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ダンジョン・イーツ! ~戦闘力ゼロの俺、スキル【絶対配送】でS級冒険者に「揚げたてコロッケ」を届けたら、世界中の英雄から崇拝されはじめた件~  作者: たくみ
第三章 闇デリバリー 編

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2:囮の依頼と届かない不在通知

 闇デリバリー、ギルトを通さず、無許可で配達業務をする行為だ。存在するとは聞いていたが、現実として俺の目の前に立ちはだかったあの日から、俺は確信に近い予感を抱えていた。


 あの漆黒の自転車を操っていたのは、レイだ。

 レイは、ダンジョン氾濫時に行方不明になった弟。救い出したいが、次に何時出会えるかも分からない。


 今の俺にできるのは、公認の運び屋として正規の依頼をこなすことだけ。

 ……そう思っていた矢先、ギルドの窓口で職員の釘山が俺を呼び止めた。


「天野君、少し耳を貸せ。……例の闇デリバリーだが、警察も手を焼いているんだが、連中の流通経路が一つ特定された」

 釘山が差し出したのは、端末に表示された奇妙な配送依頼だった。


 依頼主は匿名。届け先は、第40階層の廃墟エリアにある『名もなき祠』。

 運搬物は、魔力を遮断する特殊な重合金属のケースだ。


「これは表の依頼を装った囮だ。闇デリバリーの連中が、物資の受け渡しに使う中継ポイントの一つだと睨んでいる。

 ……レン、君にこの依頼を受けてほしい。そこで彼らの尻尾を掴むんだ」

「……分かりました。引き受けます」


 俺は迷わず頷いた。もしそこにレイが現れる可能性があるのなら、行かない理由はない。


◆◆◆


 第40階層、通称『忘却の伽藍ガラン』。


 ここはかつて高度な魔導文明が栄えた都市の跡地だと言われている、今では強力なアンデッドや魔導ゴーレムが徘徊する、最高難度の危険地帯だ。


「先輩、なんかここ、空気悪すぎません? あたしのハンターカブのライトも、魔素が濃すぎて先が見えにくいですよ……」


 ユウキが不安そうにカブの出力を絞る。彼女の【ハンターズ・パス】で道を作ってはいるが、霧のような魔素が視界を奪い、運転しづらい。


「……来るぞ。ユウキ、速度を上げろ!」

 俺の【絶対配送】が表示するナビ画面に、背後から接近する異常な魔力反応を捉えた。


 一つ、二つ……いや、五つ。


 闇の中から現れたのは、粗末なマウンテンバイクの集団だった。だが、乗っている連中の目は虚ろで、首筋にはレイと同じ、あの不気味な紫色のチップが埋め込まれている。


「……闇バイトの連中か!」


「オイ……ソノ荷物……ヨコセ……。ソレ、俺タチノ……報酬……」


 彼らは自我を奪われ、ただ「運ぶ」という命令だけを遂行する操り人形と化していた。彼らが一斉に、魔力を無理やり絞り出した異様なスプリントで襲いかかってくる。


「ひゅーーーぅ!ウチらに向かって来るなんてバカな奴らめ!! 邪魔だどけどけぇ! 先輩の邪魔をするなら、まとめてアスファルトにしてやるよぉぉ!!」


 ユウキがハンターカブをウィリーさせ、フロントタイヤで先頭の男を牽制する。


 俺はその隙に、最短ルートを突っ切った。

 囮の荷物を奪いに来たこいつらは、レイじゃない。

 俺の心がザワツかない……


 ついに、目的地の祠が見えたその瞬間――。


 ――ッ!

 凄まじい衝撃波が、俺のデリバリーランサーのすぐ横を通り過ぎた。

 見上げた先、祠の屋根の上に、あの漆黒の自転車が立っていた。


「……レイ!お前、レイなんだろ?!」

 俺は叫んだ。だが、漆黒のライダーは俺に一瞥すらしなかった。ただ、その場に何かを落とした。

 それは、俺たちが運んできた囮の荷物を『回収完了』とするための、偽造されたギルド印だった。


「待て! レイ! 俺だ、兄貴だ! 忘れたのか!!」


 俺はペダルを踏み込み、祠の階段を駆け上がる。

 だが、漆黒の自転車が放つ黒い魔力の煙が、周囲を包み込んだ。


 【虚空踏破ヴォイド・ライダー】。

 次の瞬間、彼は空間を削り取るような加速を見せ、崖下へと身を投げた。


「行かせるかぁぁ!!」


 俺もまた、崖へと飛び出す。

 だが、霧の向こうに消えていくのは、音もなく、光さえも置き去りにする異次元の加速。


 レイの背中が、また遠ざかっていく。

 必死に追いかけた先には、ただ、静まり返った深い谷底が広がっているだけだった。


◆◆◆


「……逃げられましたね」

 ユウキが追いつき、カブのエンジンを止める。

 俺は、レイがいたはずの祠の屋根を見上げ、拳を握りしめた。

 接触はできなかった。だが、確信した。


 彼はあそこにいた。俺の言葉に、一瞬だけ走りがぶれた、あいつのチャリの轍が物語っている。


「先輩……これ」

 ユウキが地面に落ちていた物を拾い上げる。

 それは、小さな、薄汚れた布切れだった。

 

 ……あの日、大氾濫の時にレイが持っていた、俺たちの母親の形見のハンカチ。


「レイ……。お前、やっぱり……」


 弟を救い出すためには、ただ追いつくだけじゃ足りない。


 俺の中で、静かな怒りが燃え上がっていた。


「ユウキ。次の仕事は、もっと過酷になるぞ」

「……あったりまえですよ! あたしたちの道を汚す闇デリバリーなんて、全員ハンターカブで轢き潰してやりますから!」


 俺たちは再び、自転車に跨った。


「兄ちゃんがお前を救ってやるからな!」

◆◆◆◇◇◇◆◆◆


 読んでいただきありがとうございます。


 毎日10時頃に更新予定です。ブックマークや、評価、応援して貰えると、モチベアップに繋がります。

 あまり多く応援されると、ストック貯まってもいないのに、ついつい数話投稿してしまいますので、よろしくお願いします。チラチラ


よろしくお願いします!

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