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ダンジョン・イーツ! ~戦闘力ゼロの俺、スキル【絶対配送】でS級冒険者に「揚げたてコロッケ」を届けたら、世界中の英雄から崇拝されはじめた件~  作者: たくみ
第二章 ダンジョン・イーツ転換期 編

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6:勝利の祝杯とママチャリの未来

 氷の雨が、内海の静寂に溶けていく。


 俺はデリバリーランサーをゆっくりと漕ぎ、観測ドックへと帰還した。背後のリヤカーでは、カグヤが既に戦闘用の氷殻を解き、いつもの優雅な純白のドレス姿で荷台に腰掛けていた。


「先輩! お疲れ様です! もう、最高すぎて語彙力が死にました!」


 真っ先に駆け寄ってきたのは、タブレットを抱えたユウキだ。画面には、狂喜乱舞する一千万人の視聴者のログが滝のように流れている。


「ああ、なんとかなったよ。……ダンジョン庁はどうなった?」


「もうパニックですよ。安全と言い切っていたエリアに災害級が出たんですから。ハリー社も謝罪金の一億円を即決済して、一目散に逃げていきましたね!」


 一億円。一生を左右する大金だが、奴らにとっては小銭なのだろうか。

 隣でその声を聞いていたカグヤは、ふっと冷ややかに笑った。


「最後まで役に立たない奴らだったわね。でも――今回ばかりは、あの無能たちに感謝してもいいかしら。


 おかげであなたと私で、世界中の度肝を抜くことができた。それこそが、何物にも代えがたい報酬ね」


 カグヤはリヤカーから優雅に降りると、俺の耳元で小さく囁いた。

「あなたとの共闘、とても刺激的で楽しかったわ」

 小悪魔的に微笑む彼女に、ドクンと心臓が跳ねる。


「さあ、いつまでもこんな湿気た場所にいても仕方ないわ。ユウキさんも。私の行きつけを貸し切らせたわ。……レン、もちろん今夜は付き合ってくれるわね?」

「正直疲れてるが、それ以上に高ぶって寝れそうにない。……さあ、行こう」


◆◆◆


 こうして俺たちは、査問官に囲まれ青い顔で対応に追われる堂島たちを置き去りにし、横浜の夜の街へと繰り出した。カグヤが案内したのは、彼女の拠点に近い古びた、だが隠れた名店として知られる和食居酒屋だった。


「カグヤ、こういう店も来るんだな」

「失礼ね。あなたに合わせたのよ。それに、こういう場所の方が……落ち着いて話ができるでしょう?」


 貸し切られた店内で、ドレス姿の聖女が慣れた手つきで割り箸を割る。なかなかシュールな光景だ。


「で、レンはその一億、何に使うつもり?」

 刺身を口に運びながら、カグヤが何気なく尋ねてきた。


「設備投資もしたいし、ユウキにボーナスもやらんとな。……それから、貯金だ。行方不明の弟、レイの手がかりを捜すための資金にしたい」

 俺の言葉に、モツ煮込みを取ろうとしたカグヤの手が止まる。


「……弟さんを?」

「ああ。あいつ、数年前のダンジョン氾濫の時に消えたままでな。海外の闇オークションに流れた希少な遺物や、特殊な情報屋を当たるには、どうしてもバカげた額の金が必要なんだ」


 重い沈黙が流れるかと思ったが、カグヤは優しく微笑んで、俺のわき腹をツンと突いた。


「いい目的じゃない。……でも、少しは私との旅行とか、結婚式費用とか、そっちも考えてくれていいのよ?」

 そう言って、食べ終えたモツ煮込みの皿を置き、焼き鳥のネギマを食し、ボンジリ、コーンバター、肉じゃがを完食していた。めっちゃ喰うやん。


 「魔法を使うとカロリーを消費するのよ!」

 ぷくっとほっぺを膨らませたカグヤを、笑顔で見つめていると……


「先輩! カグヤ様! 私も居ること忘れないでください!!イチャつくのは二人っきりの時にして、今日は祝勝会ですよ! 飲んで食べて、パーッとやりましょう!」

 甘々な空気に耐えられなくなったユウキが、強引にジョッキを差し込んできた。


「ふふ、そうね。今夜は勝利を祝いましょう。……乾杯!」

「ああ、乾杯!」


 そこからは、堰を切ったように盛り上がった。

 カグヤは「今日は無礼講よ!」と高級な日本酒を次々と注文し、ユウキは「先輩の海面ドリフト、あれマジで物理法則バグってましたよ!」と、揚げ出し豆腐を頬張りながら興奮気味に語る。


「ところで、先輩のチャリもそろそろ魔改造しませんか? ママチャリ卒業ですよ!」


「チャリなー、あれ俺のスキルだからパワーアップとかできんのよな……」


「え? 私のカブもスキルですけど、パーツを付ければちゃんと反映されますよ。今度、最新のパーツとか試してみましょうよ!」


「まじか……気分的に磨いたり、油はさしてただけど

……」

「あははは! 真顔で必死にママチャリ漕いでる先輩、正直ギャグかと思ってましたもん!」

「ぷ……ププッ……レン、私は格好いいと思ってるから……プフッ、大丈夫よ!」


 笑い転げる二人に、俺は少し拗ねて言い放った。

「お前らな……。知ってるか? あのママチャリ、変速機付いてないんだぞ?」


 「「ブボッ!!」」

 ユウキが酒を吹き出し、カグヤも平静を装えずテーブルをビチャビチャにした。


「シングルスピードでリヴァイアサンから逃げ切ったんですか!? 変態だ! 先輩、変態すぎます!!」

「……もう、初売りで最新のパーツを買いに行きましょう。見ていられないわ……」


 その後、腹を抱えて笑い転げる二人から、涙ながらに「馬鹿にしてごめん」と何度も謝られた。横浜の夜は、騒がしくも温かく更けていった。

 まぁ、レンは何時までもママチャリ乗ってると思います。

 ちなみに、ユウキのカブは、ママチャリが進化した姿になる予定でした。




 読んでいただきありがとうございます。


 毎日10時頃に更新予定です。ブックマークや、評価、応援して貰えると、モチベアップに繋がります。


よろしくお願いします!

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