012 お勉強
畑の水まきを終え、僕はもう一度街へと出た。
もう結構な時間が経ってる訳だし、色んな人がゲームやってるはず。
ってことは、僕みたいに経営目的として動いてる人だって増えてると思う。
ボクは家に鍵を掛けて、街へと向かった。
数十分歩いて街に着くと、さっきよりも人が沢山いて活気に溢れていた。
お店も開いてるし、露店もいくつかある。
さっきはゆっくり見てる余裕なかったけど、武器屋とかそういうお店も多いな。当たり前なんだろうけど。
武器、防具屋。
鍛冶屋。
宿屋。
そんで普通の雑貨屋。
僕が色々とお世話になりそうなのはここかな。
こういうお店で何か参考になるような話でも聞いておこう。
お菓子作りに必要な材料や道具についてとか知りたいし。
お店に僕のお菓子置いてくれるかどうかも聞きたい。
こっからは勉強だな。
「よしっ」
ボクは露店を開いている商人に声を掛けてみることにした。
早い段階でこういう人と交流を持っておくのは良いことだろう。うん。
「あのー」
「おや、お嬢ちゃん。何をお買い求めかな?」
商人のおじさんは優しい笑顔で応えてくれた。
怖い人だったらどうしようって思ったけど、安心した。
「あの、ボクお店を開く予定なんですよ」
「おお、同業者か。何の店だい?」
「お菓子とか、そういう回復系のものを……」
「そうかい、お菓子か。可愛いお嬢ちゃんにピッタリだな」
お嬢ちゃんって呼ばれるの慣れないな。
だって僕、男だもん。
今は女の子になっちゃってるけど、男だもん。
「それでですね、お店を開いてる人に色々と聞きたいなって思ってるんです」
「なるほど。そのお菓子とかってのは、お嬢ちゃんの手作りかい?」
「はい。今、お菓子の材料になるものを育ててまして……」
「ハハハ、それは本格的だね」
おじさんが大きな口を開けて笑った。
普通はここまでしないのかな?
僕が変わってるのか? ゲーム初心者だからなぁ……。
「それで、自分のお店だけじゃなくて他の雑貨屋とか、こういう露店にも置いてくれたらいいなーって……」
「ほうほう。それは良い案だね。そのアイテムって今はあるの?」
「あ、いえ。まだです。今はまだ材料集め中なので……なので、今はとりあえず色んな人に話を聞いて勉強しようかなって」
「偉いね、お嬢ちゃん。可愛くって真面目なお嬢ちゃんには特別だ。アイテム出来たら持っておいで。うちの店でも置いてあげるから」
「本当ですか!? ありがとうございます!!」
やった!
これは好調なんじゃないか!?
僕、結構経営向いてる? 将来有望!?
いやいやいや、ここで調子に乗ったらダメだ。
これは僕の実力じゃない、おじさんが親切だったからだ。全部全部おじさんのおかげなんだ。
「それで、食材についてなんですけど……」
「ん? なんだい?」
「お菓子作りに必要な食材って、どんなものがありますか?」
「そうだねー。簡単に手に入るところで、ヅライムからドロップする液体とか調合して使うといいぞ。調合の仕方によっては甘くて美味しい蜜になる」
「……ヅ、え?」
僕の聞き間違えかな。そうだよね、うん。
きっとスライムとかだ。なんかのゲームにもそういう可愛い感じのモンスターいたもんね。
てゆうか、モンスターって食材になるんだ? 美味しいのか? 全然イメージ湧かない。
てゆうか、それを手に入れるためにはモンスターと戦わないとダメなのか?
僕、戦闘とかするつもりなかったんだけどな。
「そういうのって、買えたりするんですか?」
「ああ、うちでも取り扱ってるよ」
なんだ、良かった。
じゃあ僕が戦う必要はないんだな。
それを聞いて安心した。
「あの、色々と教えてもらっていいですか?」
「勉強熱心だね。いいよ、なんでも訊いておくれ」
その後も僕はおじさんに色々聞いて勉強した。
どの材料を組み合わせれば、どれくらい回復するかとか。食材になるアイテムとか。お店を経営するのに必要なこととか。
他にも菓子作りに役立つ業者を紹介してくれたり。
僕、学校の授業以上に頑張って勉強してるかも。
この調子で授業も真面目に聞いてれば、良い点とれるんだろうけどなぁ
あ。
これ終わったら、勉強しないとだ。
……。
めんどくせっ。
USER NAME/片岡春臣
LOGIN NAME/ハル
SEX/女?
LOGIN TIME/0009:30:21