表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異能が現実のものとなったこの街の片隅で。  作者: 松葉天佑


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/37

Q.E.D.

 スタートを切ったのは神栖。

 右腕を横薙ぎに振るうと、彼の腕の軌道に沿って無数の水の槍が生成される。

 そして拳を握ったと同時、槍はシュゥッ!と空気を切り裂きながら本宮の元へ降り注ぐ。


「チィッッッ!!」


 本宮は己が中心に掌をかざすと、半径2メートルは優に超える巨大な水のベールを生み出した。


 ウォータージェットの如き切れ味を持つであろう水の槍は、ベールの中心へと吸い寄せられ、次々と無力化されていく。


「一度見せただけの水力操作をこうも巧みに使われるとはな……泣けてくるぜ」


 笑みを浮かべてみせたものの、本宮に余裕が無くなったのは火を見るよりも明らかだ。


「男だって泣いても良いんスよ?」


「馬鹿野郎が。男が泣いて良いのは、勝利を収めた時って決まってんだろうがッッッ!!!」


 雄叫びをあげながら本宮は腕を横薙ぎに振るう。

 瞬間、彼の周囲には無数の水の槍。だが神栖が作り上げたそれとはサイズ、数共に桁違いだ。


「お前はどうやって躱すんだ!!!?」


 水の槍が数倍返しとなって神栖に襲いかかる。


「自分で答え教えてどうすんの」


 がしかし、彼は冷静だった。

 神栖が掌をかざすと、槍“だった”ものはただの水飛沫となって散ってしまった。


 攻撃を無力化したのか?いや違う。正解は空気の膜。空気を圧縮することにより何物でも貫けぬ盾を作り出したのだ。


「なら質より量ってな!!」


 続けて本宮は攻める。

 盾で防ぎきれない程の水量を神栖にぶつけてはどうか。

 並大抵の人間なら溺れ死ねるだけ、ありったけの力を振り絞る、完全出力のビーム攻撃―――


「わざわざアンタと同じ土俵で戦ってやる必要も無いんスよ、僕には」


 だが悲しいかな、彼にはとても通用しなかった。神栖がしたのは反射。攻撃のベクトルを反対方向へと変換する。それだけで雨の一滴すら濡れることもなく五体満足で立っている。


「やっべ!!??」


 そして本宮の攻撃を反対方向へと受け流したのなら、それが向かう先は当然本宮自身。瞬間、彼は全力で横へ飛び、何とかその場を凌いだ。


 さっきまで彼のいた地点に大量の水流が押し寄せる。直撃こそ免れたものの、足元はすっかり水に浸かっている。

 完全なる力の差。本宮はフルスロットルにも関わらず、神栖はと言うと汗ひとつかいている様子も無い。指揮者の如く完璧に本宮の攻撃をいなしていく。まるで後出しジャンケンでもさせられている気分だと、本宮は感じさせられていた。

 しかしそれで折れる程、本宮一番という男はヤワじゃない。

 いや諦めが悪いと言うべきか。


「ほお?今のお前の言葉、俺には同じ土俵では戦えないと聞こえたなあ?」


「はあ??」


 力の差に絶望したっておかしくない。そんな状況であっても、本宮は神栖を挑発する。


「確かにお前はあらゆる異能を使うことが出来るらしい。そこは認めてやるよ、お手上げだ。流石はデュアルスキラーと言ったところか。だがな、お前の敗因は、テメェ自身の異能を過信しちまってるってところだ」


「はあ?敗因?勝負になってもいないのにどうしてそう吠えられるのか。戦いはまだ始まってもねえでしょうが」


「かもな。だから俺の切り札を見せてやる。そして今から証明してやるぜ。お前の敗因ってのをよ」


 負け犬の遠吠えに聞こえるかもしれない。だがそれでも構わない。

 美しく勝とうとするな。男たるもの泥まみれであれ。その思いが本宮を勇気づける。

 彼はポケットからおもむろにライターを取り出し、火をつけてみせる。


「さあ、タネも仕掛けもあるマジックショーをご覧あれ」


 己と神栖の中心に目掛けてライターを放り投げる。

瞬間、本宮は後ろに身を引き間合いを取る。


「俺の異能は水力操作。だが、応用すればこんな使い方も出来るんだぜ。さて問題だ。水分子の化学式はなんだったでしょうか?」


 本宮はいやらしく口角を上げる。


 神栖は何かを察知し同じように身を引いたが、タイミングが遅かった。


「Boom!」


 本宮の声と同時、ボッッッと爆炎が辺り一面を包み込んだ。


「ちょっ!?!?こんなの聞いてないんですけど!?」


 本宮らから距離を取っていた峯は爆風の直撃を免れたものの、それによって生じた衝撃は計り知れない。 この規模感に思わず圧倒されてしまった。


(公園でこんな爆発起こすかっての!!!!!)


「答えは水素と酸素。学校行ってりゃ楽勝のボーナス問題だわな。俺ってば、異能の応用でこの2つを別個に操ることも出来んのよ〜。俺ァこれがやりたくてライターは百均のヤツ使ってるんだよなあ?こんなことやってたら一発でお釈迦になるからな」


 彼は水を操るのと同じように、水素と酸素を自在に操ることが出来る。自身で発生させたそれらに火種を加えることでご覧の通りの爆発を起こせるといった具合だ。

 本宮は白煙の中へと歩みを進める。


「ヘヘッ……ハハハハッ」


 白煙の中から乾いた笑い声。


「これがアンタの十八番なのか?」


「嘘だ、あの爆発を喰らって立っていられるなんて」


 峯は思わず声を漏らしたが、本宮はそのまま一歩二歩と神栖の元へ向かう。


「甘いんだよ!爆発を起こそうが、それを反射してしまえば僕には傷一つも残らないってわけ!」


 吠える神栖に臆することなく、また一歩と近づいていく。


「今度は接近戦って腹っスか?良いでしょう付き合ってあげ………ま………ぁ?」


 突如神栖の視界が揺れる―――


「な……んだ………これ………?」


「酸欠だよ」


 本宮は足元が覚束なくなった神栖を支える。


「かのデュアルスキラーさんでも、酸欠はキツイだろ。最もここは密閉空間じゃない、屋外も屋外だ。多く見積もっても数十秒もすればお前は回復するだろうが?こっからでもやんのかよ?」


 2人の間に沈黙が流れる。だが、己の足で立つことも儘ならぬ状態でこれ以上続けるというのも無理な話である。


「ちッ……わかりました、負けたっスよ、全く」


「ヘヘっ、お前が俺と同じタイミングで避ける選択を取っていれば、もう俺に勝機は無かった。だがもしお前が反射を使ったならば。爆発によって周りの酸素を奪ってしまえば、お前は活動できなくなる。そう考えたのよ」


「反射に頼りきったことが僕の、まさしく敗因となった訳っスね」


「そうそう。これぞQ.E.D.ってヤツだな」


「ちょっと、その子大丈夫なんですか」


 神栖に肩を貸す本宮の元へ峯が駆け寄ってきた。


「安心しなって。じきに回復する」


「全くどうかしてますよ。その子の安全もそうですけど、この公園の芝生がズタボロになったらどうするんです?何でも屋やるどころじゃ無くなるでしょ」


「んぁ?いやぁ、そこら辺は俺の方で爆風が当たらないよう調整とか出来るし。ってか神栖君、お前なんだ、笑ってんのか?」


「いや別に」


「それよりも、もうお昼の時間ですしあそこのカフェでランチにしましょうよ。神栖君を休ませながら。バンちゃんの奢りで」


「はぁ!?なんで奢りになるんだよ!?」


「さっき自分で言ってました」


「それはそうっスね」


「確かに………」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ