037 会いたいです
「ハルちゃん!」
「ハル、大丈夫か?」
「ミラさん、ルーイさん!!」
この騒ぎを聞きつけて、ミラさんとルーイさんが駆けつけてくれた。
二人とも急いできてくれたのか、息を切らせてる。
心配してくれたんだ。
「大丈夫? 怪我はないか?」
「はい! ミヤが守ってくれましたから」
「ミヤって、この子のこと?」
ミラさんがボクの腕の中にいるミヤに目を向ける。
ボクのパートナーだって言ったら、優しい顔でミヤの頭を撫でてくれた。
「ありがとうね、ミヤちゃん」
「きゅ!」
「よし、じゃあさっさと直しちゃおうか」
「え、良いんですか!?」
「ガラスが割れてるだけみたいだし、これくらいすぐに直せるよ」
ルーイさんは割れたガラス窓の前に立ち、手を翳す。
ほのかに光る掌。
そして地面に落ちたガラスの破面が浮いて、瞬く間に元の形へと戻っていく。
スゴイ、さすがルーイさん。
ボクは思わず拍手してしまった。
「これで良し、っと」
「ありがとうございます!」
「これくらいいいよ。それじゃあ、僕は仕事があるから」
「はい!」
「またね、ハルちゃん」
忙しいところ、わざわざ来てくれたみたい。
優しいな、本当に。
ボク、物凄く恵まれてるなぁ。
「さて、と。散らかった店を片付けなきゃ!」
「きゅっきゅー!」
◇
「ふう!」
掃除も終えたし、アイテムも十分に揃えられた。
これで安心して明日からお店を始められるんだけど、マナさんはまだ帰って来れないのかな。
洞窟って遠いのかな……。
「きゅう?」
「ミヤ……大丈夫だよ、ミヤがいてくれるもんね」
何だろう。ちょっと寂しいな。
せっかく友達になれたのに一緒にいられないのは。
「マナさんが帰ってきたら、おっきなケーキ焼こうか」
「きゅっきゅー!」
「ふふ、無事に帰ってきてくれるといいね」
マナさんは盗賊退治のために洞窟に行っているんだ。
帰ってきたら、いっぱいいっぱいご馳走を作って出迎えよう。
いつか、リアルでも会えたらいいな。
そしたら、本物の手作りケーキを食べてもらえるのに。
「ボク、ログアウト出来たら猫飼おうかな。お母さんが良いって言えばだけど」
「きゅきゅう」
明日から開店だ。
色々と不安もあるけど、頑張ろう。
ここまで色々な人に応援されたんだ。
大丈夫。
きっと、大丈夫――。
◇
「これで、よし!」
翌日。
お店のドアに『OPEN』と書かれた札を掛けて、オススメの商品のポップを貼った立て看板も置いた。
これで完璧。
あとはお客さんが来れば大丈夫。
「うう、ちょっと緊張してきた……」
「きゅっきゅう!」
「う、うん。頑張るよ!!」
黙っててもお客さんは来ない。
ちゃんと呼び込みをしないと……!
「い、いらっしゃいませー! 本日開店した【グラーティア】です! 回復用お菓子などを置いてます! 旅のお供におひとついかがですかぁー!」
◇
それから数時間――。
「ありがとうございましたー!」
日が暮れる頃にはお店の商品が完売した。
そんなに品数はなかったとはいえ、こんなに売れるなんて驚きだ。
なんか写真撮っていいかとか聞かれたけど、あれは何だったんだろう。
「きゅきゅー!」
「ミヤー! 開店初日は大成功だね! やったよー!」
ボクはミヤを抱き上げて、閉店準備を始める。
と言っても、商品はほとんど売れたから片付けるものはあんまりないんだけどね。
明日は早起きして、またお菓子を大量に作らなきゃな。
「……マナさん、まだ帰って来れないのかな……」
「きゅう?」
「えへへ」
なんだろう、ちょっと寂しいな。
一人、じゃないけど。
でもなんだか一人みたい。
心細い。
悲しい。
寂しいです。
早く会いたいよ、マナさん――。
USER NAME/片岡春臣
LOGIN NAME/ハル
SEX/女?
PARTNER/ミヤ
LOGIN TIME/0061:00:54




