031 九尾の首
「……」
目を瞑ったままのクロア。
私は全てを彼に説明した。
何故か彼と一緒に玄関前で正座をしながら。
うん。
足痺れて死にそう。
「……俄かには信じがたいが……。君が言うんだ。間違いないのだろう」
スッと立ち上がりクロアは玄関から出ようとする。
「え? もう帰るの? 出来れば一緒にスザン先生やメリルさんやゼガルさんの無事を確かめに行って貰いたいなーなんて……」
「……何をしているんだ君は?」
なかなか立ち上がらない私を怪訝な表情で見るクロア。
その目、癖になりそう。
ていうか、立てない。
一時間も正座したら無理やろ。
わたし正座できない子なんだから。
『おー、帰ったぞー……って。まだ話してたのかよ。長っ』
買い物から帰って来たヅラっちが買い物袋を引っ提げて文句を言う。
私の説明が始まった途端に『つまらないから買い物行ってくらぁ』とか言って勝手に出て行ったくせに。
でもクロアと2人っきりになれたから許すけど。
ていうか立てないんですけど。
どうしよう。
「……まさか、今ので足が痺れたのか? 全く……。仕方が無いな」
「ふえ?」
そのまま私をお姫様抱っこしたクロア。
私は顔が真っ赤になりながらジタバタする。
その様子をジト目で見るヅラっち。
そして『発情期か』と一言残し台所へと向かって行った。
発情期って何だよ! 発情期って!
「暴れないでくれ。立てないのだろう? ならこうする他にあるまい」
「いや他にも色々と方法はあるでしょうが! どうしていつもお姫様抱っこするの! ありがとう!」
「え?」
「……あっ」
つい本音が出てしまった。
更にゆでだこみたいに真っ赤になる私。
こんな姿をハルくんに見られたら笑われてしまう。
(ハルくんの方は無事にお友達に逢えたのかな……)
確かミラさんとルーイさんだったか。
それとミラさんの弟のレスディー君。
みんな無事だと良いのだけれど。
「九尾」
「へい旦那」
玄関先に出たクロアは九尾の名を呼ぶ。
相変わらずこの子はクロアの呼びかけにすぐに応じ、出現する。
賢いキツネだ。
うちのヅラっちにも見習って欲しい。
「……」
私と目が合った九尾はそのまま首を振り溜息を吐いた。
九尾が首を振る……。
面白い! 私ダジャレ上手い!
…………うん。
「旦那。そいつと関わるとロクな事が起こらないと思いますが」
「? 何故だい? 九尾」
「……いえ、これはあっしの勘で御座いますので確証は無いのですが」
1人落ち込んでいる私にもう一度目を向ける九尾。
え? 今なんか言った?
渾身のおやじギャグで落ち込んでて全然聞いてなかった!
「ふふ、大丈夫さ。マナといると飽きないからね。それよりも血が騒いで仕方が無いよ。ふふふ……」
「……はぁ。だから関わらない方が良いと……」
病んだ笑い声を上げるクロアと溜息を吐く九尾。
私は双方の顔を交互に見て首を傾げる。
何かしましたかね、私……。
「とりあえずスザン先生の所に行ってくれるか。その後はメリルの店とゼガルの店だ」
「へい。分かりやした」
そのまま九尾のフワフワした背に乗るクロア。
もちろん私はお姫様抱っこをされたまま。
ていうかまた、このまま街中を失踪するんですか。
あれめっちゃ恥ずかしかったから、もう止めて頂きたいのですが……。
「暴れないでくれ。落ちたら怪我をしてしまうぞ」
嫌よ嫌よをする私を更にギュッと抱えるクロア。
嗚呼……良い匂いがする……。
もう死んでも良い……。
お父さん、お母さん。
私を生んでくれて、ありがとう――。
意識が朦朧とする中――。
――九尾は猛スピードで街中を駆け抜けていった。
首を傾げながら――。
USER NAME/佐塚真奈美
LOGIN NAME/マナ
SEX/男?
PARTNER/ヅラっち
LOGIN TIME/0044:32:55




