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Trans Sexual Online~のんびりほのぼのTS生活~  作者: an℟anju
第一章 ログイン開始
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009 初めての街

『いやー、おめぇはホント話せるなぁ! 俺ぁ人生で初めてだぁ! こんなに話聞いてもらったことなんてよ! がはは!』


 先程から私の目の前で大声で笑い出しているとうもころし。

 もうかれこれ1時間くらいくっちゃべっている……。


『でもアレか? 兄ちゃんは心は女なんだろう? なら男の方が好きなんか?』


 話題が無くなったのか。

 いきなり突っ込んだ質問をしてくるとうもころし。


「まぁ……はい」


 私は焼きもろこしを頬張りながらもそう答える。

 うん。味はまずまずだ。

 というかお腹空いていたし丁度良かった。

 我侭を言うのであれば、もう少し濃い口醤油味の方が……。


『俺と……付き合っちゃう?』


「いいです」


『あそう』


 一歩近づかれたので、一歩後退しそう答える私。

 ていうか、とうもころしは男だったのか……。

 まあ、『俺』って言っているくらいだからそうなのかも知れないとは思っていたけど。


「ご馳走様でした」


 そうお礼を言い立ち上がる私。

 しかし名残惜しそうな顔で私を見上げるとうもころし。

 なにその顔。

 やめて。

 すっごい泣きそうな顔で私を見ないで。


『なぁ……1つ駄目もとでお願いしても……いいか?』


 真剣な面持ちで立ち上がりそう言うとうもころし。

 凄く嫌な予感がするが、ご馳走になった手前、邪険にするわけにもいかない。


「……なんでしょうか」


 一瞬、私達に静寂が流れる。

 なんだろう、この微妙な空気は。

 荒原の風が私の髪をたなびかせる。

 少し長めの髪が鬱陶しくてかき上げたその瞬間――。


 ――目をキラキラと輝かせたとうもころしが唇を尖らせて私に――。


「なにしてんだ変態!」『ぶっ!!』


 咄嗟にアッパーをかます私。

 こいつ……!

 いまどさくさに紛れて私の唇を奪おうと――!


『あ、違う! 違うんだ! これはその……! つい髪をかき上げる姿に見蕩れちまって魔が差したというか……!』


 一生懸命に言い訳をし出すとうもころし。

 さっきのヅライムといいうぃっちといい、何なんだろう、この世界のモンスターは……。

 

 尻餅をついているとうもころしをキッと睨み、その場を後にする私。


『あ、待って! ちょ、俺が言いたかったのは【仲間モンスター】にして欲しいっていう――』


 後ろで何か喚いているが、私は無視し街を目指す。

 あんな奴を仲間モンスターなんかにしたら、何をされるか分かったもんじゃない。

 無理無理。絶対いや。


『ちょ、兄ちゃん! せめて……せめて名前だけでも――』


 さようなら、もろこし君。

 焼きとうもころし、美味しかったよ――。





 荒原を進むこと3時間。

 ようやく到着した初めての街。


「うっわ……。めっちゃ人いるじゃん……」


 賑やかな街並みに少々度肝を抜かれる私。

 これ全部、今日から始めたログインプレイヤー?

 街行く人々の頭上にはカタカナ表記で【LOGIN NAME】が記載されている。


どん――。


「あ、ごめんなさ――」


 あまりの人ごみに余所見をしてしまい、誰かとぶつかってしまう。

 しかし私は一瞬のうちに口を噤む。


「ああ、ごめんね。僕も余所見をしていたから」


 そこには信じられないくらいの美形の青年が、笑顔で私を見つめていた。

 頭上の表記は【௭௮௯௱௲】となっている。

 なんて書いてあるのかはさっぱりだったが、私の脳内ではそれが『クロア』と変換される。


 確かカタカナ表記以外の人間はNPCだったはず。

 じゃあ、この美青年も――?


「うん? どうしたの? 僕の顔に何かついているのかな?」


 私の視線に気付くクロア。

 やばい。

 これは、やばい。

 心臓の鼓動とか、色々ヤバイ――。


 どうしよう。

 アレだ。

 羊の数とか数えよう。

 いや、ヅライムの数の方が落ち着くかも知れない。


 ヅライムが1匹、ヅライムが2匹、ヅライムが3匹、ハゲヅラが4匹――。


「……あの……」


 ぶつぶつと瞑想しながら呟く私を、どうしてよいか分からないといった様子のクロア。

 落ち着け、落ち着くのよマナ。

 今の私は男。そう、男。

 男が男に恋するわけが無い。

 この世界では性別が逆転しているのだから、私は女の子を好きにならなくちゃ駄目なんだ。

 そう。そうよ、マナ。

 それなら何も問題無い。

 いやそれにしてもイケメンですね、クロアさん。

 嗚呼……そのサラサラな紫色の髪。整った顔立ち。目は緑色なのかな……。

 肌の色も白くて、足も長くて、指も綺麗で――。


 だ、駄目だ……!

 もっとヅラを数えなくちゃ……!


 ハゲヅラが5匹、ハゲヅラが6匹、えっちなうぃっちが7匹、コーンなとうもころしが8匹――。


「……うーん。頭でも打ったのかなぁ……。スザン先生の所に連れて行ったほうが良いかな」


「え?」


 瞑想していた私が宙に浮く。

 いや、違う。

 これは――?


「九尾」


『はいダンナ』


 いきなりボンっと足元に現れたのは九つの尻尾をもつキツネみたいなモンスター。

 え? ええ?


「スザン先生の所まで走ってくれるか」


『お安い御用で』


 そしてそのままフサフサもふもふの背中に乗るクロア。

 コーンと泣き叫び、凄いスピードで街中を走っていくキツネ。


 ていうか――。



 ――どうして私、イケメンにお姫様だっこされているの?






 涎が、止まりません。


















USER NAME/佐塚真奈美さづかまなみ

LOGIN NAME/マナ

SEX/男?

LOGIN TIME/0010:25:09

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