作戦決行
時刻は11時……を大きく過ぎて12時前。
「あのさー、なんで何度も起こしたのに起きないんだよ」
「それだけ従業員の疲労が溜まっていたということです。これはもう働き方改革が必要です」
「なーにが改革だ。そう言いながらもうちのギルド最古参がおめーじゃねえかよ」
「最古参だからこそ言ってるんですよ。私はギルドのレジスタンスです」
眠い目を擦りながら大欠伸をかます峯と、彼女の大寝坊をくらい気分ガン萎え…といった様子の本宮はただ今池袋駅改札前に到着した。
「で、今更だけどよ。こんな数万人はいるであろう中から神栖君を探し出せるのか?」
「ま、私の本領はあくまで読心なんですけどね。その応用で半径1キロくらいならなんとかいけるはずです。ちなみにパイセンから顔写真とか送られてきました?」
「ああ、あるぞ。峯ちゃんに送るわ。しかし1キロってすげえな。寧ろ探知が本領まであるだろ」
間も無くして峯のスマホに神栖御琴の顔写真が届いた。恐らくは生徒手帳用に撮影されたものなのだろう。その写真を目にし、峯は目を丸くしながら、
「うわ!めっちゃ美形!証明写真でこれだけ盛れてるのズリぃ」
そこに映しだされていたのは、左サイドを耳にかけ、長く伸びた襟足を後ろで束ねた中性的な印象を感じる少年―――控えめに言ってもアイドル顔負けまである。
「しかし銀髪のおかげで絞り込むのも随分と簡単になりました。これなら30秒で見つけたる!」
そう言うと峯は右目を手で覆い気を集中させる―――
「―――?何してんだ?」
「探知。ちょっと黙っててください」
「お、おう」
「―――――――――。」
「―――見つけた!」
「マジで!?」
「ここは……ゲーセンですね、近いです!」
「よし、それじゃ今から向かうか」
そして本宮と峯は現在地に程近いゲームセンターへと向かう―――
――――――――――――
「居たな」
「ええ、あの子で間違いないはずです」
本宮と峯は筐体の陰に身を潜めている。そしてその視線の先にいる少年。それこそまさしくターゲットの神栖御琴である。彼はクレーンゲームの真っ最中。
「しかし高校生がゲーセンでこんなに遊んでられる程の金銭的余裕なんてあるのか?」
「意外とあるもんですよ。ましてや異能学区、異能持ちの学生にはじゃんじゃん投資と言わんばかりに奨学金配られまくってますからね」
そう、彼らが暮らす街、異能学区は異能と呼ばれる超能力が社会や日常に溶け込み、当たり前のものとなった現代の東京。
この街では異能持ちの学生を支援するといった制度も数多くある。神栖御琴もその恩恵を受けている1人という訳だ。
「はぁーあ、しかし真昼間からゲーセンで遊んでる不届きな連中もいるもんだ。もっと社会が厳しくならないもんかね」
「無理でしょうね。ここでは特例で15歳以上にも選挙権はあるんです。もしそういう制度を作らんとする人間が現れたらネットで大炎上コース確定です」
「嫌な世の中になったもんだねー本当に」
「まあまあ、私たちもこの異能学区で暮らしている以上、あらゆる制度の恩恵を受けている訳ですから良しとしましょう。それよりも今は神栖君です」
「そうだな…おっすげえ景品取ったぞアイツ!」
「そんな事に気を取られないでくださいよ。それよりもどうやって接触するか……って!?」
どうやって接触するか。そんなものは簡単だ―――――そう言わんばかりに本宮は獲得口に手を伸ばす神栖の元へ歩み寄る。
「おめでとう神栖君」
ゆっくりと拍手をしながら近づいてくる長身の赤髪、これはもう怪しさ胡散臭さ共に満点である。
はぁーーーー、と。深いため息を吐きながらも遅れて峯も前に出た。
「アンタ達、なんスか。」
神栖少年、警戒心マックスである。それも当然か。
本宮も峯も、結構チャラついたというか、人よりイカつめの容姿をしている。もしかしたらケツモチだと思われたかもわからん。だがそんな事もお構い無しといった様子で本宮が切り出す。
「いやね?学校の先生に頼まれたもんだから……え?」
ふとした瞬間だった。
突如神栖の姿が目の前から消えたのだ。
「は………え?」
右、左、後ろ、どこを見渡しても神栖が見当たらない。あるのは本宮と同じく目を丸くして驚く峯、そしてゲームを楽しむ一般客の姿だけ。
「消え…た…アイツテレポーターだったのか?」
「そもそも彼の異能について、パイセンから聞いてましたっけ」
「いや、聞いてない」
「で、す、よ、ねー!!!あの人肝心なところが抜けてるんだから!!!今聞きましょ!」
しかし妙だ、人1人消えたというのに本宮達以外は気にも留めていない様子……?
峯は大慌て、大至急で那須の番号に繋ぐ―――――
「もしもしパイセン!?」




