050 前へ
街から出て一時間ぐらいが経っただろうか。
マナさんが行くと言っていた洞窟に行こうとしてるんだけど、それっぽい所に出くわさない。
おかしいな、マップを頼りに進んでるはずなんだけど。
「きゅう……?」
「だ、大丈夫だよ。こっちの道で合ってると思う、から」
……多分。
だってガイアがここで、洞窟はこっち。
ボクはマップを確認しながらそれっぽい道を進む。
……でも、おかしいな。
少し進んだ所に森があるみたいなんだけど、そんなのどこにもないぞ。
これ、携帯みたいなナビ機能はないのかな。
こういうとき、マナさんがいればなぁ……。
そうしたら、きっと教えてもらえたのに。
「あーダメダメダメ! もっと前向きにいかないと!」
こんなんじゃマナさんに笑われちゃうよ。
男のボクがウジウジしててどうするんだ。しっかりしなきゃ。
そうだよ。ゲームなんだから、カッコよくモンスターくらい倒せるようにならなきゃ。
男になるんだ、春臣!
◇
「あれぇ……?」
……なんか、知らないところに出た。
おかしいな。確かに街から出て、この街道を進めば良いはずなのに。
もしかしてマップの見方を間違えてるのかな。
現在地……現在地は、どこだ?
「みゅ?」
「わっ、ミヤ……!?」
腕に抱いていたミヤがピョンと飛び跳ねて画面をタッチした。
その瞬間、マップに赤い点がポンと表示された。
「もしかしてこれ、ボクのいる場所……?」
「ふみゅ!」
「ミヤ、凄い……!」
偶然なのか分からないけど、これで迷わず進めるはずだ。
「……って、あれ?」
ボクのいる場所、目的地の真逆じゃん! なんで?
確かに門からこう出て……ここを進んでいたはず。
「……あ。あれ? これ南門? ボクが出たのが北門だから……出たところが違ってたんだ!」
……そりゃ迷うはずだよね。
どれだけ馬鹿なんだ、ボクは!
「みゅ、みゅう!!」
「そ、そうだね。落ち込んでる場合じゃないよね」
「恥ずかしいけど、来た道を戻ろう。こっちの道で合ってるはずだよ」
「ふみゅー!」
ミヤが一緒で良かった。
ボク一人だったら道を間違えてたことにも気づけなかったかもしれない。
「ありがと、ミヤ」
「ふみゅう」
ミヤがボクの頬に擦り寄ってくる。
よしよしって頭を撫でてやり、ボクは道を戻った。
◇
「ここから、こっちかな……」
「きゅっきゅ」
「え、こっち?」
「きゅう!」
ミヤ、地図も分かっちゃうのかな。凄いなぁ、強くて頭も良いのか。
……なんか、ちょっと情けなくなっちゃうな。
ミヤに出来て、ボクに出来ないとか。
……ううん、落ち込んでちゃいけない。
ミヤがいて助かってる。
ボクももっとしっかりしないといけないな。
ミヤやマナさんに頼ってばかりじゃなくて、ボク一人で何でも出来るように。
ゲームの中でまでこんな情けない姿を見せてたら、現実に戻ってもこのままだ。
「……あ、あれじゃないかな」
なんか、洞窟っぽいのが見えてきた。
人は……いないみたい。
マナさん、あの中にいるのかな……。
ボクはメール画面を開いて、マナさんに連絡をとってみた。
【今、洞窟の前にいます。返事ください。】
とりあえず、こんな感じでいいかな。
あとは中に入って、マナさんの捜索。
怖い人たちに会わなきゃ良いけど、大丈夫かな。……ボク戦えないし。
いくらミヤが強くても、大勢で来られたら分が悪い。
なるべく戦うようなことは避けていこう。
そうだ。確か前にシグさんに貰った魔法書があったはず。
……何だったかな。
初心者魔法セット的なもので、その中に探索魔法の【サーチ】みたいなのが入ってたと思うんだけど。
「……あった!」
えっと、説明書、説明書……ああ、あった。
『これは使用者の魔力に応じて探索範囲が広がります』、か。
とにかく使ってみよう。
ボクはその魔法書を手に持って、ゆっくりと気を集中させる。
最初に水の魔法を使った時と同じ。
魔力の込め方とかはよく分かってないけど、集中するのは得意だ。
魔法書が淡く光り、足元に魔法陣みたいなものが現れる。
そしてポンポン、とボクの周りに小さな光の玉がいくつも出てきた。
これがボクの代わりにこの洞窟内を調べてくれる……らしい。
「探索、開始……!」
光の玉が一斉に散らばる。
コイツらはカメラの役割も果たしてるみたいで、それをモニタリングしながら進むことが出来ちゃうみたい。
魔法ってやっぱり凄いな。こんなの漫画みたい。
……まぁゲームなんだけど。
「この周辺には誰もいないみたいだな……」
送られてくる映像を頼りに進んでいくけど、人の姿が全く見えない。
おかしいな……。
ここって盗賊のアジトになってるんじゃなかったっけ。
まぁ最悪の事態にならなければそれで良いんだけど。
「もっと奥の方に潜んでるのかな。それとも、今は出払ってるだけ?」
マナさんの姿も見えないし、もうここには居ないのかな。
だとすると、どこを捜せばいいのか分からない。
ここ以外に手がかりなんかないのに。
「と、とにかく誰もいない隙に洞窟の中を隈なく探そう」
「きゅう!」
ミヤをぎゅっと抱きかかえ、ボクは前へと進んだ。
USER NAME/片岡春臣
LOGIN NAME/ハル
SEX/女?
PARTNER/ミヤ
LOGIN TIME/0112:45:44




