033 ミヤ
「あ!」
数分待った後、マナさんからメールが到着した。
えーっと、なになに?
『ウィンドウを表示させてマップを選ぶ』……?
マップ、マップ……あ、あった!
次は『右上の赤い印』……これか。
これをタップ。
「おお」
この赤い点で記されているのが、ボクのいる場所か。
《タヴィーレ・ストリート》ってのが、この通りの名前なのかな。
で、ダブルタップ。二回押せばいいんだよね。マウスでダブルクリックするみたいに。
あとはメールに添付して、マナさんに送れば良し。
「送信!」
これで大丈夫かな。
なんかマナさんに迷惑かけちゃって申し訳無かったな……。
「きゅう」
「あ、大丈夫? あとで手当てしてあげるからね」
この子、なんていう生き物なんだろう。
ただの黒猫じゃないよね。
ネコっぽい耳だけどネコじゃない。
だって普通、猫には羽が無いし。
耳もこんなに大きくないし、でもたれ耳な感じが可愛いけど。
「ハルくーん」
「あ、マナさん!!」
ボクはネコっぽい生き物を抱き上げてマナさんの元に駆け寄った。
良かった。
迷子になったときはどうなることかと思ったよ。
「大丈夫?」
「はい。ボクは大丈夫です。ただ、この子が……」
「うん? あー怪我してるね」
「この子もモンスターに入るんですか?」
「うん。魔獣の一種だよ。結構強いから飼い慣らせば番犬の代わりになるんじゃない?」
「へぇ」
そうなんだ。こんなに可愛いのに……。
ボクはマナさんと一緒にお店へと戻った。
その帰りに救急道具も買って、ネコの手当ても済ませる。
マナさんはこれから洞窟に行くらしいから、回復用にボクの作ったお菓子を沢山渡したんだけど、ちょっと多かったかな。
◇
「さてと、これからどうしようか」
「きゅう」
「うん? どうしたの」
「きゅきゅう」
「そうだ。お前の名前も考えないと」
懐いてくれているのか、さっきからボクの足にくっ付いて離れようとしない。
怪我してるんだから大人しくしてて欲しいんだけどなぁ。
でも、可愛いなぁ……。
「うーん……ボクの名前がハルだから、ナツ? いや、それは安易すぎるか」
名前を考えるのって難しいな。
ネコ、黒猫。魔獣、黒。
夜。
「……深夜、ミヤ」
「きゅ!」
「気に入った? じゃあ、お前の名前はミヤだ」
「きゅう!」
へへ。嬉しそう。ボクの言葉が分かるんだ。
そうだ。ネコの形をしたお菓子とか作ろう!
絶対可愛い!
なんか創作意欲湧いてきたかも。
早速何か作ってみよう。
そう思って厨房へ向かおうとしたその瞬間――。
ガシャアァァン!!
――という音と共に店のガラスが割れたのだった。
USER NAME/片岡春臣
LOGIN NAME/ハル
SEX/女?
LOGIN TIME/0050:00:05




