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Trans Sexual Online~のんびりほのぼのTS生活~  作者: an℟anju
第一章 ログイン開始
24/79

022 グラーティア

 

 メリル洋裁店を出たのは、もう日が暮れだした頃。

 昼間に行ったはずなのに、もうこんな時間になっていたなんて。

 まぁ、一応制服となる衣装は買えたから良いか。


 なんかメイド服っぽいの選ばれたけど、まぁいいよな。うん。

 せっかくTSしたんだ。女になってる間は、それを楽しまないと。

 リアルに戻ったら出来ないんだし。

 ゴスロリだろうとメイドだろうと、なんでもかかってこいだよ。

 ドンと来いだよ!


「どうしたの? 拳なんて握りしめて」


「え、いや。ちょっとした意気込みというか……」


 隣にいたミラさんがクスクスと笑った。

 僕らは今、『僕のお店』へと向かっている。

 店内の内装とか決めないとだからね。

 実際に店の様子を見てみないと、そういうの決められないし。


 メリル洋裁店から歩くこと数十分。

 僕の店、実はミラさんの店と近いんだよね。

 それがちょっと心強い。

 困ったとき、相談しに行けるし。


「着いた。ここですね」


 まだ看板も何もない、僕のお店。 

 窓から見える店内も、ガラガラ。

 何もない、ゼロの状態だ。


 ここから僕は、一からお店を始めるんだ。


「なんだか、私もお店を開いたときのことを思い出すわ」


「ミラさんの?」


「ええ。あのお店は両親が私たち姉弟にくれたものなのよ」


「そうだったんですか」


「ええ。あのお店は支店でね、地元にちゃんと本店があるのよ」


「じゃあ、家族で?」


「そうよ」


 そうなんだ。

 家族でお店経営してるとか、なんかカッコいいな。

 何て言うか、ミラさんとレイが仲良いのって、そういうのも関係してるのかな。

 小さい頃から家族で協力し合っているから、絆が深いんだ。

 憧れちゃうなぁ。


「さて。ハルちゃん、お店のイメージとかある?」


「え、あ……そうですね。やっぱり可愛らしい感じがいいです。ちょっと森みたいな感じ? 癒しっていうか……」


「なるほど、良いんじゃないかしら。清潔感も感じられるし、可愛いし、ハルちゃんにもピッタリだと思うわ」


「本当ですか? 良かったー」


 プロがいると心強いなぁ

 こうやってすぐに答えてくれると僕も迷わないで済むし、パパッと話も進む。

 本当に助かるな。

 

 あとは接客のこととか学んでおかないと。

 僕、バイトの経験もないからね。中学生だから当たり前なんだけど。


「まずは内装の手配よね。誰に頼もうかしら」


 インテリアコーディネーターみたいな人がいるのかな。

 まぁ、ミラさんの紹介なら安心だ。

 メリルさんも変な人だったけど、まぁ普通に良い人だったし。


「ね、ハルちゃん。まだ時間ある?」


「え、はい。大丈夫です」


「じゃあ、もう一件付き合って」


「はい」


 ミラさんが可愛くウインクをして、僕をどこかに案内し始めた。

 今日は色んな人に会う日だな。





 お店から歩く事、一時間弱。

 案内されたのは街外れにある小さな家。

 家の周りには木材が沢山置かれている。


「ルーイ。ルーイ、いるのー?」


 ここに住んでる人はルーイって言うのか。

 どんな人なんだろう。

 なんかドキドキするかも。


 暫くするとドアの向こうから物音がして、誰かが顔を出した。

 海みたいな、物凄く綺麗な碧い髪。

 眼鏡越しに見える目も、美しい藍色をしてる。


「お久しぶりね、ルーイ。良かったわ、家にいてくれて」


「丁度、今日の朝帰ってきていたんだ。会えて嬉しいよ、ミラ」


 そう言って二人は軽く抱き合って、ちゅってキスをした。

 わぁ、わぁ、わぁ!!

 初めて見た! 人がキスしてるシーン!!!


 おおおお落ち着け、僕。

 こういうのは外国人のノリだよ。

 シャイな日本人には馴染みのない習慣だけれども、ここはそういうノリが通用する世界なんだよ。

 うん。


「ハルちゃん、紹介するわね。彼はルーイ・レジェラント。私の幼馴染で婚約者なの」


「初めまして。こんにちは」


「は、はじめまして! ハルです!」


 やっぱり恋人……っていうか婚約者なんだ。

 美男美女、絵になるなぁ。

 やっぱ美女には美男が隣にいるのが摂理なんだな、うん。

 そういうものなんだよ。


「それで、今日はどういった用件かな?」


「あのね、今度ハルちゃんがお店を開くの。それで、ルーイにお店の内装をお願いしたくて」


「そうなんだ。いいよ、引き受けよう」


「良いんですか?」


「ああ。ミラの頼みだし、君みたいな可愛い子のお願いを聞かない訳ないよ」


 イケメン……。

 いや、そんな言葉は失礼に値する好青年だ。

 この顔で、この優しさ、この性格。

 ミラさんといい、良い人過ぎるよ。本当に。


「ところで、お店の名前は?」


「え?」


「ほら、看板とか作らないとだろ? だから、お店の名前」


「あ、そっか。えっと、じゃあ……」


 実は、前々から決めていたんだ。

 いつかお店を開いたときに付けたい名前があるって。

 

「『グラーティア』、でお願いします」


 グラーティア。

 前に辞書で偶然見つけたんだ。

 『グラーティア』は『感謝』という意味。

 お世話になった人や、訪れてくれた人たちに感謝をって意味を込めて。


「良い名前だね。じゃあ、早速明日から始めようか。あと、お店のイメージとかあるかな?」


「あの、森っぽい感じで、なんていうか自然な雰囲気がいいです」


「わかった。それじゃあ明日、君のお店へ行くよ。場所は?」


「えっと……。ミラさんのお店の近くで……。住所は……なんだろう」


「ふふ。明日、先に私のお店に顔出して。案内するわ」


「じゃあお願いするよ」


 ふわりと微笑みあう二人は、なんか絵画でも見ているような気分になる。

 明日、朝早く起きてケーキを作っていこう。

 それを二人に食べてもらうんだ。


 お店、早く開きたいな。

 そしたら、他のプレイヤーさんとの出逢いも沢山あるはず。



 楽しみだなぁ!


















USER NAME/片岡春臣かたおかはるおみ

LOGIN NAME/ハル

SEX/女?

LOGIN TIME/0034:55:12

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