エピローグ:御馳走様でした!
世界の危機から数日後。
東京タワーの頂上――かつて「東京迷宮」と呼ばれたその空間は、劇的なビフォーアフターを遂げていた。
「……なぁ。これは、なんだ?」
レンが呆れた声で問う。
彼の目の前に建っていたのは、昭和レトロな木造建築と、最新鋭の物流倉庫が融合したような、奇妙な建物だった。
入り口には、極太の筆文字で書かれた看板が掲げられている。
『ダンジョン・イーツ トーキョーラビリンス支店』
その前で、白いワンピースの少女、ダンジョンの管理者が、エッヘンと胸を張っていた。
「私の新しいお家兼、あなたたちの支店だよ!」
「いや、支店って……ここ、地上333メートルだぞ? 誰が来るんだよ」
「ふふっ、心配無用よレン」
隣でカグヤがクスクスと笑いながらタブレットを見せる。
「政府や物流大手から猛抗議が来ているわ。
『公共の電波塔を私物化するな』『勝手にテナントを開くな』ってね」
「だよな! 常識的に考えてアウトだろ!」
「でも、あの子が全部突っぱねたわ」
管理者の少女が、無邪気な笑顔で言った。
「うん。『文句があるなら、ここまで登ってきて直接言いなさい。今のところ、ここに来れるのはダンジョンイーツさんだけですけど?』って返信したら、みんな黙っちゃった」
「……最強の既得権益じゃねえか」
「ダンジョン・プライムからは、協力関係を結びたい、好意的なメッセージが届いているわよ。」
レンが苦笑いをしていると、少女は「それだけじゃないよ!」と、建物の裏手にある巨大なガレージを指差した。
「レンたちの頑張りに感動したから、私からのサプライズプレゼント!」
ガレージのシャッターが自動で上がる。
その奥には、渦巻く光のポータル――巨大な転移ゲートが鎮座していた。
「これは……ゲートか?」
「そう! 世界各地の主要ダンジョンの入り口と直結している『管理者用ショートカットゲート』だよ。
サイズは、あの青い車がギリギリ通れるように調整しておいたから!」
その言葉を聞いた瞬間、背後で眠そうにしていた拓実が、カッ!と目を見開いた。
「……素晴らしい。
つまり、移動時間ゼロで、北海道から沖縄、あるいは海外のダンジョンへも配送可能……ということですね。
あいつも『新しいコースが増えた』と喜んでいます」
「その前に、どうやってサンバーでここまで来るんだよ……」
「拙者にお任せください!サンバーを運ぶ輸送機のプラモを、ユウキ殿と組立ます!」
アリスがユウキとハイタッチをする。
これは革命だ。
いよいよダンジョンイーツの世界進出が実現する。とはいえ、また人員増やさないと。
「ありがとな。これなら、もっと多くの腹ペコたちに美味しい物を届けられる」
レンが礼を言うと、少女はモジモジと頬を染めた。
「えへへ……。あ、あとね、もう一つあるの」
「え?!まだあるのか?」
「うん。だって、私もたまには……地上のご飯、食べに行きたいし」
少女はそう言って、支店の奥にある「トイレ」のドアを開けた。
「……それが、どうかしたのか?」
「このトイレのドアね、銀座本店のトイレと繋げちゃった!」
「はぁぁぁぁッ!?」
レンが素っ頓狂な声を上げる。
恐る恐るトイレの中を覗くと、そこには便器ではなく、見慣れた銀座本店の廊下が広がっていた。
逆に、銀座本店側から誰かがトイレに入ろうとすると、いきなり東京タワーの頂上に出てしまうことになる。
「なんでトイレなんだよ! もっとマシな場所あったろ!?」
「だってぇ……誰にも見られずに接続できる個室って、トイレくらいしかなかったんだもん。
ほら、ここを通れば、いつでも私がお店にご飯食べに行けるでしょ?」
少女は「えへん!」と言わんばかりのドヤ顔だ。
セキュリティもプライバシーもあったもんじゃない。
「……カグヤ様。これ、どう思います?」
「ふふっ、いいじゃない。
『どこでもドア』がトイレにあるなんて素敵じゃない」
「拓実!」
「……自分は、サンバーが通れないので興味ありません」
「ユウキ!」
「先輩! トイレから神様が出てくる店なんて、話題性バツグンっすよ!」
「アリス!!」
「姫の御心のままに……」
「レ、レイ!!」
「これは社外秘にしなければ……」
だめだ、こいつら。感覚が麻痺してやがる。
レンは深い溜息をついた後、仕方なさそうに笑った。
「……まぁ、いいか。
常識外れなのは、今に始まったことじゃねえしな」
レンはジャケットを羽織り直した。
その時、スマホが震え、注文の通知音が鳴り響く。
『注文入りましたー!
お届け先は……おっと、さっそくゲートの出番ね。
北海道・千歳ダンジョン最下層。カニクリームコロッケ定食よ』
カグヤがウィンクする。
「よし! 休憩は終わりだ!
東京迷宮支店、最初のデリバリーに行くぞ!」
「「「了解!!」」」
世界中の腹ぺこ達が待っている。
――ダンジョンイーツ。
彼らは今日も、明日も、その先も。
あらゆる境界を越えて、「美味しい」を届け続けるのだ。
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東京迷宮は、地下にある予定だったのに、東京タワーに上ってしまって、どうしようとか、東京迷宮ってわりに、迷宮ねーじゃんとか、色々矛盾点が会ったりするのですが、笑って流していただければ幸いです(汗
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
誤字報告、感想もありがとうございました。皆様の応援で、最後まで書き続けられたなと実感しております。
次に何を書くかは未定なのですが、次回作も宜しくお願いします!




