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Trans Sexual Online~のんびりほのぼのTS生活~  作者: an℟anju
第三章 それぞれの旅立ちと冒険
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044 行方不明

「マナさん、どうしたんだろ……」


 マナさんと連絡が取れなくなって、どれくらいが過ぎただろう。

 お店の方は、あれから順調に営業出来てる。

 前みたいに強盗みたいな人も現れない。

 なんかしつこくベタベタしてくる人は何人かいたけど、ミヤが追っ払ってくれたし。


 でも、マナさんだけが来ない。メールを送ったけど返事もない。

 洞窟に行くって言っていたけど、そこで何かあったのかな。

 ボクと違ってマナさんはこういうゲーム慣れてるみたいだけど、今はトラブルで運営と連絡が取れない訳だし、不慮の事故とかそういうのがあったら――。


「でも、ボクみたいなのが行っても足手まといにしかならないだろうし……」


 もしかしたら、ボクは気づかない内に何かしてしまったのだろうか。

 まさか、回復薬用に渡したお菓子が不味かったのかな!?

 それか、嫌いなものでも入っていたとか?

 それでボクのこと嫌いになっちゃったのかな……。


「う、うう……」


 初めて出来たお友達なのに。

 このままお別れなんか嫌だ。

 でも連絡も取れないし、マナさんがどこにいるのか分からないし。

 どうしよう……。


「とにかく、街でマナさんを知ってる人を探さないと……」


 でもNPCならともかく、普通のプレイヤーの人はちょっと怖いなぁ。

 ボク、戦闘とか全く経験ないし。

 喧嘩とか吹っかけられたりしたらどうしよう。


「きゅう?」


「ミヤ……そうだね、ミヤがいれば大丈夫だよね」


 ボクなんかよりずっとずっと強いミヤ。

 ちょっと情けないけど、ミヤがいれば怖くないよね。


「よ、よし。まずは街に行ってみよう。えっと、クロアさんだったっけ」


 確か、前にお屋敷に行ってみようとしたときは迷子になっちゃったんだよね。

 そのおかげでミヤと会えたんだけど。

 マップの見方もそのときにマナさんから教えてもらったし、今回は大丈夫なはず。


「行こうか、ミヤ」


「きゅっ!」


 ボクは今朝焼いた焼き菓子を持って、クロアさんのお屋敷へ向かった。





 えっと、確かこの道をまっすぐ進んだところにあるはずなんだけどな。

 マップで見る限り、結構大きなお屋敷みたい。

 こんな大きな街の、大きなお家ってかなり凄い人なのかな。

 そう考えると、マナさんって何者なんだろう……。

 まだゲーム開始からそんなに経ってないのに、直ぐにそんな人と知り合って、さらには家を借りてるなんて……。

 ゲーム慣れしてる人はみんなこんなものなのかな。


「……あった、ここだ」


 着いたのは大きな剣術道場。

 ちょっとだけ迷っちゃって、通りすがりのNPCの人に道を聞いたらすぐにここだって教えてもらった。

 どうやらクロアさんはやっぱり凄い人だったみたい。


「えーっと、どこから入ればいいんだろう」


 大きな門の前でボクは右往左往していた。

 だってインターホンとかもないし、変に大きな声出して道場破りとかに思われても嫌だし。

 てゆうか恥ずかしいし。


 困ったな、こういうときの対処の仕方は教わってないよ。取扱説明書にも書いてないもん。

 でもここでウロウロしていても十分怪しいよね。

 だからって何もせず帰る訳にはいかない。

 マナさんのこと、何か情報を得なきゃ帰れないよ。


「お嬢さん、何か御用ですか?」


「え?」


 お嬢さんってボクのことでいいのかな。

 周りにそれっぽい人もいないみたいだから振り返っちゃったけど。


 ボクに声を掛けてきたのは紫色の髪をした男の人だった。

 もしかしてと思い、彼の頭上を見て名前を確認してみる。

 表記された名前は「クロア」。

 この人がクロアさんだ。


「あ、えっと、あの」


「まさか、君のような可愛いお嬢さんがうちの道場に入門希望とか?」


「ち、違くって、えーっと……人、人を捜してて!」


 ボクはゆっくりと事情を説明した。

 簡単な自己紹介と、マナさんを捜してること。


「そうか、君はマナの友達だったのか……だが、申し訳ない。僕の方でも行方を捜しているところなんだ」


「え……?」


「急に姿を見せなくなってね。彼に貸した屋敷の方にも帰ってきた形跡はないし……」


「そ、そんな……」


 嘘……?

 なんで、そんなこと……。

 まさか、ログアウトしたとか?

 でもそれは有り得ない。

 だって今、ボクたちはこのゲームから出られないんだ。

 ……じゃあ、どこに?


「君の方でも連絡が付いたら教えてほしい。勿論、僕からも何か分かれば連絡するから」


「は、はい。お願いします……あ、そうだ。これ、ボクのお店で出してるお菓子なんです。良かったら、食べてください」


「ありがとう。わざわざすまないね」


 頭の中が真っ白で、その後のことは覚えてない。

 マナさん、今どこに居るの?

 なんで連絡取れないんですか。


 ――怖い。

 怖いよ……。


「きゅう…… 」


 腕に抱いていたミヤが小さく鳴いた。

 心配してくれてるんだね。

 ……でも、ボクどうしたらいいか分からないよ。

 ただでさえ非常時なのに、知ってる人が行方不明だなんて。


「……捜しに、行かなきゃ」


 もしかしたらマナさんは一人で洞窟に行ってるのかもしれない。

 そこで何かトラブルに巻き込まれていたとしたら、助けてあげなくちゃ。


 ボク、言ったんだ。



 『マナさんはボクが守ってあげる』って――。


















USER NAME/片岡春臣かたおかはるおみ

LOGIN NAME/ハル

SEX/女?

PARTNER/ミヤ

LOGIN TIME/0109:24:12

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