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庶民を虐めているつもりが、最高のツンデレ令嬢と勘違いされています  作者: なおや ゆかり


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悪役令嬢は庶民に『毒』を盛る(※栄養満点の手作りサンドイッチ)

「……本当に、目障りな女ですわね」

王立学園の廊下。

氷のように冷ややかな声で言い放つ私の目の前には、特待生である庶民の少女、リリアが肩をビクッと揺らして立っていた。

彼女の目の下には薄っすらとクマができている。昨夜も遅くまで図書室で勉強していたのだろう。特待生の維持が大変なのはわかるけれど、これでは体が持たない。

(ああもう! だから無理をして倒れたらどうするのよ! ちゃんと寝て、ちゃんと食べなさいってば!)

心の中では大パニックである。

私は前世の記憶を取り戻した悪役令嬢、セレスティア。

ヒロインであるリリアを徹底的にいびり抜き、立派な悪役として振る舞って破滅エンドを回避するのが私の至上命題だ。

「こんなみすぼらしい顔でウロウロされると、学園の品位が落ちますわ。……これでもお食べなさい!」

ドンッ、と。

私は持っていた包みを、リリアの胸に強引に押し付けた。

「……え?」

「庶民にはお似合いの、パサパサのパンよ! 感謝して胃袋に詰め込みなさい!」

ふふんっ、と鼻で笑い、私はそのまま勢いよく踵を返した。

完璧だ。どこからどう見ても、完璧な悪役令嬢の陰湿ないじめである。

——なお、その包みの中身は、私が今朝早起きして厨房を借りて作った、特製のサンドイッチだ。

消化に良いふわふわの白パンに、低温調理でしっとり仕上げた鶏胸肉、シャキシャキの新鮮な野菜、そして疲労回復効果のある特製オーロラソースをたっぷり挟んである。冷めても美味しい自信作だった。

 ◇ ◇ ◇

(……口に合うといいんだけど。マスタードは少し控えめにしたから大丈夫よね)

誰もいない中庭のベンチに座り、私は大きく息を吐いた。

ピンと張っていた背筋を緩め、ふにゃあっとベンチにだらしなく寄りかかる。

「はぁ〜、悪役令嬢って疲れる……。リリアちゃん、ちゃんと食べてくれるかなぁ。次は甘い卵焼きでも入れてあげようかな……」

誰にも見せない、私の素の姿。

本当はお世話好きで、料理を作って誰かに美味しく食べてもらうのが何よりも好きなのだ。

学園の『氷の公爵令嬢』なんてただの皮。本当は家事をして、のんびりまったり過ごしたい。

残っていた自分用のサンドイッチを取り出し、「あむっ」と小さく口を開けた、その時だった。

「へぇ……。あの『氷の令嬢』が、随分と可愛らしい顔をするんだね」

ビクッとして振り向くと、そこには学園一の王子様であり、私が絶対に近づいてはいけない腹黒王太子、ユリウス殿下が立っていた。

彼の手には、なぜかさっき私がリリアに押し付けたはずのサンドイッチの……半分が握られている。

「リリアに半分もらったんだけど……これ、君が作ったの? 驚くほど美味しいね」

「なっ……!?」

「ねえ、もっと君の『裏の顔』、教えてよ」

有無を言わせない甘い笑みを向けられ、私の完璧な悪役令嬢ライフは、初日から盛大に軌道から外れようとしていた。

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