本宮一番
「あ!見つけた!」
本宮と峯が公園方向に向かって十数分ほど、ついに神栖御琴の元へ辿り着いた。
「やっぱり来たっスね、お二人さん」
神栖は公園の中央で両手を広げて待ち構えていた。そんな彼を目にした本宮は一歩、また一歩と歩み寄る。
「よお、少年。ここは良いところだよなあ?開けていてカフェもある。今俺たちと一緒に来てくれれば昼飯たーんとご馳走してやる」
「断るっスよ。先生の差し金か知らないっスけど、僕がアンタ達についていく道理は無い」
「あーあー!良いのかなー!そんなこと言ってー!!俺たちについて来なかったら学校退学になっちゃうかもなー!!」
本宮はこれでもかと言わんばかりに神栖を煽る煽る。
お尻ぺんぺん、左右に腰振り、べろべろばー。完全にガキ丸出し、これが27歳児の姿である。
「……隣にいて本当恥ずかしい」
峯もこれには参った様子で顔を手で覆っている。
「ハッ退学になったって知ったこっちゃないっスよ」
「知ったこっちゃない?そりゃ自暴自棄になってるだけだろ?」
「悪いっスか?異能開発にしか脳の無い連中にはうんざりしてるんスよ」
神栖は瞬間、嘲笑を浮かべるも頭を掻きむしりながら声を荒げる―――
「どいつもこいつも腐ってやがる!!口を開けば数字だ序列だ、異能にしか頭が無ぇ!!そのくせ人が優秀な成績を収めれば嫉妬や僻みの念をぶつけてきやがる!!そんなことしてる暇があんならテメェが同じ土俵に上がってみろってんだよ!!努力も出来ねえくせに妬んでる連中が馬鹿みたいで仕方がねえんスよ!!!」
辺りは静寂に包まれた。神栖の荒い吐息だけが響き渡る公園で、本宮はおもむろに口を開く。
「全部吐き出せたかよ、勘違い野郎が」
「何だと………!?」
「何自分だけが不幸だなんて思ってんだよ。つけあがんな恥ずかしい。お前は異能に恵まれたってだけで他の奴とは何も変わらねえ。いや、寧ろ劣っているかもな。そんだけ捻くれた思考しておいて、さも自分は周りの連中とは違うと言いたげなのがつくづく勘違いでしかねえ。だから言ったんだよ、勘違い野郎だってな。お前も異能に囚われてんだよ。
俺はな、お前みたいな自分だけが苦労して生きてると思ってる人間が大嫌いなんだよ。お前も俺も、峯ちゃんも那須ちゃんも、皆皆苦労して生きてんだよ。人生なんてそんなもんだ。幸せだと感じられる瞬間なんて長い人生の内のごく僅かでしかない。それでも前を向いて歩かなきゃならねえんだ。それが生きていくってもんだろうが」
「ハッ、そんなの綺麗事でしかないっスよ。大体、長々と説教垂れて鬱陶しいんスよアンタ」
「だろうな。お前みたいな奴には口で言ってもわかんねえと俺も思ってた。だからお前には力で、生きるってことがどんなに苦しいか教えてやる」
「僕を捕まえられればの話っスけどね。さっきと同じように……ッ!?」
―――瞬間、神栖の周囲を水の壁が包み込んだ。
「お前のテレポートのタネはわかってんだ。千里眼、そしてデュアルスキラーであることを知ったその時にな。」
本宮は口角をニヤリと上げて続ける―――
「お前はテレポートなんてしちゃいなかった。あれは千里眼の応用、というよりも視覚操作と言うべきか?自分の視界を俺たちに複製したんだ。自分のツラは鏡でも無きゃ自分で見れねえからな。肝心なのは、俺たち2人だけに複製をした。だから周りに居た連中にはお前が消えたことを気にも留める様子が無かったんだ。俺たち以外には、ただお前が歩いて店を出て行くようにしか見えてなかったんだから」
「お見事っスね。まさにその通りっスよ。それに水の無い所でこのレベルの水力操作、大した物だ。でも………」
「―――いッッッ!!??」
バチィィッッ!!!と、電気が流れ水の壁を発生させていた本宮の腕を伝う。
「ったく、痛ぇな……!?」
思わず本宮は膝をついた。
その姿を目にし神栖は不敵な笑みを浮かべる。
「さて、鬼ごっこはおしまい。アンタは水力操作、そして隣のお姉さんは恐らく感知系の異能……。そう来たら、後は殴り合いしかねえでしょうよ!!!」




