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Trans Sexual Online~のんびりほのぼのTS生活~  作者: an℟anju
第一章 ログイン開始
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003 仲間割れ

 私を取り巻く何十匹ものヅライム達。

 よく見ると、それぞれ特徴的なハゲヅラを被っている。

 3本しか髪の毛が無いもの、バーコード模様のもの……。

 中にはエキセントリックなものまで――。


『てめぇ! さっきはよくもやってくれたな! 痛かったじゃねぇか!』

『そうだそうだ! いきなり刺すなんざぁ、一体今までどんな教育を受けて来たんだ!』

『あやまれ! このハゲヅラに精神誠意あやまれ! あ、ハゲヅラっていっちゃった!』

『おめぇ何間違えてんだよこのハゲ! これはヅラじゃねぇって何度も言ってんだろ!』

『なんだと!』

『やるか! この野郎!』


「・・・」


 いきなり仲間割れをしだしたハゲ達。

 否、ハゲヅラ達。


 というか意識を共有している……?

 なんて面倒臭いシステムなんだろう、このVRMMOの世界は……。


『お、ちょ! おいお前! 俺のヅラを取るんじゃねぇ! あ、またヅラって言っちゃった!』

『だからヅラじゃねぇって言って――おい馬鹿やめろ! ヅラを振り回すんじゃない!』

『いて! この野郎! ヅラをヌンチャクみたいに振り回しやがって!』

『かーえーしーてー! 俺のヅラかーえーしーてー!』

『ああ! ちょっとタンマ! 俺のどこいった! お前のよこせよ!』

『やめて! これだけは渡せない!』


「・・・」


 なんて、カオスなんだろう。

 私のことそっちのけでバトルロイヤルが始まってるし……。

 次々と消滅していくヅライム達。

 私は無言で彼らが落としていくドロップアイテムを拾い続ける。



【ハゲヅラの冠】【ハゲヅラのフルメット】【135G】【緑色の液体】【薄緑色の液体】

【210G】【ただならぬハゲヅラ】【濃緑色の液体】【95G】【尋常じゃないハゲヅラ】・・・・・・。



『あ! おいお前ら! あのあんちゃん、俺達の宝を勝手に……!』


 あ、ばれた。

 一旦回収を止めた私はナイフを構える。

 残りのヅラは3体。

 うん。たぶん大丈夫。


『俺達の命より大切な宝をコソドロの様に奪いやがって……! ゆるせねぇ!』


 一匹のハゲヅラが私目掛けて跳躍する。

 そして急降下。

 私は直前でヅラをかわす。


『避けただとぉ!?』


 押しつぶしたと確信していたのだろう。

 驚愕のハゲヅラでそう叫ぶヅライム。

 私は横に一回転しながらもシルバーナイフを振り抜く。


ズバッ!


 と小気味の良い効果音が鳴り響く。

 うん。快感。

 やはり戦闘はこうでなくては。

 絶叫のヅライムを尻目にもう一度、私は逆手に持ったシルバーナイフを振り上げる。


しゃきーん!


『ぴぎゃあああ!』


 ボンっと音を立てて消滅するヅライム。

 だんだんと感覚が掴めてきた気がする。

 今まで何度もこういった仮想空間バーチャルリアリティエリアでの戦闘を経験してきたのだ。

 基本操作はそう変わらないし、癖も少ない。

 うんうん、良質なVRMMOだな。

 この《Trans Sexual Online》は。

 ・・・。

 モンスター以外は……。


『くっそ……! どうする……!』

『おい! 怖気づいてんじゃねぇ! 行くしかねぇだろ相棒!』

『ちょ、よせよ! 照れるじゃねぇかよ! 相棒とか……俺、言われたの初めてで……』

『そ、そうか。お前も苦労して来たんだな……。いやさ、実は俺も初めてなんだよ。相棒なんて言葉を使ったのは……』

『お前……』


 残り2匹となったヅライムが何かを話しているが、私は無視しドロップアイテムを回収する。


『なあ、俺達……友達になれる、かな?』

『ちょ、よせよ! 当たり前だろう! 友達だろうが恋人だろうが――――あっ』

『……』

『……』


 急に押し黙るヅライム達。

 なにこの微妙な空気。

 徐々に頬が赤く染まっている?

 なんで?


『……この戦闘が終わったら……』

『ああ……。無事、この窮地を脱し、仲間のヅラを回収出来たその時は……』


 身を寄せ合うように抱きしめ合うヅラ達。

 否、ヅライム達。

 そして意を決したようにこちらを振り向き――。


『今! 俺達の心はひとつになっ「えい」ぷぎゃああああ!』

『相棒!』


 後ろから近づいた私の一撃で消滅するヅライム。


『貴様! 永遠の伴侶となる俺の相方「えい」ぶぎゃああああ!』


 そのままもう一匹のヅライムにも一撃をお見舞いする。

 そして消滅する最後のヅライム。


「はぁ……。なんか疲れたけど……感覚は掴めたから、まあいっか……」


 出現したドロップアイテムを回収しながら一人そう呟く。



【永遠のハゲヅラ】【225G】【紅く染まった液体】【452G】



 全てのドロップアイテムを回収し終えた私は、その場にしゃがみ込む。

 このVRMMOにはレベルの概念が存在しない。

 よって幾らモンスターを倒せど、そのままでは強くはなれない。


「……いや、でも実戦を積めばそんな事はないのかな……ぶつぶつぶつ……」


 とりあえずアイテムの回収をしながらこの世界に慣れて行こう。

 確か現実世界の365倍のスピードで時間が流れているはずだ。この世界は。

 という事は6時間くらい遊んでも、ログアウトした時には現実世界では1分しか経過していない筈。

 忙しい毎日を送っている現代人には凄く嬉しい設定なのだ。


「この調子でどんどんアイテムを集めて行こうかな……。他のプレイヤーとかにもその内に会えるんだろうし……」


 というか、【魔法マジック】を覚えたいな。

 どうやって覚えるんだろう……。

 後でもう一回、説明書を読もう……。


 そんな事を考えながらも大の字でその場に寝転がる。

 風が心地良い。

 雲ひとつない空。

 空を飛ぶことも、出来るのだろうか?

 ワクワクが止まらない。

 

 

 そしていつの間にかウトウトとし始めてしまった私――。


















USER NAME/佐塚真奈美さづかまなみ

LOGIN NAME/マナ

SEX/男?

LOGIN TIME/0000:12:56

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