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Trans Sexual Online~のんびりほのぼのTS生活~  作者: an℟anju
第三章 それぞれの旅立ちと冒険
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048 美人で残念で猟奇的でストーカーな彼女

「ルンルンルン~♪ ルンルルル~ン♪」


 さっきから俺のベトベトの身体にベタベタと纏わりつき、鼻歌を歌っている勇者アリスこと北瀬愛理子。

 こうやたらと全身を触られると、歩き辛いわ鬱陶しいわで困ったものなのだが。


「おい、北瀬」


「だーめ。この世界では『アリス』って呼んでくれないとやだ」


「……」


 精一杯可愛い顔でふくれっ面を見せてくる北瀬。

 たしかに可愛いといえば可愛いのだが、というか美人の部類には入るのだが――。


「人外かぁ……。ふふ、人外かぁ……」


 不敵な笑みを浮かべ、何やら良からぬことを考えている様子の北瀬。

 そう。

 こいつの思考回路は色々とヤバい。

 絶対に関わっちゃマズい系の人間だと断言できる。


「私は貴方のこと、なんて呼んだらいいかな」


「……別に何でもいいと思うが」


「だって私達、もう夫婦じゃない? 夫婦だったら当然、お互いに特別な呼び方とかあってもおかしくないでしょう?」


「…………はぁ」


 もうアカン。

 こいつの脳内では【パートナー】が勝手に【結婚】と変換されてしまっている。

 どうしたらいい……?

 というか、何故こいつが勝手に俺の【パートナー】になっちまったんだ……?


 ログアウトが出来なくなったことと何か関係があるのだろうか?

 それともやはり、すべて北瀬こいつの仕業なのだろうか?


「もう……。どうしてさっきからため息ばかりついているのよ、ヅラリン」


「ヅラリン!」


「ふふ、良いあだ名でしょう? 『ヅライム』と『ダーリン』を合わせて『ヅラリン』」


「却下」


「なんで! 今、一生懸命考えたのに!」


 こいつのあだ名のセンスなど、最初から期待はしていない。

 そんなことよりも、俺は早くヅラを手に入れないといけないのだ。

 ……。

 …………ん?

 あ、そうか。いいこと思いついた。


「なあ、北瀬」


「アリス」


「……なあ、アリス。お前、俺の【パートナー】になったわけじゃん」


「うん! どんなイカガワシイプレイでもOKだよ! ヅラリン!」


「するかっ!」


 思わず粘液をまき散らしてしまいました。

 いかん。

 あまりまき散らすと、また分裂しかねない……。


「ちぇっ、しないんだぁ」


「……こほん。お前も知っていると思うが、俺はモンスターだから金を所持できないし、店で買い物をすることもできない」


「うん、そうだね。だから『最強の剣』を作るんだったら一から自分で素材を集めて、自分で鍛冶をしないといけないんだよね」


「最強の剣は作らないけどな」


「ど、どうして! じゃあ、この空の鞘の中身はどうするの! 剣が無いと私、戦えないじゃん!」


 慌てた様子で腰に差した鞘を見せる北瀬。

 どういう経緯で中身の剣を無くしたのかは知らないが、別に興味がないから聞くことはしない。


「俺がお前のつるぎとなってやる。運命を共にした、お前のためのつるぎに」


「恋に溺れ死にそうっ!!」


「すまん。嘘を吐いた」


「嘘かああぁぁぁ!!」


 泣きながらその場に崩れた北瀬。

 いちいち騒がしい奴だな……。

 俺は冷たい目で彼女を見下ろしながら先を続ける。


「でも、お前が俺の【パートナー】になったのならば、金を手に入れることも店で買い物をすることもできるんじゃないのか?」


 俺がGゴールドを所持するのではなく、北瀬に持たせたらいい。

 買い物もこいつに任せれば、簡単にヅラが手に入るはずだ。


「うん。無理」


「……は?」


 泣き止み、のっそりと立ち上がった北瀬。

 でもどうして猟奇的な表情をこちらに向けて立つ必要性があるんですか。

 頭おかしいんですか。


「貴方が私の【パートナー】だったら可能だけど、今回は逆でしょう? ふふ、こんなケース、滅多にないんだから。最強の勇者が最弱のモンスターの【パートナー】になるなんて……ふふふ……あははは!」


 ついに頭を抱えてゲス顔で笑いだした北瀬。

 まるでジェットコースターにでも乗っているかのように表情が目まぐるしく急変する。

 うん。

 正直、関わっていられない。


「そうか。じゃあやっぱ、お前必要ないな」


「えええええ!? ちょっと待って! いきなり離婚とか、やだよぅ!」


 怖気づいている今がチャンス……!

 俺のこのヅライムらしからぬ俊足を生かして、こいつから逃げ出してやる!


「さらば! 変態勇者!」


「あっ! 逃げた!」


 俺は逃げる。

 こんな奴に構っていないで、さっさとヅラを手に入れるために!





 10分ほど猛ダッシュし、後ろを振り返ってみる。

 うん。いい感じに振り切ったみたい。


「あーあ、マジ疲れたぁ。あんな奴に付きまとわれたら気が休まらな――」


「みーつけた☆」


「ひいいぃぃ!!」


 いきなり木陰から顔を出してきた北瀬。

 その顔があまりにもアレで俺はつい悲鳴を上げてしまう。


「逃げても無駄だよぅ。もう私達は切っても切れないトクベツなカンケイになっちゃったんだからぁ」


「カタカナを使うな! 色味を帯びちゃってるから!」


「ほら、私ストーカー歴が長いから。逃げようとか思わないほうがいいよ。地の果てでも追っていくし」


「自分でストーカー言っちゃった! 救いようがない!」


 嗚呼……!

 どうしてこんな厄介な奴に目を付けられちまったんだ……!

 利用しようにも利用できないし、それ以上に気持ち悪いし……!


「もう日が暮れちゃうよ? 宿に泊まることは出来ないから、この辺りで野宿の準備をしないと」


「野宿は覚悟の上だが、お前と寝るのだけは勘弁だ!」


「ね、寝るっ!? なんてダイタンな発言っ!!」


「…………あぁ…………」




 今度は俺が頭を抱えて蹲る番であったのは言うまでもなく――。


 ――まあ、頭とか、ないんだけどね。



















USER NAME/かつらいさむ

LOGIN NAME/ヅライム

SEX/???

PARTNER/勇者アリス

LOGIN TIME/00014:12:01

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