015 ぼっちでも大丈夫
「……ん、んん?」
あれ。なんか外が明るい?
もしかして僕、寝てた? え、いつの間に?
なんか頭が痛いような気がする。
なんで……?
「あ」
昨日飲んでたジュース。
よく見たらこれ、アルコール入りじゃん。そうか、これのせいか。
どうしよう。僕、未成年なのに……。
だ、大丈夫かな。怒られないかな?
リアルじゃないから平気なのかな。
「ま、まぁいいや。畑見に行こう」
怒られたら怒られたで謝ればいい。うん。
今日もまた水撒いて、そんで昨日買ってきた材料で何か作ってみよう。
ケーキとかは無理だけど、あのヅライムから落ちる液体を加工したヤツ。
あれがゼリーとかの材料になるんだって。
やっぱヅラは聞き間違えじゃなかったんだな。
どんなだろう、ヅライム。ちょっと見てみたいかも。
ヅラ被ってんのかな。ってことは本体はハゲ?
それともヅラが本体?
気になる……。
◇
「さてと!」
水撒きを終え、実は昨日ミラさんから貰ってたエプロンを付けた。
ミラさんとお揃いのフリルのエプロン。
ただ、僕のはピンク色。
そうだ。お店用の衣装はどうしよう。
あとでミラさんに相談しておこう。
そういうのは、ちゃんとした女性に訊くのが良いだろう。
とりあえず、これをどう使ったらゼリーになるのかな。
この家、冷蔵庫とかそういう家具も備え付けだったからラッキーだな。
なんか色々と楽してる気がするけど、まぁいっか。
大変なのはこれからだもんな。
「えっと、まずは……」
昨日味見した果物を入れよう。
半分は絞って、残りは一口大に切って、ゼリーの中に。
うん、美味しくなりそうだな。
明日は小麦を収穫できるはずだから、それを使ってケーキとか本格的に作れるぞ。
そしたら、それをシグさんやミラさんに持っていって、お店に置いてもらえるようにしてもらって、次に僕のお店だ。
運営、上手くいくか不安だけど頑張ろう。
これが将来への第一歩になるんだから。
「うーっし! そんでこれに、さっきのフルーツを入れて……と!」
器に移して、あとは冷やすだけ。
これだけだと回復量は少ないだろうな。
もっと食べやすいサイズで回復量を増やせないかな。
ドライフルーツとか作って、それをクッキーに入れるのもいいかな。
そうしたら食べやすいし、持ち運びも楽だし。
フルーツ多めで回復量も増す。
うん、良いんじゃないかな。
「売りに出す前に試食頼もうかな。みんなの口に合うかどうか不安だし……」
この家、家具とか色々揃ってて便利なんだけど街から離れすぎてるんだよな。
静かなのはいいけど、ちょっと寂しいんだよな。
なんかペットとか飼えないかな。一人は寂しいし、せめてペットくらい欲しいな。
猫とかいるのかな、このゲーム。
「ボク……ぼっちなのか」
どうしよう。まさかオンラインゲームでぼっちとか……。
今のところ、NPCとしか喋ってない。
他のプレイヤーさんとも話したいなぁ。
まぁ、お店始めたら色んな人が来てくれるよな。
そしたらお客さん達と仲良くなろう。
常連さんとかが出来るくらい!!
「よし! 次は何作ろうかな!」
和菓子はどうやって作ろう。
餡子の代役になりそうなもの、あるのかな。
そうだ。
さっきのヅライム。
あれを煮詰めて、ちょっと手を加えたら何か出来そうじゃないか?
よしよし!
いい感じにアイデアが出てきたぞ。
この調子でメニュー増やしていこう!
ぼっち上等!
作業に集中できていいじゃんか!
あ、なんか音楽とか聴きながらやりたいな。
僕、普段からお菓子作ったり勉強するときは音楽聴きながらやってるもんな。
作業用BGMが欲しいなぁ。
「ちょっと探してみようかな」
えっと。
ステータス画面を出して、それっぽいのがないか探してみた。
BGM……BGM……。
プレイヤー……は僕のことだから、これじゃない。
ミュージック……これかな。
あ、でもプレイリストに何も入ってない。そりゃそうか。
これ、課金とかなのかな。
あ、違う。検索出来るっぽい。
僕は有名な動画サイトを探し出して、そっから好きな歌手の作業用BGMを再生した。
うん、これでスイッチが入る。やる気メーターもガンガン上がる!
これがあれば、何時間でも集中して作業が捗る!
――僕、覚醒。
なんちゃって。
今の恥ずかしいかも。
聞かなかったことにして。
ホント、マジで。
USER NAME/片岡春臣
LOGIN NAME/ハル
SEX/女?
LOGIN TIME/0022:12:45