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ダンジョン・イーツ! ~戦闘力ゼロの俺、スキル【絶対配送】でS級冒険者に「揚げたてコロッケ」を届けたら、世界中の英雄から崇拝されはじめた件~  作者: たくみ
第一章 ダンジョン・イーツ開業 編

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13/25

13:それでも、俺のチャリは止まらない!

 この階層のヤバさは、暑さでも寒さでもない。この二つの温度が複雑に絡まる場所があり、なにも考えずにそこに触れると、鉄がガラスのように砕けてしまうポイントがあることだ。


 さらには、温度調整も難しい。灼熱の気温かと思いきや、その数分後には、極寒の寒さがやってくる。その繰り返しだ。いかにハイテク機器をもってしても、システムの負荷は計り知れない。


 とはいえ、俺には『絶対配送デリバリー・ロード』がある。

 絶対配送は、俺が目的地に絶対にたどり着ける最短ルートを自動的に示してくれる。もちろん無茶なルート設定ではない。その場所の状況に応じた、最も安全なルートも設定可能だ。


 実はこの階層には、安全に聖域へとたどり着ける道が存在している。それは、熱波と寒波が存在することによって起きる「炎の竜巻」の中心、竜巻の目とも言える場所だ。


 もちろん、全ての竜巻が聖域へと向かうわけではない。複数発生している竜巻の中のひとつだけが、ゴールへ向かっていく。


 絶対配送が導き出したルートは、正直「バグってんじゃないか」と疑うものだった。まず、指定のポイントに向かい、そこで15分待機する。

 それが、絶対配送の導き出したルートだったのだ……本当に大丈夫か?


◆◆◆


 ハリー・エクスプレス社は、順調に聖域へと向かっていた。だが異変は、ゴールまで残り5キロ地点、魔力濃度が高い『竜の喉仏』と呼ばれるエリアで起きた。


「……アイヤー! 警告! 警告アル!」


 先頭を走るエースライダーのインカムに、警報音が鳴り響く。


「なんだ!? 結界の出力が勝手に上がっていくネ! 制御できないヨ!」

「お、俺のバイクのフレームに亀裂が出来てるヨ!」


 ハリー・エクスプレス社の展開する結界は、確かに強力にこの階層の温度変化からドライバーとバイクを守っていた。だが、高負荷で使用し続けた結果、システムが悲鳴を上げていたのだ。


 さらには、瞬間的に変わる温度変化への対応に遅れが生じ始めた結果、徐々に始まっていたバイクの亀裂が、ついに目で見てわかるほどに現れていた。


「熱い! エンジンがオーバーヒートしてるヨ! いったんエンジンを――」

 一瞬で大爆発が起こった。


 龍脈エンジンは、大気中の空気と魔力を高圧縮して爆発させ、推進力を得る。しかし、想定以上の魔力濃度のせいで異常燃焼が起こり、亀裂により耐久力の落ちていたエンジンは、一気に爆発を起こした。


 そもそも、この龍脈エンジンは今回初めて実践投入されたものだ。テスト走行もろくに行わず、人命を軽視し投入された結果がこれだ。


 爆発を免れたバイクも、エンジンの再始動は不可能だった。


「降りて押すネ! 何としてもたどり着くアル!」

「無理ヨ!! バイクなしじゃ荷物は運べないヨ!!」

「無理は通用しないヨ! この任務に失敗したら待ってるのは……粛清よ……」

「お、俺は逃げる!!」


 彼らが罵り合う中、その数十メートル横を――。


 チリンチリーン。


 涼やかな鈴の音が、通り過ぎた……。

 ような気がしたが、渦巻く竜巻の轟音で、なにも聞こえるはずがない。


「と、ともかく聖域まで行くしかないアル。バイクのエンジンが止まってしまっては、この結界発生装置もそのうち止まるヨ……」

「な……ッ!? バッテリー残量は……くそ! 走れば間に合うか……」

「聖域で、救援を呼ぶアル!」


◆◆◆


 聖域までたどり着けたのは、わずか4人だけ。半数以上の命が失われた。

 そして彼らは、視線の先にいた人物を見て驚愕した。


「バ、バカな……! なぜ貴様がここにいる!? その貧弱な装備で、この階層で無事なわけないヨ!」


「アンタらは機械に頼りすぎだ。ダンジョンの中では、様々なことが起こる。それを解決できるのは、結局、人の知識と経験だけなんだよ」


『ハリー・エクスプレスの看板、初日で炎上で草』

『一億円のバイクがただの鉄屑かよ。ダンジョンを舐めすぎだろ』

『絶対配送のルート、マジでバグだろwww 竜巻の中を無傷で移動とか聞いてないwww』

『ハリー社の連中、あれだけ大口叩いておいて、このザマかよwww』

『ざまぁみろハリー! 数と金だけでダンジョンは支配できねえんだよ!』


 配信画面は、歓喜のコメントで埋め尽くされた。


 ◆◆◆


 俺が聖域にたどり着けたのは、実に不思議な現象のおかげだった。

 ポイントに向かい15分待つと、俺を中心に空気の渦が発生し始めた。そのすぐ後に、再びルート案内が始まった。

 台風の目のようなものが渦の中心に発生し、周りの景色は炎が渦巻く地獄絵図だが、俺が進んでいるルートは穏やかで、なんとも不思議な気分だった。


 俺は聖域にごろごろ転がっている結晶を数個、鉛のボトルに放り込むと、キツく栓をしてデリバリーバッグに収めた。


 さて帰るかと思ったが、ハリー・エクスプレスの配送員たちに目が止まる。


「おまえら、帰る手段あるのか?」

「……今、救助要請はしてるけど、いつ来るかわからないし、そもそも来れるのかすらわからないヨ……」


「仕方ないな……。――『デリバリー・キャリア』!!」


 レンが叫ぶと、愛車にリアカーが連結される。


「さあ、このリアカーに全員乗れ。ゲート前まで連れて行ってやる」

「私たち、あなたの敵アルよ?」

「あー、でもまあ、勝手に死なれて困るしな。おまえらのやり方は気に入らないけど、殺したいほど恨んでるわけでもない。実際、困ってるだろ?」

「すまないアル……」


 ◆◆◆


 地上ゲート――


 ハリー社のスタッフたちが用意していた祝勝会場は、お通夜のように静まり返っていた。

 現れたのは赤いバイクではなく、無傷の状態でリアカーを引いたママチャリだったからだ。

 キキーッ!

 レンがブレーキをかけ、錬金術師パラケルススの前で止まる。



『おい待てwww 一億円のマシンで乗り込んだハリーエクスプレスの連中が、ママチャリのリアカーでドナドナされてるぞwww』

『ハリーエクスプレス、大口叩いてたくせに、今は全員リアカーで借りてきた猫みたいになってて草』

『レン君さ、さらっと「デリバリー・キャリア」とか言ってるけど、あの重量引きながら第65階層を逆走する脚力、人間やめてない?』

『恒例の嘔吐はなかったなwww』

 配信のコメント欄も、俺の到着に盛り上がる。


「……お届けものは、こちらでよろしいですか?」

 レンがバッグを開く。中から取り出された鉛のボトルには、膨張による変形もない。

 パラケルススは懐から丸メガネを取り出し、鉛のボトルを観察し始めた。鉛のボトルの状態を確認できる錬金術で作成されたメガネらしい。


「……完璧じゃ。内圧の揺らぎすら微塵も感じられん。小僧、どうやってこいつを運んできた?」

「いつも通りに運んだだけで、特別変わったことはしてないですよ」


 パラケルススは満足げに笑い、レンが差し出した伝票に受領印を押した


 ハリー・エクスプレス社の部隊は終始無言で、俺を一瞥したあと、待機していたバンに乗り込み、この場から去っていった





 読んでいただきありがとうございます。


 毎日10時頃に更新予定です。ブックマークや、評価、応援して貰えると、モチベアップに繋がります。


よろしくお願いします!

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