表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン・イーツ! ~戦闘力ゼロの俺、スキル【絶対配送】でS級冒険者に「揚げたてコロッケ」を届けたら、世界中の英雄から崇拝されはじめた件~  作者: たくみ
第五章 癖のある新入社員 編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/72

4:忍者、姫君と対面する…の巻

 救助した調査員たちをクルーザーに乗せ、俺たちはようやく安堵のため息をついた。


 潜水艇「しんかい12000」は役目を終え、デッキの隅で元の1/70スケールのプラスチック模型に戻っている。


「いやぁ、助かった。深海で焼肉弁当が食べられるなんて、今まで食った物の中で一番旨く感じたよ!」

 調査リーダーの男が、空になった弁当箱の隅に残っていた米粒を一粒ずつ大事そうに口に運びながら笑う。


「とりあえず、陸まで送り届けます。ユウキ、帰りの動力係は任せたぞ」

「えぇーっ! 私だけ!? 先輩、それブラック企業ですよぉ!」

「お前、カブのアクセル吹かすだけだろうが……」


 文句を言いながらも、ユウキは船内後方のエンジンルームへと降りていく。

 彼女のスキル『アイアン・ジョッキー』のおかげなのか、豪華クルーザーはスムーズに滑り出した。ユウキスキルは、なにげに優秀なのだ。本人はアレだけど……。


 俺とレイは、潜水艇での疲れもあり、潮風に吹かれながらデッキで泥のように眠り込んだ。

 ――数十分後。


「……んぱい! 先輩! 起きてくださいぃぃぃ!!」

 下層から響くユウキの悲鳴に近い叫び声に、俺は飛び起きた。


「どうしたユウキ、クラーケンでもでたか!?」

「違いますっ! み、水…水が入ってきましたぁぁあ!」

 慌てて船内を覗き込むと、カブのアクセルを吹かすカブのペダルの付近まで、海水が溜まっていた。


「 船底にヒビが入ってたみたいで、気が付いたら水が入ってきてました! 私のカブが止まっちゃうぅぅう!」

 見れば、客室ももじわじわと浸水が始まっている。


「アリス! 忍法だ! スーパーXで今すぐここを塞げ!」

 アリスは顔を真っ青にして、空っぽのチューブを逆さまに振った。


「お、お館様……それが、拙者、ミスを犯したでござる……。さっきの潜水艇の補修で、最後の一滴まで使い切ってしまったでござる! 」


「なんだとぉ!?」


「忍法にはクールタイムというものがあるでござる! 次のチューブが錬成できるのは……明日の朝まで無理でござるぅぅ!!」

「今更だけど、忍法というかスキルにクールタイムなんてあるのか?!」

「兄さん、一部のスキルにはクールタイムがあるらしいよ……」


 絶望的な宣告。その間にも、クルーザーは「ギギギ……」と不吉な音を立てて、少しずつ喫水線を下げていく。


「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! 私たち、せっかく助かったのにここで溺れるんですか!?」

 調査員たちもパニックになり、空の弁当箱や手近なバケツを持って、必死に水をかき出し始めた。


「レイ、俺たちも漕ぐしかないな……。

  調査員の皆さんは水を外へ!

 アリス、お前も水遁スイトンの術の準備してないで、水を掃き出せっ!!」


「御意にござるぅぅ!!」

「わああああ! か、カブがぁぁ!!」


 膝まで水に浸かった俺とレイで、必死に重いペダルを回す。


 調査員たちは、階段を駆け上がりながらバケツリレーで「イチ・ニ! イチ・ニ!」と水を吐き出す。

 豪華クルーザー。


 その優雅な外見とは裏腹に、実態は沈没寸前と化した船が、爆速で陸地を目指して海面を爆走していた。


「……見えた! 港だ!!」

「脚を止めるな! そのまま砂浜に乗り上げろぉぉ!!」


 ドォォォォン!!


 盛大な音を立てて砂浜に座礁したクルーザーから、俺たちは転がり落ちるように脱出した。


 砂浜に突っ込み、全員が泥と海水にまみれて力尽きていた。

「……アリス。次は、もっとしっかり作れ。絶対だぞ」

「……御意」


「そういえば……ロストアーカイブに、温泉があるって姉さんが言ってたよ」

 レイが呟く。姉さんとはカグヤの事だ。姉さんと呼ばないと、カグヤが怒るらしいのだ。


「お、温泉……!?」

 その言葉に、ユウキの死んだ魚のような目がカッと見開かれた。


「行きます! 今すぐ行きます! 塩水でベタベタの肌を、洗い流したいですぅぅ!」

「よし!みんなで温泉だ!!」


 レイも苦笑いしながら立ち上がる。こうして一行は、ボロボロの体のまま、拠点のロストアーカイブへと戻ることにした。


◆◆◆


 拠点であるロストアーカイブに戻ると、入り口でカグヤが待っていた。

「レン、お疲れさま。」

 レンは全員分のスポーツドリンクを用意しており、皆に渡していく。実に気が利く子だ、ユウキにも見習ってほしい。


「な、なな……生カグヤ様でござる!! 」

 アリスは、興奮のあまりその場に膝を突き、ガバッと平伏した。


「あああ、その画面越しでも伝わっていた圧倒的な正妻オーラ! 本物を前にすると、拙者、眩しすぎて直視できぬでござる……! まさにこれぞ『本物の姫』にござる!!」


「……何、この子。レン、新しい配達員は忍者なの? それともただの変質者?」


 カグヤが引き気味にレンを見るが、アリスの「オタク特有の早口」は止まらない。


「姫様! 拙者、お館様の配信のアーカイブはすべて三周ずつ、特にカグヤ様とお館様の痴話喧嘩回は十回ずつ見返しているファンでござる!

 今日からこの城に仕えること、ほまれの極み!!」

 し、城なんて何処にもないのだが……カグヤの所有するルナ・コート・レジデンスの事かな?


「……アーカイブを三周? 痴話喧嘩……?」

 カグヤの頬がわずかに赤くなる。


「……よく分からないけれど、とりあえず歓迎するわ。それよりレン、 早く、奥にある温泉に入ってきなさいな。

 ここの温泉は、水着を着ないと駄目なのよ。」

 そう言って、カグヤは俺たちに水着を渡してくる。温泉施設には、男湯女湯の区分けはされていない。


「 さあお館様、姫様の命に従い、一刻も早く身を清めに行くでござるよ!」

 アリスは、カグヤと直に言葉を交わしたことに涙している。俺と会った時は、そこまでの反応しなかったよな……


「カグヤさんも一緒にはいりましょーーよ!!」

 ユウキは、カグヤの手を引き、強引に引きずっている。

「ちょ、ちょっと!!ま、まってよ!恥ずかしいわよ!」

 ユウキは、俺に向けてサムズアップをしてくる。

 カ、カグヤの水着姿……、ユウキの奴、たまには良い事するな。


 何故か、アリスは鼻血を出していた。


◆◆◆◇◇◇◆◆◆


 読んでいただきありがとうございます。


 毎日7時30分頃に更新予定です。ブックマークや、評価、応援して貰えると、モチベアップに繋がります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ