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ダンジョン・イーツ! ~戦闘力ゼロの俺、スキル【絶対配送】でS級冒険者に「揚げたてコロッケ」を届けたら、世界中の英雄から崇拝されはじめた件~  作者: たくみ
第六章 その配送、安物につき群雄割拠 編

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9:S級 vs S級

 ズゴゴゴゴゴゴォォォン!!


 耳をつんざくような轟音と共に、隅田川の護岸コンクリートが砕け散った。

 H&Lロジの大型タグボートに無理やり牽引された『浮遊型ダンジョンゲート』が、強引に陸地へと乗り上げたのだ。

 直径50メートルにも及ぶ巨大な門が、H&Lの倉庫敷地に鎮座する。


 その絶望的な光景を見て、追いついてきたユウキが息を呑んだ。

「うわぁ……本当に陸に上げちゃったよ……。ねえ大門さん、本当にあのダンジョンゲートから魔物が出てくるんですか?」


 隣に立った大門は、サングラスの位置を直し、低い声で吐き捨てた。

「ここまでの事をしたんだ、H&Lは本気でやれると考えているんだろう……」

「ご、ごくり……つまり?」


「あ……ああ、つまりだ、本来、強力な魔物は深層にしかいない。そこへ至るまでの長い道のりが、地上を守るフィルターの役割を果たしている。

 だが、奴らはあのゲートを使って、深層と地上をドア一枚で繋ごうとしている……たぶん」

 大門は、ゲートから漏れ出すどす黒い魔力を睨みつけた。


「そうなればどうなるか……想像してみろ。

 S級モンスターが、道を闊歩する銀座の交差点を……」

 ユウキの顔から血の気が引く。

「運転しにくそう……」

 大門は、俺にコイツはなんなんだと、ジェスチャーでアピールしてくる。


 大門の言うことが何処まで本当か分からないが、H&Lがしようとしている地上と現実の境界を破壊し、世界をリセットするという目的に合致しているが。


 そんな事を考えていると、倉庫のスピーカーから、H&Lエリア統括『蛇島』の狂った笑い声が響き渡る。


『ギャハハハ! よく来たな、負け犬ども!

 見ろ! これが新時代の幕開けだ! ゲートの回路接続は完了した!


 さあ、出てこい俺の可愛いペットたち! 人間どもを喰らい尽くせ!』

 蛇島の合図と共に、ゲートの光が毒々しい紫色に変色した。


 空間が歪み、そこから溢れ出してきたのは――。


 グオオオオオッ!!


 全身が岩石で覆われた巨人『ロック・ゴーレム』。

 鋭利な鎌を持つ巨大カマキリ『デス・マンティス』。

 深層エリアに生息するはずのB級、A級モンスターの群れが、雪崩のように地上へ溢れ出した。


「ひっ、ひぃぃっ! 本当に出てきた!」

 H&Lの作業員たちが悲鳴を上げて逃げ惑う。彼らもまた、使い捨ての駒に過ぎないのだろう。

 モンスターの群れが、市街地へ向かおうとしたその時。


「……通さん!!」

 大門の怒号が響いた。

 彼が手を挙げると、待機していた大和運輸の精鋭部隊が一斉に展開した。


「大和運輸・特殊配送部隊『クロヒョウ隊』、陣形展開!

 市民には指一本触れさせるな! ここで食い止めるぞ!」


「「「了解!!」」」


 数十名の屈強なドライバーたちが、強化シールドと配送用スタンバトンを構え、巨大な壁となってモンスターの前に立ちはだかった。


 ゴーレムの拳を盾で受け流し、マンティスの鎌を連携攻撃で弾き返す。

 一糸乱れぬ統率。これが日本最大手の底力だ。


「レン殿! 雑魚は我々が引き受ける!

 貴殿らはゲートストーンを破壊しろ!」

 大門がゴーレムを殴り飛ばしながら叫ぶ。


 海上から上陸したサンバーの荷台で、レンが頷いた。

「恩に着る、大門さん! ……行くぞ、みんな!


 拓実がアクセルを踏み込む。

 ウルトラ・サンバー・マリンカスタムは、フロートをパージし、陸上モードへと変形。


 濡れたアスファルトを強力にグリップし、モンスターの群れの中へと突っ込んでいく。


「……邪魔です」

 拓実は冷静にハンドルを切る。

 飛びかかってくるマンティスの攻撃を、紙一重のドリフトで回避。


 さらに、サイドブレーキを引いて車体をスピンさせ、遠心力を乗せた車体後部でゴブリンを弾き飛ばす。


「……秘技『サンバー・トルネード』。……ワックスかけたばかりなので、血はつけないでください」


 助手席のアリスも窓から身を乗り出し、クナイを乱射する。

「忍法・花吹雪! 雑魚に構っている暇はないでござるよ!」

 サンバーは戦場を切り裂き、蛇島がいる倉庫の管理棟へと肉薄する。


 だが、その行く手を阻むように、ゲートの中から一際巨大な影が現れた。

 ズゥゥゥゥン……

 それは、全長20メートルを超える、骨だけで構成されたドラゴン――『スカル・ドラゴン』だった。


 深層のボスクラスの怪物が、空ろな眼窩に赤い光を灯し、サンバーを見下ろす。


『ギシャァァァァッ!!』


 ドラゴンの咆哮だけで、周囲のガラスが砕け散る。

 サンバーが急ブレーキで停止した。


「……さすがに、軽トラでドラゴンとは喧嘩できない……、あいつ(サンバー)も嫌だって言ってる。」

 拓実が淡々と言う。


 ドラゴンの口が開き、紫色のブレスが溜まり始める。

 直撃すれば、サンバーごと蒸発する威力だ。

 その時。

 レンの隣に座っていたカグヤが、静かに立ち上がった。

 

 凛とした背筋。冷徹な瞳。徐々に冷気が漂ってくる。


「……レン。少し、耳を塞いでいてくれる?」

「え? ああ」


 カグヤは一歩前に出ると、スカル・ドラゴンを見上げ、この世で最も冷たい声で宣告した。


「私の純情を弄び……、レンを傷つけようとしたこと……、万死に値するわ!

 骨の髄まで凍らせて、粉々に砕いてあげる。」


 カグヤが指を鳴らす。

 ただそれだけの動作。

 しかし、世界が一変した。

 『氷界・絶対零度ニブルヘイム


 音すら凍る静寂。


 ブレスを吐こうとしていたスカル・ドラゴンが、口を開けたままピクリとも動かなくなった。

 次の瞬間。


 パリィィィィン!!


 という美しい音と共に、巨大なドラゴンの骨格が、砂のように崩れ落ちた。

 細胞レベルで瞬間凍結され、自重に耐えきれずに崩壊したのだ。


 S級モンスターの瞬殺。

 そして、ゲートストーンすら凍り付かせ、ゲートの扉が静かに閉じた。


 管理棟の窓から見ていた蛇島が、腰を抜かしてへたり込むのが見える。


「さあ、行きましょうレン。

 ……あそこの管理棟に、清算すべきゴミがいるわ」

 カグヤが優雅に微笑む。

 その笑顔は美しいが、背後には吹雪の幻影が見えるようだった。


 レンは苦笑いしながら、拓実の肩を叩いた。

「……だそうだ。拓実、あそこまで送ってくれ」

「……了解。……エンジンが冷える前に移動します。」

 サンバーが再び咆哮を上げる。


 目指すは最上階。

 ダンジョンイーツ対H&Lロジ。

 その決着の時は近い。

◆◆◆◇◇◇◆◆◆


 読んでいただきありがとうございます。


 毎日更新予定です。ブックマークや、評価、応援して貰えると、モチベアップに繋がります。


よろしくお願いします!

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