静まり返った昼下がりの学校
「ねえ、一緒についてかなくて大丈夫?」
「何スか。学校くらい1人で行けるっスよ」
別れ際にそんな言葉を交わす2人と、
「なんだよ今まで学校行けてなかった癖によく言うよなー」
その空気に水を差す1人の男。まあ峯と神栖、そしてそれに水を差しているのが本宮なのだが。彼らは今池袋駅構内にいる。
「じゃあさ、連絡先交換しよ。私とバンちゃんの。で、今日の夜に連絡して結局学校行ってなかったら2人でしこたま怒りの長文メッセ投下」
「おっ良いじゃん。だけど長文考えんの怠いからちゃんと学校行ってくれな?」
「わかってるっスよ」
こうして神栖の友達欄に峯と本宮の名が刻まれたのだった。ちなみに2人が友達となるまで友達欄に誰1人として名前が無かったのはここだけの話。
だって学校行ってないんだもの。
しょうがないじゃないか。
「とにかく、今日が無事に終わったらメッセちょうだいね?あと寂しい時も連絡をしても良いものとする」
「なんだよそれ。まあこうやって知り合った訳だし俺も気になるし、俺にもなんかメッセージくれ。結果がわかるものであればスタンプでも良いものとする」
「なんなんスか2人して」
神栖は2人に内心呆れながらも、ほんの少し笑みを浮かべた。
「おっ神栖君初スマイルゲット。君笑ってた方が良いって。似合ってるよ」
「まあな。俺の次にイケメンだしな神栖君」
「えー、諸々の評価点加えれば神栖君の方が断然上ですよ」
「断然って失礼だなあ!?」
ぷふっ………ははは。
2人の光景が面白かったのか神栖はただ、小さく微笑んだ。
彼のその姿が、今はとても嬉しく感じて、3人は笑みに包まれる。
「そうそう、笑ってればそれだけで幸せになれるってもんよ」
「今の名言だな」
「ですかぁ?額縁に飾ってもいいですよ」
「やらねえよ」
「あの、今日はどうもありがとうございました。お陰で吹っ切れた気がするっス」
「よいよい。骨折り損にならなくてよかったよ。また何かあったら連絡するからこれからよろしくな」
「私もね!」
こうして駅の改札前にて神栖は2人と別れた。
彼を見送った後の2人はと言うと―――――
「あ、今日バー休んでいいですか?」
「んぁ?まあいいけどよ。なんか用事でもあんのか?」
「まあね?」
「まあいいや。また今度な」
そうして神栖と別れて間も無く峯と本宮も帰り路についた。そんなところで峯はある人物に電話をかける。
「あ、パイセン?神栖君学校行くってー。多分これから来ると思うから対応お願いしまーす」
『本当!?昨日の今日でありがとうね。そうだそうだ。あずちゃんまた新しいケーキ作ってるみたいだからウチおいでよ。ケーキパーティしよー』
「あ、そうそう。あずちゃんのことなんだけど、実は私に1つ良い案がありまして……」
『―――?』
―――――――――――――――
それから数十分が経った頃だろうか。時刻は15時40分。照りつける日差しの下に佇む、神栖が在籍する高等学校に彼は辿り着いた。
思えば今日は随分と濃い1日を過ごしている……そんなことを考えていた神栖だったが、ふと校門前に目を向けると小柄ながらも堂々と仁王立ちする1人の女性の姿。
彼女は神栖を目にすると、手を振りながら駆け寄ってきた。
「やあ!神栖君だよね。私のこと覚えてる?君の在籍するクラス2年3組の担任、那須です」
「まあ顔は覚えてますよ。何日かは普通に通ってましたし」
「よかった」
すると那須は神栖の顔一点に覗き込む。数秒の沈黙が流れた後、彼女は何かに納得したように、
「ふーん。………確かに」
「―――――?」
その言葉の意味がわからない彼は困惑の表情を見せるが、
「気にしないで、こっちの話ー。それよりもお話あるから、中入ろっか」
そう彼女は言葉にすると、おいでと手招きのジェスチャーをしながら神栖を学校内へ案内する。
“こっちの話”というのが妙に引っかかる神栖だったが、気にしても仕方がないということで、ひとまずは那須に従い学校の敷地内へと歩みを進めた。




