミヤが僕の両手を包み込むように握った。

 ……怖かったのかな。

 そうだよね。ずっと守ってきたところを奪われたんだもん。

 悲しかったよね、きっと。


「でも、僕でいいの? もう一度この洞窟の印を元に戻すことは――」


「出来るけど、いい。今はハル、守る。ハル、マナ捜してる。手伝う」


「ミヤ……」


 姿は変わっても、ミヤはミヤだ。

 なんか、ちゃんとミヤの気持ちを聞けてうれしい。

 それに、ミヤがあんなに強いのも納得したし。


「それじゃあ、改めてマナさん捜しを始めようか。ここにはいなかったし、別の街で聞き込みしよう!」


「うん」


 僕らは手を繋いで洞窟を出た。

 ここから一番近い街は、南の方角にあるみたい。

 ガイアより小さなところだけど、海があって他の大陸に渡る港もある。


 問題なのは、陽が暮れるまでに到着できるかどうかだ。

 ボク、結構な時間気絶してたみたいで時刻はとうに昼を過ぎちゃってるし。

 夜になるとモンスターとか出てくるみたいだし、ちょっと心配だな。


「ハル、大丈夫?」


「あ、うん。平気、だけど……。夜になる前には街に着きたいなって。モンスターとか出てきてもボクは戦えないし」


「俺、いる。心配ない」


「……ありがと、ミヤ」


 確かにミヤがいれば安心なんだけど、それでもやっぱり無意味な戦闘は避けたい。

 ……また怖い人に襲われるのもゴメンだし。


「あ。一つ、言ってなかった」


「何?」


 ミヤが何かを思い出したらしく、足を止めた。

 どうしたのかな。

 ……忘れ物?


「契約者のこと、言ってない」


「契約……者?」


「そう。俺、普通のモンスター、違う。力使うとき、契約者の魔力、少し貰う。だから、ハルの力、少し貰う」


「そうなんだ。うん、分かったよ」


「多分、ハルなら問題ない。魔力、高い」


「そうなの?」


 そういうの良く分からないけど、スゴイことなのかな?

 魔法なんて水撒き以外に使わないし、戦闘目的でこのゲームをやったことがないからピンとこないけど。


「一応、覚えておいて」


「うん」


 まぁ戦闘は避けていくし、人捜しが目的だから何も心配いらないよね。


 ――人捜し、か。

 

 マナさん、どこにいるんだろうな――。


















USER NAME/片岡春臣かたおかはるおみ

LOGIN NAME/ハル

SEX/女?

PARTNER/ミヤ

LOGIN TIME/0115:43:01

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