1:新入社員が癖あり金髪美少女忍者だった件
◆ダンジョン配送中継拠点の会議室
レンは、目の前に座る自称ニンジャの金髪少女、アリス・グリーンを改めてまじまじと見つめた。
「……えーと、アリス。一次面接を担当したレイとユウキからは、君のスキルが今回の海底デリバリーの要になると聞いている」
「イエス! その通りでござるよレン殿!
拙者の忍術があれば、海底三千メートルも快適なクルージングでござる♪」
アリスはツインテールを揺らしながら、自信満々に胸を張る。レンは手元の履歴書に目を落とした。
「うちは実力主義だ。口だけなら誰でも言える。
今ここで、実際にそのスキルを見せてもらえるか?」
「御意でござる! では、ちょうどいい空き地があるから外へ出るでござるよ!」
一行は拠点の裏手にある広場へと移動した。アリスはリュックから、丁寧に箱詰めされた「1/80スケール・茅葺き屋根の古民家」のプラモデルを取り出した。
接着剤のはみ出しや、少し斜めに接着された障子など、アリスの不器用さが随所に滲み出ている作品だ。
「いざ! 魂魄具現、発動でござる! ニンニン♪」
アリスが印を組むと、プラモデルが淡い光を放ち、一瞬で巨大化した。
土煙が舞い、そこに出現したのは、重厚な茅葺き屋根を持つ立派な日本家屋だった。
「……マジか。本当に建ちやがった」
レンが驚き、柱を拳で叩いてみる。コンコン、という硬質な音が響いた。
「すごいな、この強度。普通の木材よりずっと頑丈そうだ」
「そうでござる! 拙者が具現化したものは、元のプラモよりも遥かに頑丈! 拙者が解除しない限り、ずっとこのままでござるよ!」
一行は興味津々で家の中へと足を踏み入れた。内部の間取りや畳の質感などは、アリスが作っていないはずの部分まで「本物っぽく」補完されている。
柱の質感は木目のように見えるが、触れてみると、プラスチックの滑らかさと鋼鉄のような硬さを併せ持つ不思議な材質だった。
「おっ、囲炉裏まであるじゃないか。本格的だね」
ユウキが感心して囲炉裏を覗き込んだが、すぐに首を傾げた。
「……あれ? 灰かと思ったらカチコチだ」
「どれ……本当だ。これじゃ火が起こせないな」
レンが指先で突くと、灰はふわふわした粉末ではなく、プラスチックの塊が「灰の形」をしているだけだった。どうやら、アリスが「灰をまぶす」という工程を端折ったか、あるいは彼女の認識不足で、表面的な形だけが再現されてしまったらしい。
「てへっ、そこはご愛嬌でござる! 拙者、不器用ゆえディテールには少しムラが出るのでござるよ♪」
アリスは照れくさそうに頭をかいた。
「なるほどな。基本は完璧だが、細かいところで『プラモ』としての限界が出るわけか……。」
出現した「プラスチック製の古民家」の縁側に腰掛け、レンは改めてアリスに向き直った。
「スキルについてはよくわかった。次は……君自身のことを聞こう。アリス、数あるギルドや配送業者の中で、なぜうちで働こうと思ったんだ?」
アリスはそれまでの茶目っ気のある表情を消し、スッと背筋を伸ばした。
「それは……レン殿、いえ、お館様の走りに、本物の大和魂、サムライを感じたからでござる!」
「……お館様?」
レンが眉をひそめるのも構わず、アリスは熱っぽく語り続ける。
「拙者はこれまで、たくさんの配信者の動画を見てきたでござる。でも、誰もがお宝や名声を求めてチャラチャラしているばかり。
……けれど、お館様は違った! どんな悪路でも、どんな強敵が相手でも、ただ『荷物を届ける』という目的のためだけに、一心不乱にペダルを回し続ける……。
そのストイックさ、まさに主君に忠義を尽くす孤高の武士そのものでござる! 拙者、一目惚れしたでござるよ!」
「いや、俺は別に誰かに忠義を尽くしてるわけじゃ……」
「謙遜は不要でござる! お館様のような真の日本男児の元で修行することこそ、拙者が忍者として大成する唯一の道だと確信した次第!
拙者のこの忍術、お館様の天下統一のために捧げる所存でござるっ!
どうか、おねがいするでござる!!」
アリスは畳の上に両手をつき、見事な土下座を決めた。
レンは隣でニヤニヤしているレイと、感銘を受けたように目を輝かせているユウキを見て、大きくため息をついた。
「……天下統一なんてするつもりはない。だが、その気概だけは受け取っておこう」
レンは立ち上がり、古民家を再度見上げる……
「いいだろう。採用だ、アリス。……ただし、その変な喋り口調は直してもらおうかな。」
「ニンともカンとも?!何故でござる!!、お館様!
目上の方には、この喋りで対応するのが礼儀だと、忍術仲間が話していたでござるよ!」
「いや、そんな話聞いたことないし……。誤った情報だな。
そうだな……、いいか、忍びは闇に紛れるものだ。そんな目立つ喋り方では、すぐにバレてしまうだろ?」
「な、なるほど!!たしかにその通りです!流石お館様……尊敬します!」
「その、お館様も止めてほしいんだけどな……」
「不可思議な……あぁ、殿とお呼びすればよろしいですか?!もしくは……将軍様?」
「お、お館様でいいです。」
後ろの方で、ユウキが声を殺して転げ回っているのが腹立つわ……
こうして、ダンジョン・イーツに新たな戦力?が加わった。
だが、感慨に浸っている時間はない。海底三千メートルで救助を待つ調査隊の命の灯火は、今も刻一刻と削られているのだ。
「よし。アリス、採用試験の続きだ。実際に船を出してもらおうか。」
「御意!私の力をお見せいたします!ニンニン♪
屋形船が良いかな~、白鳥ボート、帆船も渋いよな~、ポンポン船も良き……」
「普通のにしてくれ……」
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