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ダンジョン・イーツ! ~戦闘力ゼロの俺、スキル【絶対配送】でS級冒険者に「揚げたてコロッケ」を届けたら、世界中の英雄から崇拝されはじめた件~  作者: たくみ
第四章 ロストアーカイブ編

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8:タンデム自転車、再び

残り一分。


 レンの眼前に、ハリー社が展開した巨大な魔導障壁が、天を突く光の壁となって立ち塞がる。


「逃げ場はないぞ、運び屋! そのバッグの中身ごと、消え去れ!!」


 背後からは、数十台の魔導二輪車が放つ魔導弾の雨。爆炎がレンの背中を焼き、ハンドルを握る指先にまで熱気が伝わる。


 だが、レンの瞳には絶望の色はなかった。

「……アイザックさん。あんたの想い、ここで止めてたまるかよ!」

 レンは伝声管のスイッチを叩きつけた。


「レイ、ユウキ! 合流ポイントだ! 速度を落とさずに行くぞ、合わせろッ!」

『了解、兄さん! 今、死角から全力で滑り込むよ!』

 

 レンはあえてブレーキワイヤーを切り捨てる覚悟で、全体重をペダルに叩きつけた。


「おおおおおおおっ!!」

 ママチャリのチェーンが悲鳴を上げ、地面がタイヤで抉れる。

 レンは【完全配送デリバリーロード】が導き出した「障壁の接合部」魔力の歪みに向けて、弾丸の様な勢いで突っ込んだ。


 バリィィィィィィィンッ!!!


 大気を震わせる破砕音。


 魔導障壁がガラスのように粉々に砕け散り、その破片がレンの頬をかすめて飛ぶ。爆煙を突き抜け、ボロボロになりながらも速度を維持して突進するレン。

 そこへ、排気音と共に、カスタムされたスーパーカブを操るユウキと、その横を神速で駆け抜けるマウンテンバイクに乗るレイが飛び出した。


「先輩! 後の掃除屋は僕が全部引き受けます! ――前だけ見て、走ってください!」


 ユウキはカブを強引に横滑りさせ、追っ手の集団のど真ん中で白煙を上げるドーナツターンを決め、路地を封鎖する。


 一方、障壁を突き破った衝撃で激しく揺れるレンのママチャリに、レイがマウンテンバイクをピタリと並走させた。

 時速八十キロを超える超至近距離。互いのハンドルバーが触れ合い、火花を散らす。


「レイ、やるぞ!」

『うん、兄さん……! 【完全配送:連結形態タンデム・モード】、起動!』


 走りながら、二台の自転車が磁石のように引き寄せられた。ガチリ! ガチリ! と重厚な金属音が響き、眩しい閃光を放ちながら、走行の勢いを殺すことなくタンデム自転車へ変化する。時速は200キロを越えている。しかし本来起こるはずの、ドライバーへの強烈な風圧は、スキルの効果により無効化され、速度はぐんぐんと上がり続ける。


 二人の脚力が完全にリンクした瞬間、後輪から青い火花が噴き出し、タンデム自転車は音の壁を突き破るほどの勢いで地上へと続く外壁を垂直に駆け上がった。


 地上へ飛び出した二人は、そのまま止まることなく王都の目抜き通りを疾走し、冒険者ギルド本部の巨大な鉄門へと突っ込んだ。


「緊急配送だ! 邪魔する奴は撥ね飛ばすぞッ!!」


 タンデム車のままギルドのロビーに滑り込み、火花を散らしながらカウンターの目の前で急停止する。

 静まり返るギルド職員たちの前で、レンは汗を拭うこともせず、デリバリーバッグから重厚な「特殊搬送ケース」を叩きつけた。


「これは三十年前、アイザックさんが命を懸けて運ぼうとした『ハリー・エクスプレス社』の犯罪証拠だ! 治療薬のアンプルと、人体実験の全記録が入っている! 今すぐ検収し、全土に指名手配を回せ!」


 レンの気迫に押され、ギルドの上層部が即座に動く。鑑定の結果、それがハリー社の隠蔽し続けてきた最悪の罪状であると判明した瞬間、ギルド長が断腸の思いで号令を下した。


「……これは人とダンジョンへの冒涜だ。直ちに警察と、ギルドの私兵を動員せよ!

  ハリー社を包囲し、社長以下、関係者全員を国家反逆罪で拘束しろ。抵抗する者は射殺を許可する!」


◆◆◆

 

 豪華な移動執務室で勝利のシャンパンを開けようとしていたハリー社長の元に、警察と武装したギルド憲兵隊が、扉を破壊してなだれ込んできた。


「な、なんだ貴様らは! 私は業界の王、ハリー・エクスプレスの――」


「ハリー、貴様の犯罪行為が明らかになった。証拠も十分に揃っている。……今回こそ言い逃れはできないぞ!!」


◆◆◆


 数日後


 夕暮れの丘の上。

 合流した「月詠」のメンバーとレイ、ユウキが、やり遂げた表情でレンの周りに集まっていた。


「みんなお疲れさま。今回も無事に帰ってこれて何よりだったわ。損害は、バルトの石化した鎧と盾ぐらいかしら?フフッ」


「笑えねえって! しかもあの後しばらくノーパンで戦ってた俺の勇姿、誰も褒めてくれねえしよぉ!」


「……キモかっただけ」

 シオンの辛辣な突っ込みに、一行の間に今日一番の笑い声が弾ける。


 カグヤがそっとレンの腕を抱きかかえ、満足げに微笑んだ。


「ねぇ、レン。次はどこへ行くの? 私たち『月詠』のメンバーは、あなたを全力でサポートするわよ?」


 レンは新しい依頼通知が届いた端末を眺め、苦笑いを浮かべる。

「いやいや、こんな依頼は滅多にないだろ……」


「でもロストアーカイブと地上を結ぶ定期配送は、ダンジョン・イーツの独占契約が結ばれたわよね」


 ロストアーカイブの存在は、住人の希望により、もう暫く秘密にされるらしい。そして、街からの希望もあり、俺たちが日用品などの物資を運ぶ独占契約を結んだ。

 そして、今回の功績が認められ、レイの配送業免許も返還されて、我が社の配送員は3人になった。


 そして、また何やら厄介な配送依頼が飛び込んで来ているらしい。俺が望むのは、もっと普通の配達なんだが……

◆◆◆◇◇◇◆◆◆


 読んでいただきありがとうございます。


 毎日7時30分頃に更新予定です。ブックマークや、評価、応援して貰えると、モチベアップに繋がります。


よろしくお願いします!

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