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ダンジョン・イーツ! ~戦闘力ゼロの俺、スキル【絶対配送】でS級冒険者に「揚げたてコロッケ」を届けたら、世界中の英雄から崇拝されはじめた件~  作者: たくみ
第六章 その配送、安物につき群雄割拠 編

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2:ダンジョンマスターのように買い物をしよう!

 新体制となったダンジョンイーツ。メイドとなったアリスが神速で事務所を磨き上げている傍らで、一際異彩を放つ男がいた。


 藤瀬 拓実だ。

 彼は今日も、青いパネルバンのサンバーの運転席で、ぼんやりと虚空を見つめている。

 だが、その手元にある配送端末が着信を告げた瞬間、男の性格が入れ替わる。


「……依頼。晴海はるみの倉庫から、地下迷宮入口までの特急便……」

 ボソボソと呟き、キーを回す。


 ドッドッドッ……!


 リアエンジンの咆哮と共に、スピーカーからはお決まりの激しいユーロビートが爆音で溢れ出した。


「……行くぜ。今日の銀座はアスファルトの温度が高い。あいつにとっては、タイヤのタレとの戦いになるだろうぜ……」


 拓実の仕事は、とにかく早い。

 銀座の複雑に入り組んだ一方通行や、歩行者天国による規制。そんなものは彼にとって、ただの障害物レースのギミックに過ぎない。


「……見ろよ。あのサンバー、四つ角の右折で一瞬だけリアを流しやがった。最小回転半径をさらに削るための、ゼロカウンター・ターン……。あいつ、軽トラの機動性を知り尽くしていやがる」

 運転席で、自分自身の走りを実況解説しながら爆走する。


 横を走る高級外車や、驚いた歩行者の視線など、彼には一切見えていない。

 やがて、サンバーのスピードメーターが跳ね上がる。


 キンコン……キンコン……!


「出たぁ! 速度警告音だ! あいつにとって、この音は『もっと踏め』という応援歌に過ぎねえ! ほう前走車のスリップストリームに入りやがった。……銀座の街中で、軽トラが風を切り裂いてるぜ……!」


 ちなみにだが、拓実のサンバーの速度警告音は、彼の希望により、地上では50キロを超えると鳴るように改造された。スピード違反をしないという、彼の意思表示なのだろう。



 目的地に到着し、荷降ろしを終える。


 そこに残されたのは、寸分の狂いもなく指定された位置に整列した荷物と、かすかに残るタイヤの焦げた匂いだけだった。


 事務所に戻ってきた拓実は、再び「眠たげな青年」に戻り、インターホンの前でボソボソと報告する。


「……戻りました。……今のコース、あいつにしては信号の繋ぎが悪かった……。コンマ5秒、詰められたな……」 


 モニター越しにその報告を聞いていたレンは、深く溜息をつく。


「拓実。お前の仕事に文句はないが、たまには普通に走れ。……それと、ユーロビートのボリュームを少し下げろ。ご近所さんから『また青い稲妻が通った』って苦情がきてるんだ」


「……あいつ、稲妻なんて格好いいもんじゃありませんよ。……ただの、配送車ですから」

 そう言って少しだけ照れたように俯く拓実だった。



「兄さん、大変だ! 今月の注文数が激減してる!」

 平和な銀座本部に、レイ叫びが響いた。


 レイがモニターに映し出したのは、最近若者の間で爆発的に流行しているという通販&配送アプリだった。


 画面は目が痛くなるようなオレンジ色。そこには、胡散臭いルーレットが回り、ポップな英語で『Shop like a Dungeon Master!(ダンジョンマスターのように買い物をしよう!)』というスローガンが踊っている。


「その名も……『ハッピー・ラッキー便』」

「なんだこれ……。『初回限定・ポーション99%OFF』『ミスリル装備が無料でもらえるチャンス』……?」

 レンが眉をひそめる。安さを通り越して、もはや胡散臭く感じる価格設定だ。


「そうなんだよ兄さん。ここ、配送手数料も無料なんだ。しかも『どんなダンジョンでも配送料無料』って……。これじゃ僕たち、価格競争じゃ勝てないよ」


 その時、オフィスにアリスがドタドタと駆け込んできた。

「お館様! 見てくだされ! 拙者もそのアプリで、メイド道を極めるための『伝説の清掃用具』と『最高級シルクのメイド服』を注文したでござる!」


「お前も買ってるのかよ!」

「だって、アプリを開いたらルーレットが回って、1万円分のクーポンが当たったでござるよ!? 買わないと損でござる!」

 アリスの手には、黒色のビニール袋が握られていた。

 段ボールですらない。薄汚れたビニール袋に、宛名ラベルが適当に貼り付けられている。しかも、袋の端が破れて中身が見えているし、まるでゴミのようだ。


「……なんか、薬品みたいな変な匂いがしないか?」

 レンが鼻をつまむ。


「いざ、開封の儀!」

 アリスがビリビリと袋を破る。

 中から出てきたのは――。

「……なんだこれ」

 注文画面では『人間工学に基づいた、ミスリル合金製の万能モップ』と書かれていたはずの物体。


 実物は、割り箸のような細い木の棒の先に、薄汚れた綿が数本張り付いているだけの、百均の玩具以下のシロモノだった。

「……小さくないか? これ、フィギュア用か?綿棒?」

「ぬ、ぬおおおお!? 次だ、次! 『最高級シルク・ロイヤルメイド服』!」

 アリスが震える手で二つ目の包みを開ける。


 出てきたのは、シルクどころか、石油化学製品全開のテラテラしたビニール製の布切れ。しかもサイズがどう見ても子供用……いや、犬用だ。


「き、着れないでござるぅぅぅ! しかも、なんか石油臭い! 指で擦ったら黒いインクがついたでござるぅぅ!」

 アリスが絶叫し、その場に崩れ落ちる。


「……なるほどな。『画像はイメージです』の極致ってわけか」

 レンは呆れつつも、その梱包に見覚えがあった。


 雑な扱い、安っぽいビニール、そして独特の化学臭。


「……これ、『ハリー・エクスプレス』の包装と同じだな……」

 そこへ、外出していた拓実が戻ってきた。彼もまた、不機嫌そうに仏頂面をしている。


「……戻りました。……街道で、変な配送車を見ましたよ」

「変な車?」

「……オレンジ色のロゴが入ったボロいバンです。マフラーから黒煙を吹いて、信号無視して走ってました。……あいつ(サンバー)、あんな整備不良車と同じ道を走りたくないって言ってます」

 さらに、事務デスクの電話が鳴り響く。


「はい、ダンジョンイーツです。……え? 『ハッピー・ラッキーで頼んだポーションを飲んだら腹を壊したから、お宅の回復薬を至急持ってきてくれ』……ですか?」

 レンは受話器を置くと、ニヤリと笑った。


「どうやら、安かろう悪かろうの被害が出始めたみたいだな。……レイ、この『被害者の救済』こそが、俺たちの新しい仕事になるぞ」

「なるほど! 『本物』を届ける需要が生まれるってことだね!」

 謎の激安通販『ハッピー・ラッキー』。その背後に見え隠れする悪徳業者の影と、パチモン被害の拡大。


 ダンジョンイーツの戦いは、意外な形で始まることになった。


◆◆◆◇◇◇◆◆◆


 読んでいただきありがとうございます。


 毎日7時30分頃に更新予定です。ブックマークや、評価、応援して貰えると、モチベアップに繋がります。


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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 あ~…リアルならTEM○とかですね、この手口。 YouTub○でチャンネル登録してるYouTu○erさんが実際に身銭を切って闇を暴いてたなぁ…なんかやたら案件動画出してくれって鬱…
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