表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン・イーツ! ~戦闘力ゼロの俺、スキル【絶対配送】でS級冒険者に「揚げたてコロッケ」を届けたら、世界中の英雄から崇拝されはじめた件~  作者: たくみ
第二章 ダンジョン・イーツ転換期 編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/45

4:1000万人の証人

『きたああああああああ!!』

『え、待て。今チャリで海に飛び込まなかったか!?』

『凍った!? 走ってる! 海の上をチャリが爆走してるぞ!!』

『物理法則さん、お亡くなりになりましたwww』

『ユウキちゃんの魔改造えぐいww』

 浮遊魔眼が捉えるコメント欄の加速が止まらない。


 俺は瞬間的に時速五十キロの速度に達し、狂ったようにペダルを回す、時速はすでに85キロを超えている。

 足元では常に氷が割れる「メキメキ」という音が響いている。コンマ数秒の接地。そのわずかな間に超高密度氷を形成し、それが割れる前に次の接地へ。


 一方で、ハリー社のドローン部隊も食い下がっていた。

 だが、天井が低いため、ドローンは高い位置へ逃げることができない。波が砕けるたびに巻き上がる凄まじい飛沫と、逃げ場のない突風がドローンの動きを阻害する。


「ハッ、計算通りにいかないのがダンジョンだって、教えてやるよ!」

 前方から、このダンジョンの名物であるグラビティ・ウェーブが迫ってきた。

 天井の岩盤と海面が共鳴して生まれる、高さ十メートルを超える水の壁。


 ドローンのAIは、これを「回避不能な障害」と判断し、一斉に上昇。だが天井の岩盤に阻まれ、数機が火花を散らして墜落していく。



『ドローン全滅の予感www』

『ハリー社の株価、まただだ下がりじゃねーか?』

『おい見ろ! レンが波に突っ込むぞ!? やけくそか!?』


絶対配送デリバリー・ロードルート構築!」

 俺の視界には、垂直に近い波の斜面を駆け上がる黄金のラインが見えていた。


 俺は斜面へと突っ込む。通常なら水に飲み込まれて終わりだ。だが、俺のタイヤが触れる瞬間、絶壁のような波の腹がクリスタルの坂道へと姿を変える。


「うおおおおおおお!!」

 重力を無視するように波の腹を駆け上がり、その頂点に達した。


『垂直走行きたあああああああああ!!』

『重力仕事しろwww』

『もはやなんでもありかw』


 浮遊魔眼が俺の表情をアップで捉える。

 波の頂点。俺は、後輪のリムに、ユウキが装着した、魔力噴出型のブースターを起動させた。


 ドォォォォン!!


 爆音とともに、ママチャリが空を飛んだ。

 波の頂点から次の島まで、数百メートルの大ジャンプ。

 その下を、右往左往するドローンたちが波に飲み込まれていくのが見えた。


 着地と同時に、再び海面を凍らせて疾走する。

 目的地、第五島の観測基地が見えてきた。


「フィニッシュだ……!」


 俺はドックに乗り上げ、勢い余ってコンクリートの床にスライディングしながら停止した。

 タイヤからは白い煙が上がり、役目を終えた魔石の粉末がサラサラと砂になってこぼれ落ちる。


◆◆◆


「……信じられない……」

 モニター越しにレースを見ていた堂島が、膝から崩れ落ちるのが見えた。


 監査官の釘山も、顔を真っ青にして言葉を失っている。

「AIの計算によれば、生存確率は……ゼロだったはずだ。波の斜面を走るなど、狂気の沙汰だ……!」


「……はぁ、はぁ……。計算だけじゃ超えられない物があるんだよ。」


 俺はデリバリーランサーを降り、荒い息を吐きながら、預かっていたGPS発信機をドックの係員に手渡した。

 脚の筋肉が熱を持ち、視界がチカチカする。だが、心地よい達成感があった。

 背後では、ボロボロになったハリー社のドローン数機が、遅れて力なく着陸している。堂島の「ありえない……」という絶望の呟きが、静まり返ったドックに虚しく響いていた。


 「お疲れ様、レン。……本当に、信じられない人ね」

 カグヤが歩み寄ってくる。彼女の白いドレスは、俺の激走で跳ね上げた氷の粒子を浴びて、ダイヤモンドダストのようにキラキラと輝いていた。


「……すごかったです、先輩! あの速度で波の壁を登るなんて……私、一生ついていきます!」

 ユウキも目を輝かせて駆け寄ってくる。その手には、視聴者数が一千万人に達しようとしているスマート端末が握られていた。



『伝説の目撃者になったわ……』

『ハリー社、完全敗北。一億確定おめでとう!』

『自転車で海って走れるんだな……俺も明日から自転車通勤にするわ』

『やめとけ!人間には無理だ。』

『おめでとーーーー!!』


 コメント欄が祝福と困惑で埋め尽くされる中、カグヤが俺の正面に立った。

 彼女は俺の泥だらけになったサイクルジャージの襟元を、少しだけ乱暴に引き寄せた。


「カグヤ……?」

「……さっきの、覚えてる? あなたが言ったこと」

 彼女の顔が、かつてないほど近くにある。


『あなたが言った、俺を選んだことが、世界で一番正しい選択だったってこと……

 証明されたわ……文句のつけようがないくらいにね。

 だから……これは、あなたが、私を選んでくれたことへの感謝の気持ちよ」


 え――?

 俺が聞き返すよりも早く、唇に柔らかく、そしてほんの少し冷たい感触が触れた。


 カグヤが、俺にキスをした。

 浮遊魔眼のカメラが、その瞬間を逃さず、至近距離から全世界へと高画質で中継する。


「なっ……!?」

 隣でユウキが端末を落としそうになり、係員たちは石のように固まった。

 そして。

 一千万人が見守っていた配信のコメント欄が、高速で流れていく。


『はああああああああああああああああああああああ!?!?』

『今やった! カグヤ様が! 自分からいったああああ!!』

『全画面真っ白で何も見えねえええ(絶叫)』

『おい運び屋あああ!! そこ代われ! いや死ね! いやおめでとうクソがああ!!』

『【速報】日本最強の氷姫、陥落』

『一億とカグヤ様のキスとか、前世でどんな徳を積んだんだよ!!』


 サーバーが悲鳴を上げ、流れる速度が速すぎてコメントが追えなくなる。


 カグヤは顔を真っ赤にしながらも、勝ち誇ったような笑みを浮かべて、カメラを指差した。


「……文句があるなら、今のレンより速く走ってから言いなさい。この男は、私が選んだ男なんだから!」


 その宣言が、新たなスパチャの嵐と罵詈雑言、そして祝福を呼び込む。


 そして、きりっといつもの氷の聖女の顔に戻って堂島たちを睨みつけた。


「さて。約束通り、公式な営業権の保証と、賞金一億……いただいてもいいかしら? 配信の視聴者が、証人になってくれるわ」


 堂島は苦虫を噛み潰したような顔をしたが、これだけの証拠を突きつけられては、もう逃げ道はない

「……認めましょう。天野レン、あなたの『安全性』と『技術』は、我々の想定を超えていた」

 彼は忌々しそうにタブレットをしまい、足早に去っていった。

 勝利の余韻に浸る俺の隣で、カグヤがこっそりと耳打ちする。


「……やったわね。これで、あのお役所連中の鼻をあかしてやれるわ。スカッとしたわよ、レン」


 その言葉に、俺は初めて、全身の力が抜けるような安堵感を覚えた。


 しかし。

 そんな俺たちの背後で、横浜ダンジョンの海の波の動きが止まった。

 不気味な静けさが辺りを覆う。


 海底から、巨大な、あまりにも巨大な影が浮上してくる。


「……レン。後片付けが残ってるみたいよ」


 カグヤが腰の剣を抜き、鋭い視線を海面へ向ける。


 どうやら、勝利の祝杯を挙げる前に、もう一仕事こなさなきゃならないらしい。





 読んでいただきありがとうございます。


 毎日10時頃に更新予定です。ブックマークや、評価、応援して貰えると、モチベアップに繋がります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
こんばんは。明けましておめでとうございます!今年も宜しくお願い致しますm(_ _)m おめでとうレンくん!末永く爆発して下さい!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ